テレワーク・リモートワークで生産性を上げる方法|在宅勤務の落とし穴と対策
コロナ禍を経て、テレワーク・リモートワークは多くの企業にとって「特別な働き方」から「当たり前の選択肢」へと変わりました。総務省の調査によると、テレワークを導入している企業の割合は年々増加傾向にあり、特に中小企業においても導入が進んでいると言われています。
しかし、テレワークを導入したものの「生産性が下がった気がする」「チームの一体感がなくなった」「社員の働きぶりが見えない」——こうした悩みを抱える経営者・管理職は少なくありません。実際、テレワークの生産性に関するさまざまな調査では、「生産性が上がった」と感じる人と「下がった」と感じる人が拮抗しているという傾向が報告されています。
つまり、テレワークは「導入すれば自動的に生産性が上がる」魔法のような施策ではなく、適切な環境整備・ルール設計・マネジメント手法があってこそ効果を発揮するものなのです。
本記事では、テレワークで生産性が下がる原因を分析し、それぞれに対する具体的な対策を解説します。「生産性」完全ガイドと合わせてお読みいただければ、テレワーク環境での生産性向上の全体像がつかめるはずです。
テレワークで生産性が下がる5つの原因
テレワークの生産性低下には、明確なパターンがあります。まずは原因を正しく把握することが、対策の第一歩です。
1. コミュニケーション不足
オフィスで自然に発生していた「ちょっとした雑談」「隣の席への確認」「すれ違いざまの情報共有」——これらが、テレワークでは完全に消えてしまいます。
雑談が減ることの影響は想像以上に大きいと言われています。何気ない会話の中から生まれるアイデア、他部署の動きを知る機会、人間関係の潤滑油——これらの「非公式コミュニケーション」がなくなることで、情報のサイロ化が進み、チームの連携が弱くなるのです。
また、テキストベースのやり取りでは微妙なニュアンスが伝わりにくく、「言ったつもり」「伝わったつもり」のすれ違いが頻発します。こうした小さなコミュニケーションロスの積み重ねが、プロジェクトの遅延や品質の低下につながっていきます。
2. 自己管理の難しさ
オフィスには「周囲の目」という無意識の抑制力が働いています。上司や同僚の存在が、ある意味で「サボりたい」という衝動を抑えてくれます。テレワークでは、この外的なプレッシャーがなくなるため、強い自律性がなければ集中力を維持するのが難しくなるのです。
時間管理も大きな課題です。オフィスでは始業・終業のチャイムや昼休みの時間が自然にリズムを作ってくれますが、在宅勤務では自分でリズムを組み立てなければなりません。「気づいたら午前中が終わっていた」「ダラダラと作業して効率が悪い」——こうした声は、テレワーク経験者からよく聞かれます。
3. 作業環境の問題
オフィスは仕事のために最適化された環境です。デスク、椅子、モニター、ネットワーク、空調——すべてが仕事に集中できるよう整備されています。一方、自宅はそうとは限りません。
- 物理的な環境:専用のデスクや椅子がない、リビングのテーブルで作業している、モニターが小さい
- ネットワーク環境:回線速度が不十分、ビデオ会議中に映像や音声が途切れる
- 家族の存在:子どもの世話、家族からの話しかけ、生活音によって集中が途切れる
- 誘惑の多さ:テレビ、スマートフォン、冷蔵庫が手の届くところにある
特にワンルームや狭い住環境で暮らす若手社員にとって、仕事に集中できる空間を確保すること自体が大きなハードルです。
4. 孤立感・モチベーション低下
人間は社会的な動物です。同僚との何気ない会話、チームで目標を達成する喜び、上司からの「よくやったね」のひと言——こうした対人的なフィードバックが、日々のモチベーションを支えていることに、テレワークになって初めて気づく人は多いと言われています。
テレワークが長期化すると、「自分はチームに必要とされているのだろうか」「自分の仕事が会社にどう貢献しているのかわからない」という不安が生まれやすくなります。この孤立感は、やがてエンゲージメントの低下、さらには離職意向の増加につながるリスクがあります。
5. オンオフの切り替えの難しさ
意外かもしれませんが、テレワークの最大のリスクの一つは「サボること」ではなく「働きすぎること」です。通勤がなくなることで、「もう少しだけ」「この作業を終わらせてから」と、ズルズルと労働時間が延びてしまうケースが少なくありません。
仕事とプライベートの物理的な境界がないため、メールやチャットの通知が気になって夜中まで対応してしまう。休日にも「ちょっとだけ」と仕事を開始してしまう——こうした慢性的な過剰労働は、疲労の蓄積、メンタルヘルスの悪化、そして長期的な生産性の大幅な低下を招きます。
テレワークの生産性を上げる10の方法
ここからは、上述の5つの原因に対応する具体的な改善策を10個紹介します。個人でできることからチーム・組織レベルの施策まで、幅広くカバーしています。
1. 専用ワークスペースの確保
テレワークの生産性向上で最も基本的かつ効果が大きいのが、仕事専用のスペースを確保することです。理想は独立した書斎ですが、そうでなくても「このスペースは仕事用」という明確な区切りを設けることが大切です。
具体的には以下のような工夫が有効です。
- パーテーションや本棚で仕切りを作り、リビングと仕事スペースを物理的に分ける
- 外付けモニターを用意する(ノートPCの小さな画面だけで仕事するのは生産性を大きく損なう)
- 人間工学に基づいた椅子に投資する(腰痛や肩こりは集中力の大敵)
- ノイズキャンセリングイヤホンで周囲の音を遮断する
企業側も、テレワーク手当やオフィス家具の貸与といった形で、社員の自宅環境整備をサポートすることが重要です。環境が整わないまま「在宅で仕事してください」と言っても、パフォーマンスの低下は避けられません。
2. 時間ブロック法の活用
テレワークでは自分で時間を管理する必要があるため、意識的に時間をブロック(区切り)する手法が非常に有効です。代表的な方法として「ポモドーロテクニック」があります。
ポモドーロテクニックは、25分間の集中作業と5分間の休憩を繰り返す方法です。4セット終わったら15〜30分の長めの休憩を取ります。このシンプルなルールが、「あと25分だけ頑張ろう」という短期的な集中力を引き出し、ダラダラ作業を防いでくれます。
もう一つ有効なのが「タイムブロッキング」です。1日のスケジュールをあらかじめ時間帯ごとに区切り、「9:00〜10:30は資料作成」「10:30〜11:00はメール対応」「11:00〜12:00はミーティング」のように、やるべきことを時間に割り当てておく方法です。「何をしようか」と考える時間がなくなるため、切り替えがスムーズになります。
3. 朝のルーティンを決める
テレワークでは通勤がなくなるぶん、「仕事モードに入る」ためのスイッチが必要です。効果的なのは、毎朝決まったルーティンを作ることです。
- オフィスに行くつもりで着替える(パジャマのまま仕事を始めると、気持ちの切り替えができない)
- 決まった時間に起きる(「通勤がないから遅く起きよう」は生活リズムの崩壊の入り口)
- 仕事開始前に軽い運動をする(散歩、ストレッチ、ヨガなど。通勤の代わりに身体を動かす)
- コーヒーを淹れながら1日のタスクを確認する(仕事モードへの移行儀式として)
重要なのは、「仕事を始める前の行動」をパターン化することで、脳に「これから仕事だ」というシグナルを送ることです。ルーティンの内容自体は何でも構いません。自分に合ったものを見つけて、毎日繰り返すことが大切です。
4. タスク管理ツールの活用
テレワークでは、「誰が何をやっているか」が見えにくくなります。この可視化の問題を解決するのが、タスク管理ツールです。
Notion、Trello、Asana、Jiraなど、さまざまなツールがありますが、大切なのはツールの選定よりも「チーム全員が統一して使う」ことです。具体的な活用ポイントは以下の通りです。
- すべてのタスクをツール上に記録する(口頭やチャットだけの依頼を禁止する)
- タスクに締切と担当者を必ず設定する
- 進捗ステータスをこまめに更新する(未着手→進行中→完了)
- 週次でタスクの棚卸しを行う
タスクが可視化されることで、「あの人は今何をしているんだろう」という疑念がなくなり、信頼関係をベースにした自律的な働き方が実現しやすくなります。生産性向上に使えるおすすめツールの記事でも、テレワーク向けのツールを詳しく紹介しています。
5. 定期的な1on1ミーティング
テレワーク環境では、上司と部下の接点が公式なミーティングに限定されがちです。しかし、業務報告の場だけでは、部下の悩みやモチベーションの変化に気づくことは困難です。
週1回、15〜30分の1on1ミーティングを設けることで、この問題を大きく改善できます。1on1の目的は業務報告ではなく、以下のような対話です。
- 「最近、仕事で困っていることはないか」
- 「テレワーク環境で不便に感じていることはないか」
- 「キャリアについて考えていることはあるか」
- 「チーム内で改善してほしいことはあるか」
大切なのは、上司が「聴く」姿勢に徹することです。テレワーク環境では、部下が抱える不満や不安が表に出にくくなるため、意識的に「話しやすい場」を作ることが、孤立感の解消とエンゲージメントの維持に直結します。
6. 非同期コミュニケーションのルール化
テレワークでは、すべてのコミュニケーションを「リアルタイム」で行おうとすると、ミーティングだらけの1日になってしまいます。そこで重要なのが、「非同期コミュニケーション」のルール化です。
非同期コミュニケーションとは、相手の即座の返答を前提とせず、各自の都合の良いタイミングで確認・返信するコミュニケーション方式です。チャットやドキュメント共有がこれに当たります。
効果的なルールの例を挙げます。
- 「緊急」以外の連絡はチャットで行い、返信は2時間以内を目安とする
- ミーティングの議事録は必ず共有ドキュメントに残す(参加できなかった人も後から確認できるように)
- 意思決定の経緯をドキュメントに記録する(「なぜこう決まったか」が後からわかるように)
- チャットでは結論を先に書く(長文を読ませてから結論、では読む側の負担が大きい)
このルールが浸透すると、「集中して作業する時間」と「コミュニケーションに充てる時間」を自分でコントロールできるようになり、テレワークならではの「深い集中」が可能になります。
7. カメラONのルール設定
ビデオ会議で「カメラをONにするかどうか」は、テレワークにおける議論の的の一つです。カメラONを強制すべきかどうかは一概に言えませんが、少なくとも重要なミーティングでは顔を見せ合うことのメリットは大きいと言えます。
顔が見えることで、相手の表情から理解度や感情を読み取れるため、コミュニケーションの質が上がります。また、「見られている」意識が適度な緊張感を生み、会議への集中度も高まります。
ただし、すべてのミーティングでカメラONを強制するのは避けた方がよいでしょう。短い確認事項だけの打ち合わせや、大人数が参加する情報共有型の会議では、カメラOFFでも問題ありません。チーム内で「このタイプのミーティングではカメラON」というルールを事前に決めておくとスムーズです。
8. 休憩時間の意識的な確保
テレワークでは、意識しないと休憩を取らないまま長時間作業してしまいがちです。前述の通り、これは生産性低下の大きな要因です。
「休憩は生産性のための投資」という意識を持つことが大切です。具体的には以下のようなルールを自分に課してみましょう。
- 90分に1回は必ず席を立つ(人間の集中力は約90分が限界とされている)
- 昼休みは必ず1時間取り、PCから離れる(食事をしながら仕事を続けない)
- 外に出て日光を浴びる(15分程度の散歩がリフレッシュ効果大)
- 終業時刻を決め、それ以降はPCを閉じる(「もう少しだけ」を許さない)
管理職は、「休憩を取っている社員=サボっている」という認識を改める必要があります。適度な休憩を取るからこそ、集中力を維持して高い生産性を発揮できるのです。
9. 成果ベースの評価制度への移行
テレワーク環境で「プロセス(働いている姿)」を評価しようとすると、監視ツールの導入や過剰な報告義務といった方向に進みがちです。これは社員の信頼感を損ない、結果的にモチベーションと生産性を下げてしまいます。
テレワークに適した評価制度は、「成果ベース」の評価です。具体的には以下のようなアプローチが有効です。
- OKR(Objectives and Key Results):四半期ごとに達成すべき目標と主要な成果指標を設定する
- KPI:定量的な指標で進捗を可視化する
- 成果物ベースの評価:「何時間デスクに座っていたか」ではなく「何を完成させたか」で評価する
ただし、成果ベースの評価に移行する際は、「成果」の定義を上司と部下の間で明確に合意しておくことが不可欠です。曖昧なまま「成果で評価する」と宣言しても、双方の認識がずれていれば不満が蓄積するだけです。生産性向上の方法15選で紹介した「KPI設定」の考え方が、ここでも役立ちます。
10. オフラインイベントの定期開催
テレワーク中心の働き方であっても、定期的に対面で集まる機会を設けることは極めて重要です。月に1回、あるいは四半期に1回でも、チームメンバーが一堂に会する機会を作ることで、オンラインだけでは得られない効果が生まれます。
- チームビルディング:対面での食事や懇親会が、チームの結束力を高める
- ブレインストーミング:ホワイトボードを使った対面のディスカッションは、オンラインでは代替しにくい
- 非言語コミュニケーション:表情、身振り、空気感など、オンラインでは伝わりにくい情報を共有できる
- 帰属意識の醸成:「自分はこのチームの一員だ」という感覚を再確認できる
コストや移動の手間はかかりますが、チームの一体感が失われてから取り戻すコストの方がはるかに大きいということを忘れないでください。特にフルリモートの組織では、意図的にオフラインの接点を作ることが、持続可能なテレワーク運営のカギになります。
テレワークに役立つツール
テレワークの生産性を支えるのは、適切なツールの選定と活用です。カテゴリ別に、広く使われているツールを紹介します。
チャットツール
テレワークのコミュニケーションの中心となるのがチャットツールです。Slack、Microsoft Teams、Google Chatなどが代表的です。チャンネル(トピック)ごとに会話を整理できるため、必要な情報に素早くアクセスできるのが特徴です。
チャットツールを効果的に使うコツは、「チャンネルの粒度を適切に設定する」ことです。細かすぎると情報が分散し、大雑把すぎると重要な情報が埋もれてしまいます。プロジェクトごと、部門ごと、雑談用など、チームの規模に合った構成を設計することが大切です。
ビデオ会議ツール
Zoom、Google Meet、Microsoft Teamsなどのビデオ会議ツールは、テレワークの「対面」を担います。近年は背景ぼかし、リアルタイム字幕、AI議事録、ブレイクアウトルームなど、テレワークならではのニーズに応える機能が充実してきています。
ビデオ会議の生産性を上げるコツは、「会議の目的を事前に明確にすること」と「必要な人だけを招集すること」です。テレワークでは「とりあえず全員呼んでおこう」というミーティングが増えがちですが、これは参加者全員の時間を奪ってしまいます。
タスク・プロジェクト管理ツール
Notion、Trello、Asana、Monday.com、Jiraなどのツールは、タスクの進捗を可視化し、チーム全体の業務状況を把握するのに役立ちます。「誰が何をいつまでにやるのか」が一目でわかる状態を作ることが、テレワークの信頼ベースのマネジメントの基盤になります。
時間管理ツール
Toggl Track、Clockify、RescueTimeなどの時間管理ツールは、自分が何にどれだけの時間を使っているかを可視化してくれます。「忙しいはずなのに成果が出ない」という場合、時間の使い方を分析することで、改善のヒントが見つかることがあります。
ただし、これらのツールを管理職が「監視」目的で使うのは逆効果です。あくまで本人が自分の働き方を振り返り、改善するためのセルフマネジメントツールとして位置づけることが大切です。
テレワーク向けに限らず、生産性向上に役立つツールは生産性向上に使えるおすすめツールの記事で詳しく解説しています。
ハイブリッドワークという選択肢
完全テレワークと完全出社、どちらにも一長一短があります。そこで近年注目されているのが、両者のいいとこ取りをした「ハイブリッドワーク」です。
完全テレワーク vs ハイブリッドワーク
それぞれの特徴を整理してみましょう。
完全テレワークのメリット:
- 通勤時間の完全な削減
- 居住地の制約がなくなる(地方在住でも都心の企業で働ける)
- オフィスコストの大幅な削減
完全テレワークのデメリット:
- 孤立感が強まりやすい
- チームの一体感を維持しにくい
- 新入社員のオンボーディングが難しい
- 偶発的なイノベーション(偶然の出会いから生まれるアイデア)が生まれにくい
ハイブリッドワークのメリット:
- 集中作業は自宅、対面が必要な業務は出社と使い分けられる
- 適度な対面接触がチームの結束力を維持する
- 社員の柔軟性と自律性を尊重しつつ、組織としてのまとまりも保てる
最適なハイブリッドワークの運用方法
ハイブリッドワークを成功させるためのポイントは以下の通りです。
- 出社日を固定する:「火曜と木曜は全員出社」のように、チーム全員が揃う日を決める。バラバラに出社しても「顔を合わせられない」では意味がない
- 出社日の過ごし方を設計する:出社日に一人でPCに向かっているなら、在宅で十分。出社日は対面でこそ効果が出る活動——ブレインストーミング、1on1、チームランチなど——に充てる
- 在宅日のルールを整備する:コアタイムの設定、連絡手段の統一、成果物の提出タイミングなど、最低限のルールを決める
- 公平性を担保する:出社組と在宅組の間で情報格差が生まれないよう、すべての決定事項をオンラインでも共有する仕組みを作る
ハイブリッドワークは「なんとなく出社」「なんとなく在宅」にならないよう、出社日と在宅日それぞれの目的を明確にすることが成功のカギです。
まとめ
テレワーク・リモートワークは、正しく運用すれば生産性を大きく向上させる可能性を持っています。しかし、「導入すれば勝手にうまくいく」ものではなく、環境・ルール・マネジメントの3つを意識的に整備する必要があるのです。
本記事のポイントを振り返ります。
- 生産性低下の5大原因を理解する:コミュニケーション不足、自己管理の難しさ、環境問題、孤立感、オンオフの切り替え困難
- 専用ワークスペースと時間管理で個人の生産性を上げる
- 非同期コミュニケーションのルール化でチームの効率を上げる
- 1on1と成果ベースの評価でエンゲージメントを維持する
- ハイブリッドワークで対面とリモートのいいとこ取りをする
テレワークの生産性向上は、「生産性」完全ガイドで解説している通り、「限られた資源で最大の成果を出す」という生産性の本質そのものです。働く場所が変わっても、この原則は変わりません。
株式会社Sei San Seiでは、テレワーク環境での業務効率化をBPaaS(業務自動化)やおいで安(Web制作)を通じてご支援しています。テレワークの運用でお困りの方は、ぜひお気軽にご相談ください。