なぜ地方企業はDXに踏み出せないのか──201Cシェアする201Dという第三の選択肢
「DXが大事なのはわかっている。でも、うちには無理だ」。地方の中小企業の経営者から、何度この言葉を聞いたかわかりません。人手も予算もITの知見もない中で、「デジタルトランスフォーメーション」という横文字が押し寄せてくる。焦りはあるのに、具体的な一歩が踏み出せない──。
本記事では、地方企業がDXに踏み出せない3つの構造的な壁を整理したうえで、「自社で作る」でも「外注に丸投げ」でもない、第三の選択肢=「シェアする」という考え方を提案します。
地方企業がDXに踏み出せない3つの壁
壁1:コストの壁──「初期投資が重すぎる」
DXと聞くと、多くの経営者はまず「いくらかかるのか」を考えます。そして、その見積もりを見て諦めます。
一般的な業務システムの導入費用は、小規模なものでも数百万円。ERPやCRMなどの本格的なシステムになると、数千万円規模になることも珍しくありません。地方の中小企業にとって、この初期投資は経営を揺るがすレベルの金額です。
さらに問題なのは、初期費用だけでは終わらないということ。保守・運用費用、ライセンス料、アップデート対応など、月々のランニングコストが継続的に発生します。「導入はできたけど、維持費で首が回らなくなった」という話は、決して珍しいことではありません。
壁2:人材の壁──「IT人材がいない、採れない」
総務省の「情報通信白書」でも指摘されているとおり、IT人材の東京一極集中は深刻です。地方企業がIT人材を採用しようとしても、そもそも地域の労働市場にIT人材がほとんどいない。仮に採用できたとしても、都市部と同水準の給与を提示するのは困難です。
結果として、「DXを推進したくても、推進する人がいない」という根本的な問題に直面します。社内にITリテラシーの高い人材がいなければ、ベンダーの言いなりになるしかなく、自社に本当に必要なシステムが何かを見極めることすらできません。
壁3:知見の壁──「何から始めればいいかわからない」
3つ目の壁は、最も見落とされがちですが、実は最も深刻な壁です。「DXが必要」とは聞くけれど、自社にとって何をどう変えればいいのかがわからない。
経済産業省の「DXレポート」でも、多くの企業がDXの必要性を認識しながらも実際の取り組みに至っていないことが指摘されています。特に地方の中小企業では、同業種・同規模の成功事例が少なく、「うちと同じような会社がどうやったか」という参考情報がほとんど手に入りません。
大企業の事例を見ても「うちとは規模が違う」、スタートアップの事例を見ても「うちとは文化が違う」。結局、「自社に当てはまる成功パターンが見つからない」まま、時間だけが過ぎていくのです。
これまでの選択肢:「自社開発」か「丸投げ外注」か
従来、地方企業がDXに取り組む場合、選択肢は大きく2つでした。
選択肢A:自社で開発する
IT人材を採用し、社内にシステム開発チームを構築する方法です。自社の業務に完全にフィットしたシステムを作れるメリットがありますが、採用コスト、人件費、育成時間を考えると、地方の中小企業には現実的ではありません。仮にエンジニアを1人採用できたとしても、その1人がすべてのシステムを開発・運用するのは不可能です。
選択肢B:外注に丸投げする
SIerやITコンサルティング会社に開発を外注する方法です。一見、手軽に見えますが、「ブラックボックス化」のリスクがあります。自社の業務を理解していない外部ベンダーに丸投げすると、出来上がったシステムが現場の実態に合わなかったり、修正のたびに追加費用が発生したりします。
また、地方にはITベンダー自体が少ないため、選択肢が限られます。「東京の大手ベンダーに依頼したら、地方の商習慣を理解してもらえなかった」という声もよく聞きます。
どちらの選択肢も、地方の中小企業にとっては「帯に短し、たすきに長し」。だからこそ、多くの企業がDXに踏み出せないまま、現状維持を選んでしまうのです。
第三の選択肢:「シェアする」という発想
ここで提案したいのが、「シェアリング」という第三の選択肢です。
考え方はシンプルです。1社では手が届かない高品質なシステムやサービスを、同じ地域の複数の企業で共同利用する。カーシェアリングやシェアオフィスと同じ発想を、DXの領域に応用するのです。
シェアリングモデルが解決する3つの壁
コストの壁 → 分散される。大企業レベルのシステム基盤を複数社で共同利用するため、1社あたりの負担は大幅に軽減されます。数千万円のシステムも、10社でシェアすれば1社あたりの負担は10分の1です。
人材の壁 → 共有される。IT人材を1社で抱える必要はありません。シェアリングプラットフォームの運営事業者がIT人材を確保し、参加企業全体にサービスを提供します。個別にIT人材を採用するよりも、はるかに効率的です。
知見の壁 → 蓄積される。同じプラットフォームを使う複数の企業のDX事例が自然と蓄積されます。「隣の会社がこうやって業務改善した」という成功事例が、同じ地域・同じ規模の企業から出てくるため、自社への応用がしやすくなります。
具体的に「何をシェアする」のか
「シェアリングモデル」と言っても、抽象的では意味がありません。具体的にどのような機能をシェアできるのか、整理してみましょう。
1. 採用業務の自動化(RPaaS)
地方企業の多くが頭を抱えているのが、採用難です。求人を出しても応募が来ない。来ても対応が追いつかない。スカウトメールを送りたいが、文面を考える時間がない。
AIによる採用代行を複数社でシェアすれば、スカウト文面の自動生成、応募者対応、面接日程調整などを低コストで自動化できます。1社で採用担当者を雇うよりも、はるかに効率的です。
2. バックオフィス業務のAI自動化(BPaaS)
経理、労務、総務——バックオフィス業務は、どの企業でも似たようなプロセスを踏みます。だからこそ、シェアリングとの相性が抜群です。業界別にカスタマイズされた業務フローのテンプレートを共同利用することで、監査対応型の業務プロセスを低コストで構築できます。
3. Webサイト制作・運用
ホームページの制作・運用も、シェアリングの対象です。デザインテンプレートや問い合わせ管理システムを共同利用することで、1社あたりの制作・運用コストを大幅に抑えられます。
4. 求人メディアへの掲載
自社だけで求人メディアに掲載すると、掲載料や記事制作費がかさみます。複数社でまとめて掲載することで、スケールメリットを活かしたコスト削減が可能になります。
シェアリングモデルに向いている業種
シェアリングモデルは、特に以下の業種で高い効果を発揮します。
建設業:現場管理、安全書類、作業日報など、デジタル化のニーズが高いにもかかわらず、IT投資が遅れている業種の代表格です。同じ地域の建設会社同士で管理システムを共有すれば、業界全体のDXが一気に加速します。
介護業:人手不足が最も深刻な業界のひとつ。記録業務や請求業務の自動化ニーズは非常に高く、複数の介護事業所でシステムを共有するメリットは大きいです。
製造業:在庫管理、受発注管理、品質管理など、製造業特有の業務をデジタル化するニーズは高いですが、個社での投資は負担が大きい。シェアリングモデルなら、同業種のベストプラクティスを取り入れながら低コストでDXを実現できます。
「シェアしたら競争力が失われるのでは?」という懸念に答える
シェアリングモデルに対して、よく聞かれるのがこの疑問です。「同業他社とシステムを共有したら、差別化ができなくなるのでは?」と。
答えは明確です。バックオフィス業務やインフラ部分に差別化の源泉はありません。経理処理の方法や勤怠管理のやり方で競争優位が生まれることは、まずないのです。
企業の競争力は、「お客様にどんな価値を提供するか」というフロント部分で決まります。バックオフィスのコストと時間を削減することで、むしろ本業に集中できるようになり、競争力は向上するのです。
航空業界を思い浮かべてください。JALもANAも同じ管制システムを使い、同じ空港インフラを共有しています。しかし、サービスの質や路線戦略で激しく競争しています。「共有すべきものは共有し、競うべきところで競う」。これがシェアリングの本質です。
まとめ:「DXできない」を「DXをシェアする」に変える
地方企業がDXに踏み出せない理由は、意欲の問題ではありません。コスト・人材・知見という3つの構造的な壁が、経営者の前に立ちはだかっているのです。
しかし、この壁は「シェアリング」という発想で突破できます。
- 高額なシステムを、複数社でシェアしてコストを分散する
- IT人材を、プラットフォーム全体で共有する
- 成功事例を、同じ地域・同じ規模の企業間で蓄積する
「自分でやるか、人に任せるか」の二択ではなく、「みんなでシェアする」という第三の選択肢。それが、地方企業のDXを現実的なものに変える鍵です。
Sei San Seiの「地方シェアリングモデル」は、まさにこの考え方を具現化したサービスです。RPaaS(AI採用代行)、BPaaS(業務プロセス自動化)、Web制作(おいで安)、求人メディア掲載(転職どうでしょう)の4つをパッケージ化し、地域の複数企業で共同利用することで、月額22万円から大企業レベルのDX基盤を利用できます。
「DXは大企業のもの」という思い込みを捨てて、まずはシェアリングという選択肢を検討してみませんか。