働き方改革 2026.07.15

労働基準法改正2026は見送りへ|40年ぶり大改正の7つの論点と、施行を見据えて企業が今から進めるべき準備

労働基準法改正は見送り

「約40年ぶりの大改正」と言われてきた労働基準法の改正をめぐり、大きな動きがありました。当初は2026年の通常国会への法案提出、2027年4月頃の施行が見込まれていましたが、改正法案の2026年通常国会への提出は見送られることになったのです。

「見送りなら対応も後回しでいい」と考えるのは早計です。見送りは廃案ではなく、議論されてきた改正の方向性はそのまま維持されています。連続勤務の上限規制、勤務間インターバルの義務化——いずれも就業規則やシフト設計、勤怠管理システムの見直しが必要になる項目であり、施行が決まってから慌てて対応できる規模ではありません。

本記事では、検討されている7つの主要論点と今後のスケジュール見通し、そして「見送り期間」を活かして企業が今から進めるべき準備を解説します。

※本記事は2026年7月15日時点の公開情報に基づいています。法案の内容・スケジュールは今後変更される可能性があるため、最新情報は厚生労働省の発表をご確認ください。

労働基準法改正をめぐる現在地:なぜ見送りになったのか

今回の改正論議は、厚生労働省の労働基準関係法制研究会での議論をベースに、働き方の多様化と労働者の健康確保への対応を目的として進められてきました。現行の労働基準法は1947年制定で、直近の大きな枠組み見直しは1987年改正。フレックスタイム制やみなし労働時間制が導入されたこの改正から数えて、約40年ぶりの抜本改正になると注目されてきました。

しかし2025年12月、改正法案の2026年通常国会への提出が見送られる見通しであることが報じられました。政府の成長戦略をめぐる議論を踏まえて内容を再検討するためとされており、改正そのものが白紙になったわけではありません。現時点では2027年以降の国会提出と、成立後の段階的な施行を見込む見方が有力です。

つまり企業にとっての現在地は、「対応不要になった」ではなく「準備期間が延びた」です。

検討されている7つの主要論点

議論されてきた主な改正項目は次の7つです。いずれも検討段階の内容であり、最終的な法案で変わる可能性がある点にご注意ください。

1. 連続勤務の上限規制(14日以上の禁止)

現行の変形週休制(4週4日の休日)では、休日の配置次第で理論上最大48日の連続勤務が可能です。これを是正し、連続勤務を13日までとし、14日以上を禁止する方向で検討されています。シフト制の小売・飲食・介護・製造現場は、シフト作成ルールの見直しが必要になる可能性があります。

2. 勤務間インターバル制度の義務化

終業から次の始業まで、原則11時間以上の休息時間を確保する制度です。現在は努力義務ですが、義務化が検討されています。「夜遅くまで残業した翌朝は始業を遅らせる」運用が必要になるため、勤怠管理と業務量マネジメントの両面に影響します。

3. 法定休日の事前特定

法定休日をあらかじめ特定の曜日・日として明示することを求める方向です。「どこかで週1日休ませればよい」という運用が難しくなり、就業規則の休日規定の書き方に影響します。

4. 年次有給休暇の賃金算定方法の統一

有給取得時の賃金を「通常の賃金」方式に統一する案が検討されています。平均賃金方式を採用している企業は給与計算実務の変更が必要になります。

5. 「つながらない権利」のガイドライン化

勤務時間外の業務連絡への対応を強制されない、いわゆるつながらない権利について、ガイドラインを策定する方向で議論されています。詳細はつながらない権利の解説記事をご覧ください。

6. 週44時間特例の廃止

常時10人未満の商業・サービス業等に認められている「週44時間」の特例的な法定労働時間を廃止し、週40時間に統一する案です。小規模事業者ほど影響が大きい項目であり、該当企業は労働時間の再設計が必要になります。

7. 副業・兼業の労働時間通算ルールの見直し

現在は本業と副業の労働時間を通算して割増賃金を管理する必要がありますが、この複雑なルールを簡素化する方向で検討されています。数少ない「規制緩和」方向の論点で、副業人材の受け入れがしやすくなる可能性があります。

施行はいつになるのか:スケジュールの見通し

今後の想定シナリオは次の通りです。

  • 2026年内:政府の成長戦略に関する議論を踏まえて改正内容を再検討
  • 2027年以降:通常国会への法案提出(時期は流動的)
  • 成立後:項目ごとに準備期間を置いた段階的な施行。中小企業には猶予期間が設けられる可能性

過去の働き方改革関連法でも、時間外労働の上限規制は大企業から先行施行され、中小企業には1年の猶予が置かれました。今回も同様の段階施行になる可能性は高いものの、就業規則・シフト設計・勤怠システムの見直しには半年〜1年単位の時間がかかることを考えると、「成立してから動く」では間に合わない企業が出てきます。

見送り期間中に企業が進めるべき準備

この期間にやるべきことは、大きく4つです。

1. 勤怠実態の把握——まず「現状の数字」を出す

連続勤務が最長で何日発生しているか、終業から翌始業までの間隔が11時間を切るケースが月に何件あるか。自社の勤怠データで現状を数値化することがすべての出発点です。紙のタイムカードやExcel管理では集計自体が困難なので、これを機に勤怠管理のデジタル化を進める価値があります。

2. 就業規則・休日規定の点検

変形週休制を採用している場合の休日配置ルール、法定休日の特定方法、有給取得時の賃金算定方式を確認し、改正案の方向と乖離が大きい箇所を洗い出しておきます。実際の改定は法案確定後でよいですが、論点の在庫リストを作っておくと対応が早くなります。

3. 時間外連絡のルールづくり

つながらない権利はガイドライン化の段階でも、採用市場ではすでに「時間外に連絡が来ない会社かどうか」が企業選びの目線になりつつあります。チャットツールの通知時間帯設定など、低コストで始められる施策から先行導入しておくと、法対応と採用力強化の一石二鳥になります。

4. 業務量の平準化——規制対応の本丸

インターバル規制も連続勤務規制も、根本の原因は「特定の人に業務が集中する」ことです。属人化した業務の可視化と標準化、定型業務の自動化を進めておけば、規制がどんな形で確定しても対応できます。RPAとAIエージェントの使い分けなど、自動化の選択肢はこの数年で大きく広がっています。

中小企業こそ「先回り」が効く

大企業には法務・人事の専任部署がありますが、中小企業では経営者や総務担当者が通常業務の傍らで対応することになります。施行直前は社労士やシステムベンダーへの依頼が集中し、費用も納期も条件が悪くなるのが常です。準備期間が延びた今こそ、余裕を持って着手できる貴重なタイミングだと捉えてください。

また、週44時間特例の廃止案が示す通り、今回の改正は小規模事業者への影響が決して小さくありません。「うちは小さいから関係ない」ではなく、「うちのような規模こそ対象になる論点がある」という認識で情報を追うことをおすすめします。

まとめ:見送りは「猶予」であって「免除」ではない

  • 約40年ぶりの労働基準法大改正は、2026年通常国会への法案提出が見送りに。ただし議論の方向性は維持
  • 主要論点は連続勤務13日上限・勤務間インターバル11時間義務化・法定休日の事前特定・週44時間特例廃止など7つ
  • 2027年以降の国会提出・段階的施行が有力視されるが、スケジュールは流動的
  • 就業規則・シフト・勤怠システムの見直しは半年〜1年単位の仕事。成立後に着手では間に合わない可能性
  • 勤怠実態の数値化→就業規則の点検→時間外連絡ルール→業務量平準化の順で、今から計画的に準備を

株式会社Sei San Seiでは、勤怠・労務まわりのデジタル化を含む中小企業の業務効率化・DX推進をご支援しています。「法改正対応の前提になる勤怠データの見える化から手を付けたい」といったご相談も承っておりますので、お気軽にお問い合わせください。

よくある質問

Q1. 労働基準法の大改正はいつ施行されますか?

2026年通常国会への法案提出が見送られたため未確定です。現時点では2027年以降の国会提出と段階的な施行を見込む見方が有力ですが、政権や国会審議の動向で変わる可能性があります。

Q2. 連続勤務は何日までに制限されるのですか?

検討案では連続勤務の上限を13日とし、14日以上を禁止する方向です。現行の変形週休制では理論上最大48日の連続勤務が可能なため、これを是正する狙いがあります。

Q3. 勤務間インターバル制度は義務化されるのですか?

現在は努力義務ですが、終業から次の始業まで原則11時間の休息を確保する義務化が検討されています。残業後の翌朝の始業時刻に直接影響するため、勤怠データでの実態把握が重要です。

Q4. つながらない権利とは何ですか?

勤務時間外に業務のメールやチャットへの対応を求められない権利です。改正の議論ではガイドライン策定が検討されており、時間外の業務連絡に関する社内ルールの明確化が求められる見込みです。

Q5. 法改正が見送りなら、企業は何もしなくてよいのですか?

見送りは廃案ではなく審議の後ろ倒しで、方向性は維持されています。就業規則の点検や勤怠実態の把握には時間がかかるため、この期間を準備期間として計画的に進めることをおすすめします。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社リクルートキャリア(当時)にて地方転職のノウハウを社内外に共有し、北海道をはじめとする地方転職市場の拡大に寄与。2020年にベンチャー企業で人事責任者・子会社取締役を経験したのち、2023年1月に株式会社Sei San Seiを設立。DX・HR領域のサービスを展開。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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