"採用しない採用戦略"──業務自動化で人を増やさず成長する中小企業の新常識
「人が足りない」。中小企業の経営者なら、一度は口にしたことがあるはずです。そして多くの場合、その次に出てくる言葉は「だから採用しなければ」。もちろん、必要な人材を採用することは企業成長に欠かせません。しかし、「採用だけ」に頼る人手不足対策には限界があるのも事実です。
求人広告を出しても応募が来ない。ようやく採用できても、受け入れ体制が整わず早期離職してしまう。残った社員は新人教育に時間を取られ、本来の業務が回らなくなる。その結果、また人が足りなくなる――。この悪循環に陥る前に、「採用以外の打ち手」も選択肢に加えるべきではないでしょうか。
本記事では、採用活動と並行して取り組むべき「採用しない採用戦略」——つまり業務自動化やアウトソーシングで「人を増やさなくても回る仕組み」を作る3つのアプローチを解説します。採用を否定するのではなく、採用の効果を最大化するための土台づくりと考えてください。
なぜ「人を増やす」だけでは解決しないのか
まず、「採用すれば解決する」という思い込みを見直す必要があります。中小企業にとって、採用は想像以上にコストが重い選択です。
採用コストの高騰は深刻です。求人広告費は年々上昇傾向にあり、1名採用あたりの費用は数十万円に達することも珍しくありません。面接に費やす時間、書類選考の工数、エージェントへの報酬。これらはすべて「見えないコスト」として経営を圧迫します。
さらに問題なのが早期離職のリスクです。厚生労働省の雇用動向調査によると、中小企業における入職後の離職率は大企業と比較して高い傾向が続いています。せっかくコストをかけて採用しても、短期間で退職されれば投資はゼロに戻ります。
教育コストも見過ごせません。新人にOJTで仕事を教えるのは既存社員です。その社員が教育に時間を割くぶん、通常業務のスピードは落ちます。結果として「人を増やしたのに、むしろ忙しくなった」という逆説的な状況が生まれるのです。
つまり、「人を増やす前に、まず業務を整えるべき」なのです。業務の仕組みが整っていない状態で採用しても、新しい人材の力を十分に活かせません。逆に、業務を最適化したうえで採用すれば、その1人が生み出す価値は何倍にもなります。
"採用しない"3つのアプローチ
1. 業務の棚卸しと「やめる判断」
最初にやるべきことは、現在の業務をすべてリストアップし、「本当に必要か」を一つひとつ精査することです。意外なことに、多くの企業では「なぜやっているのか誰もわからないが、ずっと続けている業務」が存在します。
たとえば、こんな業務はないでしょうか。
- 誰も読んでいない週次報告書の作成
- Excelとシステムへの二重入力作業
- 慣例で続けているが効果を測定していない業務プロセス
- 紙で回しているだけの承認フロー
業務コンサルティングの現場では、棚卸しをするだけで全体工数の約2割が「やめても問題ない業務」だったという事例は珍しくありません。「やめる」という判断は、最もコストがかからず、最も即効性のある業務改善です。
2. AIとRPAによる自動化
「やめる」判断の次に取り組むべきは、残った業務のうち定型的なものを自動化することです。
具体的には、以下のような業務がAIやRPAによる自動化の候補になります。
- 請求書の作成・発行:受注データから自動生成し、メール送付まで完結
- 勤怠集計・給与計算:打刻データの集計から給与ソフトへの連携を自動化
- 問い合わせ対応:よくある質問にはAIチャットボットが自動回答
- 文書作成・メール対応:生成AIを活用し、定型文書やメールのドラフトを自動作成
これらの業務を自動化すれば、「1人分の仕事」をAI+RPAで代替できるケースは多くあります。人を1人採用する年間コストと比較すれば、自動化ツールの導入費用ははるかに低く、かつ離職のリスクもありません。
ただし、自社でシステムを構築する必要はありません。近年注目されているのが「BPaaS(Business Process as a Service)」という選択肢です。これは、業務プロセスそのものをサービスとして外部に委託するモデルで、自社でツールを選定・導入・運用する手間を省きながら、業務自動化の恩恵を受けることができます。
3. アウトソーシングの戦略的活用
3つ目のアプローチは、「自社でやる業務」と「外部に任せる業務」を明確に切り分けることです。
ポイントは、コア業務とノンコア業務の線引きです。コア業務とは、自社の売上や競争力に直結する仕事。ノンコア業務とは、経理・労務・総務・採用事務など、重要ではあるものの自社で抱える必然性が低いバックオフィス業務です。
ノンコア業務を外部の専門チームに任せることで、既存社員はコア業務に集中できるようになります。「人が足りない」と感じていた原因が、実は「コア業務に使える時間が足りなかっただけ」だったというケースは非常に多いのです。
さらに、採用業務そのものを外部に委託する「RPaaS(Recruitment Process as a Service)」という選択肢もあります。求人原稿の作成、応募者対応、面接日程の調整、スカウト送信といった採用実務を、AIと専門スタッフが代行します。採用担当者を新たに雇う代わりに、採用プロセスそのものをサービスとして利用する発想です。
「採用しない」が「人を大切にする」につながる理由
「採用しない」という戦略は、一見すると「人を軽視している」ように聞こえるかもしれません。しかし、実態はまったく逆です。
中小企業の離職理由として上位に挙がるのは、「給与への不満」だけではありません。「雑務が多くて本来やりたい仕事ができない」「業務量が多すぎて心身ともに限界」といった、業務負荷に起因する理由が大きな割合を占めています。
業務の棚卸し、自動化、アウトソーシングによって既存社員の業務負荷を適正化することは、離職防止の最も効果的な施策です。「人を増やす」のではなく「仕事を減らす」ことで、今いる社員が無理なく働ける環境を整える。これこそが、本当の意味で「人を大切にする経営」ではないでしょうか。
さらに、業務自動化は「人にしかできない仕事」に集中する環境づくりでもあります。定型業務から解放された社員が、顧客との関係構築、新しいサービスの企画、チームマネジメントといった創造的な仕事に時間を使えるようになれば、組織全体の生産性と士気は大きく向上します。
結果として、少人数でも利益率の高い、強い組織が生まれるのです。
まとめ:まず「1つの業務」を手放すことから
採用は企業成長に不可欠な投資です。しかし、採用「だけ」に頼るのではなく、「業務を減らす」「自動化する」「外部に任せる」という選択肢を組み合わせることで、その投資効果は何倍にもなります。
いきなりすべてを変える必要はありません。まずは1つの業務を選んでください。「この業務、やめてもいいのでは?」「これ、ツールで自動化できるのでは?」「ここは外部に任せられるのでは?」。その問いかけが、業務の仕組みを整え、採用した人材が最大限に活躍できる環境づくりの出発点になります。
Sei San Seiでは、中小企業の業務効率化を支援するBPaaS(業務代行・自動化)サービスと、採用業務そのものを代行するRPaaS(AI採用代行)サービスを提供しています。「まず業務を見直してから、戦略的に採用したい」という方は、ぜひお気軽にご相談ください。