医療DX×生成AI|クリニック・中小病院が始められるAI活用の具体例と導入ステップ
「AIが医療を変える」——そんなニュースを目にする機会が増えました。しかし、大学病院や大手医療グループの話ばかりで、「うちのクリニックには関係ない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
実は、生成AIを活用した医療DXは、すでにクリニックや中小規模の病院でも導入が進んでいます。AI問診システム、音声カルテ、退院サマリーの自動作成——これらはいずれも、大規模なシステム投資なしに始められるソリューションです。
本記事では、医療DXの現在地と生成AIの活用事例を整理し、クリニック・中小病院の経営者や事務長の方が「明日から何を始められるか」を具体的に解説します。
医療DXの現在地──なぜ今、生成AIなのか
医療DXとは、デジタル技術を活用して医療サービスの質を向上させ、業務の効率化を実現する取り組みです。政府は「医療DX推進本部」を設置し、電子カルテの標準化や診療報酬におけるDX加算など、政策レベルでの後押しを強めています。
その中で、2025年から2026年にかけて急速に注目を集めているのが「生成AI」の医療応用です。生成AIは、大量のテキストデータから学習し、文章の作成・要約・分類などを高精度に行う技術。医療現場では、以下のような課題を解決する力があります。
- 医師の書類作成負担:退院サマリー、紹介状、診断書など、医師が日常的に作成する文書は膨大。生成AIによる下書き自動作成で負担を大幅に軽減できる
- 問診の効率化:患者の症状をAIが事前に整理し、診察時間を短縮
- カルテ記録の省力化:音声認識と生成AIを組み合わせ、診察中の会話からカルテを自動生成
厚生労働省も生成AIの医療利用に関するガイドラインの整備を進めており、「使ってよいかどうか」から「どう使うか」のフェーズに移行しつつあります。
クリニック・中小病院で使える生成AI活用事例
「生成AIの活用」と聞くと高度な技術を想像しがちですが、実際にはクリニック規模でも導入できるサービスが増えています。代表的な事例を見てみましょう。
事例1:AI問診システムで診察の質と効率を両立
AI問診システムは、患者がスマートフォンやタブレットで事前に症状を入力すると、AIが質問を最適化しながら情報を収集する仕組みです。
たとえば、ある問診AIサービスを導入したクリニックでは、カルテの事前準備が可能になり、診察の隙間時間でカルテ作成ができるようになったという報告があります。また、ある病院では1回の診察あたり約3分の作業時間短縮を達成したという事例もあります。
AI問診の最大のメリットは、患者の待ち時間短縮と医師の問診時間削減を同時に実現できる点です。特に、患者数が多い内科や小児科のクリニックで効果を発揮します。
事例2:音声AIカルテで「書く時間」をゼロに近づける
診察中の会話を音声認識で文字起こしし、生成AIがSOAP形式(主観的情報・客観的情報・評価・計画)に整形してカルテに記録するサービスが登場しています。
これにより、医師は患者と向き合う時間に集中でき、診察後のカルテ記入作業がほぼ不要になります。紹介状への転記も自動で行えるため、書類作成の効率が飛躍的に向上します。月額費用が低めに抑えられているサービスも登場しており、クリニック規模でも導入しやすくなっています。
事例3:退院サマリー・医療文書の自動作成
退院サマリーや紹介状の作成は、医師にとって大きな負担です。ある大学病院の実証実験では、生成AIを活用することで医療文書の作成時間を約47%削減した事例が報告されています。また、別の大学の実証では、退院サマリー作成に生成AIを活用した医師の約9割が「業務効率化につながった」と回答しています。
こうした技術はまず大規模病院で実証が進んでいますが、今後は中小病院やクリニック向けのサービスとしても展開が見込まれています。電子カルテと連携できる生成AIサービスを導入すれば、自院でも恩恵を受けられる日は遠くありません。
事例4:診療報酬算定の効率化
ある大学病院では、電子カルテの情報を基に生成AIが診療報酬の算定を支援する仕組みを構築しています。従来は数日かかっていた算定作業を、数十分程度に短縮できる可能性が示されています。
診療報酬の算定ミスや漏れは、クリニックの収益に直結する問題です。AIによる算定支援は、医事課スタッフの負担軽減と、算定精度の向上を同時に実現できます。
2026年最新動向──医療×生成AIの実用化が加速
2026年に入り、医療現場での生成AI実用化はさらに加速しています。
2026年2月、大阪のある大規模病院では、大手ITベンダーと連携して、退院サマリー作成と看護師の申し送り業務に生成AIを導入するプロジェクトを開始しました。注目すべきは、医師や看護師だけでなく事務部門も含めた多職種チームでAI活用を推進する体制を構築した点です。「DXアンバサダー」と呼ばれる院内推進リーダーを設置し、現場課題の把握からユースケース検証までを一体的に進めるこのモデルは、中小病院にとっても参考になるアプローチです。
また、大手電子カルテベンダー各社も生成AI機能の搭載を進めており、既存の電子カルテシステムにアドオンする形で生成AIを利用できる環境が整いつつあります。「電子カルテを入れ替えなくてもAIが使える」時代が、すぐそこまで来ています。
中小医療機関が医療DXに踏み出す3つのステップ
では、クリニックや中小病院が医療DXに取り組むには、具体的にどこから始めればよいのでしょうか。無理なく進めるための3つのステップを紹介します。
ステップ1:現場の「時間泥棒」を特定する
まず行うべきは、日々の業務の中で最も時間がかかっている作業を洗い出すことです。カルテの記入、紹介状の作成、問診のヒアリング、レセプト処理——医師・看護師・事務スタッフそれぞれに聞いてみると、改善の余地がある作業が見えてきます。
いきなりAIを導入するのではなく、「どの作業にどれだけ時間を使っているか」を数値で把握することが、適切なツール選定の第一歩です。
ステップ2:小さく始めて効果を実感する
医療DXの鉄則は、「全体を一気に変えようとしない」ことです。まずは一つのツール、一つの業務から始めましょう。
たとえば、AI問診ツールの無料トライアルを1ヶ月試してみる。音声カルテを特定の診療科だけで導入してみる。こうした「小さな成功体験」が、院内の他のスタッフや診療科にDXを広げる原動力になります。
ステップ3:セキュリティとガイドラインを押さえる
医療情報は機密性の高い個人情報です。生成AIを導入する際は、以下の点を必ず確認しましょう。
- データの保存先:患者情報が外部サーバーに送信される場合、セキュリティ基準を満たしているか
- 厚生労働省のガイドライン:「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」への準拠状況
- AIの出力の最終確認:生成AIが作成した文書は、必ず医師や担当者が確認・修正してから使用する
生成AIはあくまで「補助ツール」であり、最終判断は人間が行うという原則を徹底することが、安全な医療DXの基盤になります。
まとめ:医療DXの第一歩は「できるところから」
医療DXと生成AIの融合は、大学病院だけのものではなくなりました。AI問診、音声カルテ、医療文書の自動作成など、クリニックや中小病院でも導入できるツールが急速に充実しています。
大切なのは、完璧な計画を立ててから動くのではなく、「できるところから小さく始める」こと。一つの業務の効率化が院内に波及し、やがて医療サービス全体の質の向上につながっていきます。
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