ビジネストレンド 2026.03.04

労働生産性の計算方法を実例で解説|業種別の平均値と自社の立ち位置を把握するステップ

労働生産性の計算方法を実例で解説|業種別の平均値と自社の立ち位置を把握するステップ

「うちの会社の生産性って、実際どのくらいなのだろう?」。経営者や管理職であれば、一度はそう考えたことがあるのではないでしょうか。しかし、いざ計算しようとすると「どの数字を使えばいいのか」「業界の平均と比べてどうなのか」がわからず、手が止まってしまうケースが少なくありません。

労働生産性の計算方法は、実はシンプルです。必要な数値さえ揃えれば、Excelひとつで自社の立ち位置を把握できます。本記事では、労働生産性の計算方法を実例付きで解説し、業種別の平均値データの調べ方、そして自社の改善につなげるステップを具体的にお伝えします。

労働生産性とは何か――2つの計算式を押さえる

労働生産性とは、従業員1人あたり(または労働時間1時間あたり)が生み出す成果を数値化したものです。大きく分けて2つの計算式があります。

付加価値労働生産性

最も広く使われる指標です。計算式は次のとおりです。

付加価値労働生産性 = 付加価値額 / 従業員数

ここで言う「付加価値額」とは、売上高から外部購入費(原材料費・外注費など)を差し引いた金額です。中小企業庁の定義では、付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費(簡易計算法)とする方法も広く使われています。

物的労働生産性

製造業などで使われることが多い指標です。

物的労働生産性 = 生産量(個数・トン数など) / 従業員数

金額ではなく物量で測るため、物価変動の影響を受けにくいという特徴があります。ただし、サービス業など「生産量」を定義しにくい業種では使いづらいため、多くの企業では付加価値労働生産性を基本指標として活用するのが現実的です。

実例で計算してみよう――中小企業A社のケース

ここでは、架空の中小企業A社を例に、付加価値労働生産性を実際に計算してみます。

A社の基本データ

  • 年間売上高:3億円
  • 営業利益:1,500万円
  • 人件費:1億2,000万円
  • 減価償却費:1,500万円
  • 従業員数:25人

ステップ1:付加価値額を算出する

簡易計算法を使います。

付加価値額 = 営業利益 + 人件費 + 減価償却費
= 1,500万円 + 1億2,000万円 + 1,500万円
= 1億5,000万円

ステップ2:従業員1人あたりの付加価値額を求める

付加価値労働生産性 = 1億5,000万円 / 25人 = 600万円/人

A社の付加価値労働生産性は、従業員1人あたり年間600万円ということになります。では、この数字は「高い」のか「低い」のか。それを判断するために、業種別の平均値と比較する必要があります。

業種別の平均値を調べる方法

自社の数値を出しただけでは、その良し悪しは判断できません。業界の平均と比較して初めて、自社の立ち位置が見えてきます。以下の公的統計が参考になります。

主な公的データソース

  • 中小企業庁「中小企業白書」:業種別の1人あたり付加価値額(労働生産性)が毎年掲載されています
  • 財務省「法人企業統計調査」:業種別の売上高・人件費・利益データが揃っており、自分で生産性を計算できます
  • 日本生産性本部「労働生産性の国際比較」:日本全体の生産性を国際比較する際に有用です

業種別の目安

中小企業白書や法人企業統計のデータを総合すると、中小企業における1人あたり付加価値額の目安は、業種によって大きく異なります。たとえば、製造業は約600万円前後、卸売業は約700万円前後、情報通信業は約800万円前後とされるデータがあります。一方で、飲食サービス業や宿泊業は約300万円程度にとどまる傾向があります。

ただし、これらは統計の集計方法や対象年度によって変動するため、あくまで「目安」として捉え、最新データを直接確認することをお勧めします。中小企業庁のウェブサイトで白書のPDFを無料で閲覧できます。

先ほどのA社(製造業、600万円/人)であれば、業種平均とほぼ同水準です。ここから「平均並みで安心」と考えるか、「平均を超えるために何をすべきか」と考えるか。後者の視点を持つことが、改善への第一歩です。

自社の立ち位置を把握し、改善につなげる3つのステップ

労働生産性を計算し、業界平均と比較したら、次は改善に向けたアクションです。以下の3つのステップで進めましょう。

ステップ1:部門別・チーム別に分解する

全社の平均値だけを見ていても、改善のポイントは見えてきません。部門別、チーム別、あるいは拠点別に労働生産性を算出してみてください。すると「営業部門は平均を大きく上回っているが、管理部門が全体を引き下げている」といった構造が見えてきます。

分解することで、「どこに手を入れれば、全社の生産性が最も上がるのか」が明確になります。限られたリソースを効果的に配分するための判断材料になるのです。

ステップ2:時系列で推移を追う

単年の数値だけでなく、過去3〜5年間の推移を並べてみましょう。右肩上がりであれば施策が効いている証拠ですし、横ばいや右肩下がりであれば、何らかの構造的な問題がある可能性があります。

特に注目すべきは「従業員数が増えたのに付加価値額が増えていない」というパターンです。これは人員増加に見合った売上や利益の成長が追いついていないことを意味しており、採用計画や業務プロセスの見直しが必要なサインです。

ステップ3:改善施策を打ち、効果を検証する

立ち位置と課題が見えたら、具体的な改善施策を実行します。代表的な施策には次のようなものがあります。

  • 業務プロセスの見直し:ムダな会議・承認フローの削減
  • ITツールの活用:RPAやクラウドツールによる定型作業の自動化
  • 人材育成:スキルアップ研修によるひとりあたりの生産量向上
  • 事業ポートフォリオの見直し:低収益事業の縮小と高付加価値事業への集中

施策を実行したら、四半期ごとに労働生産性を再計算して効果を検証してください。数字で効果が見える仕組みを作ることが、継続的な改善の鍵です。

まとめ:まずは自社の数字を出すことから始めよう

労働生産性の計算方法自体は決して難しくありません。付加価値額を従業員数で割るだけです。しかし、多くの企業では「計算したことがない」「業界平均と比較したことがない」というのが実情ではないでしょうか。

改善の第一歩は、現状を正確に把握することです。本記事で紹介した手順を参考に、まずは自社の労働生産性を算出し、業界平均と比較してみてください。そこから見えてくる課題が、次の一手を決める出発点になります。

株式会社Sei San Seiでは、中小企業の生産性向上に向けた業務改善やDX推進のご支援を行っています。「自社の生産性をどう上げればいいかわからない」「数値は出したが、次に何をすべきか迷っている」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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