生産性向上の方法15選|すぐ使える施策を効果別にランキング
「生産性を上げなければ」と頭ではわかっていても、具体的に何から手を付ければいいのかわからない——そんな悩みを抱える中小企業の経営者・管理職の方は少なくないでしょう。生産性向上の施策は無数にありますが、すべてを同時に実行するのは現実的ではありません。
本記事では、中小企業が実践しやすい生産性向上の方法を15個厳選し、効果の大きさで「効果大」「効果中」「基盤づくり」の3段階に分類しました。限られたリソースのなかで最大の効果を出すために、どこから着手すべきか——その優先順位の付け方もあわせて解説します。
「生産性」の基本概念や計算方法から学びたい方は、こちらの完全ガイドを先にお読みいただくと、本記事の内容がより深く理解できます。また、日本の生産性が低い5つの構造的原因を把握しておくと、なぜこれらの施策が効果的なのかがクリアになります。
【効果大】業務プロセスの抜本改善
まずは最もインパクトの大きい施策群から見ていきましょう。業務プロセスそのものを見直すことで、生産性を大幅に改善できる3つの方法です。
1. 業務の棚卸しと「やめる」判断
生産性向上の出発点は、「今やっている業務の中で、本当に必要なものはどれか」を見極めることです。多くの企業では、過去の慣習で続いている業務や、形骸化した報告書作成、誰も読まない週次レポートなどが積み重なっています。
具体的なステップは以下の通りです。
- 全業務を一覧にする:各部門・各担当者の業務を洗い出す
- 3つに分類する:「やめる」「減らす」「変える(自動化する)」
- 「やめる」から実行する:最も簡単で、最もインパクトが大きい
「やめる」は最もコストがかからない改善施策であり、最も勇気が必要な施策でもある。
驚くべきことに、業務の棚卸しを実施した企業の多くが、全体の20〜30%程度の業務は「やめても問題ない」と判断できると言われています。この「やめる」判断だけで、その分のリソースがコア業務に振り向けられます。
2. RPA導入による定型業務の自動化
RPA(Robotic Process Automation)は、PCで行う定型的な操作をソフトウェアロボットが自動で実行する技術です。データの転記、請求書の発行、勤怠データの集計——こうした「決まったルールに従って繰り返す作業」は、RPAの最も得意とする領域です。
RPAの導入効果は非常に大きく、対象業務の処理時間を約50〜90%程度削減できるケースも珍しくありません。たとえば、毎月の請求書処理に10時間かかっていた作業がRPAで1時間になれば、月に9時間が新たな付加価値創出に使えるようになります。
- 向いている業務:データ入力・転記、定型メールの送信、レポート生成、Webからの情報収集
- 向いていない業務:判断が必要な業務、クリエイティブな作業、対人コミュニケーション
中小企業向けのRPAツールは月額数万円から利用できるものもあり、投資対効果(ROI)が出やすい施策です。RPAの導入方法と始め方については別記事で詳しく解説しています。
3. BPaaS(業務プロセスの外部委託)の活用
BPaaS(Business Process as a Service)は、業務プロセスそのものをクラウドサービスとして外部に委託するモデルです。従来のBPO(Business Process Outsourcing)と異なり、ITツールと運用がセットになっているため、導入がスムーズで効果が出やすいのが特徴です。
中小企業にとってBPaaSが特に有効なのは、「一人何役」問題の解消です。経理、人事、IT管理といったバックオフィス業務を外部に任せることで、社内のリソースを営業やサービス提供といったコア業務に集中できます。
- 経理BPaaS:記帳、請求書発行、入金確認、月次決算を外部委託
- 人事BPaaS:給与計算、社保手続き、勤怠管理を外部委託
- IT管理BPaaS:PCセットアップ、アカウント管理、ヘルプデスクを外部委託
コストは月額数万円〜数十万円程度ですが、専任社員を一人雇うよりも大幅にコストを抑えられるケースが多く、中小企業にとっては合理的な選択肢です。
【効果大】AI・デジタルツールの活用
続いて、AIとデジタルツールを活用した生産性向上施策です。2025年以降、AIツールの実用性は飛躍的に向上しており、中小企業でも手軽に導入できるようになっています。
4. 生成AI(ChatGPT等)の業務活用
ChatGPTをはじめとする生成AIは、もはやビジネスパーソンの必須ツールになりつつあります。文章の作成・要約、アイデア出し、データ分析、プログラミング支援——幅広い業務で生産性を大幅に向上させることが可能です。
中小企業における具体的な活用例を見てみましょう。
- メール・報告書の作成:要点を箇条書きで入力すれば、AIがビジネス文書に仕上げてくれる。作成時間を約50%以上削減できるケースも
- 議事録の自動生成:会議の録音データからAIが議事録を作成。記録係が不要になり、全員が議論に集中できる
- カスタマーサポート:よくある質問への回答をAIが自動生成。対応時間の短縮と品質の均一化を同時に実現
- 企画・リサーチ:市場調査や競合分析の下調べをAIに任せることで、人間はより高度な判断と戦略立案に集中できる
生成AIの導入コストは、基本的な機能であれば月額数千円程度から始められます。「まずは1つの業務で試してみる」というスモールスタートがおすすめです。
5. クラウドツールによるペーパーレス化
紙の書類、FAX、ハンコ——これらをクラウドツールに置き換えるだけで、業務効率は劇的に改善します。ペーパーレス化は「古い話」に聞こえるかもしれませんが、実際にはまだ多くの中小企業で紙ベースの業務が残っています。
- 電子契約サービス(クラウドサイン、DocuSign等):契約締結までの日数を数日から数時間に短縮
- クラウド会計(freee、マネーフォワード等):経理業務の工数を約40〜60%程度削減できるとも
- オンラインストレージ(Google Workspace、Microsoft 365等):ファイル共有・共同編集でメールの添付ファイルが不要に
ペーパーレス化の効果は、紙の印刷コストや保管スペースの削減だけではありません。情報の検索性が飛躍的に向上し、リモートワークも可能になります。
6. データ分析による意思決定の高速化
中小企業の経営判断は、「経験と勘」に頼っているケースがまだまだ多いのが実情です。しかし、データに基づく意思決定(データドリブン経営)に移行することで、判断の精度とスピードを同時に高めることができます。
といっても、高度なBIツールを導入する必要はありません。まずはExcelやスプレッドシートで、売上データ、顧客データ、業務時間データを整理することから始めればOKです。「どの商品が利益率が高いのか」「どの営業チャネルが効率的なのか」——こうした問いにデータで答えられるようになるだけで、意思決定の質は大きく変わります。
【効果中】組織・人材マネジメントの改善
ツールや技術だけでは、生産性は上がりません。組織の仕組みと人材の活かし方を見直すことも、生産性向上には欠かせない要素です。
7. 権限委譲と意思決定の分散化
中小企業でありがちなのが、あらゆる判断を社長(または特定の上長)が行っているというパターンです。発注の承認、見積書の確認、採用の判断——すべてが一人に集中していると、その人がボトルネックになり、組織全体のスピードが落ちます。
権限委譲のポイントは以下の通りです。
- 金額基準で権限を分ける:「10万円以下は部門長が決裁」など明確なルールを設定
- 定型的な判断は現場に任せる:マニュアルや判断基準を整備し、現場で即座に対応できるようにする
- 重要な判断に集中する:社長は「やるか・やらないか」の戦略判断に集中する
8. 適材適所の人材配置
同じ人でも、得意な業務と苦手な業務では、生産性に2〜3倍の差が出ることがあります。「この人は昔からこの部署だから」という理由で配置を固定していませんか。
適材適所を実現するためには、まず社員一人ひとりの強みと弱みを把握することが必要です。定期的な1on1ミーティングや、スキルマップの作成を通じて、各社員の能力と志向を「見える化」しましょう。
9. 評価制度の見直し(成果ベースへ)
「長時間働いている人が評価される」制度は、生産性を下げるインセンティブになっています。定時で成果を出す人よりも、残業して長時間デスクにいる人が評価される——このような評価制度では、社員は効率化する動機を失います。
評価の基準を「投入時間」から「成果(アウトプット)」に変えることが、生産性向上の最も強力なドライバーのひとつ。
成果ベースの評価に移行する際は、「何をもって成果とするか」を事前に明確化することが重要です。数値目標(売上、件数、コスト削減額など)と、定性的な貢献(チームへの影響、顧客満足度の向上など)を組み合わせた評価基準を設計しましょう。
10. 人材育成・リスキリング投資
社員のスキルが時代に合っていなければ、どれだけ良いツールを導入しても生産性は上がりません。特にデジタルスキルのリスキリング(学び直し)は、中小企業にとって喫緊の課題です。
- 生成AIの基本操作:全社員がChatGPT等の基本的な使い方を習得する
- データリテラシー:Excelの関数・ピボットテーブルを使いこなせるレベルを目指す
- クラウドツールの活用:Google WorkspaceやMicrosoft 365の協働機能を使いこなす
外部研修は費用がかかりますが、オンライン学習プラットフォーム(Udemy、Schoo等)であれば、一人あたり月額数千円程度で幅広いスキルを学べます。投資対効果の高い人材育成です。
【効果中】ワークスタイルの改革
働き方そのものを見直すことも、生産性向上の重要な柱です。「いつ・どこで・どのように」働くかを最適化することで、社員のパフォーマンスを引き出します。
11. 会議の削減・効率化ルール
「会議が多すぎて仕事が進まない」——これは多くのビジネスパーソンが感じている問題です。調査によると、ビジネスパーソンの業務時間のうち約15〜30%程度が会議に費やされているとも言われています。
会議の生産性を高めるための具体的なルールを導入しましょう。
- 会議の目的を事前に明確化:「情報共有だけ」ならメール・チャットで十分
- 参加者を最小限に絞る:「念のため呼んでおく」をやめる
- 時間を短くする:60分を30分に、30分を15分に。終了時間を厳守する
- 「会議のない日」を設ける:週に1日は会議を入れない日を作る
12. テレワーク・フレックスタイムの導入
コロナ禍をきっかけに広がったテレワークは、通勤時間の削減と集中作業時間の確保という2つの面で生産性向上に貢献します。往復の通勤に1〜2時間かけている社員がテレワークに移行すれば、その時間がそのまま業務や私生活に使えるようになります。
もちろん、すべての業務がテレワークに向いているわけではありません。「テレワークに向いている業務」と「出社が必要な業務」を明確に切り分け、ハイブリッド勤務を設計するのが現実的なアプローチです。
13. 集中作業時間の確保(ディープワーク)
メール、チャット、電話、ミーティング——現代のオフィスワーカーは常に「割り込み」にさらされています。集中が途切れるたびに、元の作業に戻るまでに約23分程度かかるという研究結果もあります。
「ディープワーク」——深い集中を必要とする作業に充てるまとまった時間を意図的に確保する取り組みは、知識労働の生産性を大きく左右します。
- 午前中の2時間は集中タイムとして、チャット・メールを見ない
- 通知をオフにする時間帯を設ける
- カレンダーに「作業時間」をブロックする
【基盤づくり】環境・制度の整備
最後に、生産性向上の「土台」となる環境・制度の整備です。地味に見えますが、これらが整っていないと他の施策の効果も半減します。
14. IT基盤の整備(ネット環境、PCスペック等)
「パソコンが遅い」「ネットがよく切れる」——こうしたITインフラの問題は、日々の業務で確実に生産性を蝕んでいます。PCの起動に5分かかる環境で毎日働いていれば、年間で約20時間以上がPCの起動待ちだけで消えている計算になります。
- PCスペックの見直し:5年以上前のPCは買い替えを検討。SSDへの換装だけでも体感速度は大幅に向上
- ネットワーク環境の改善:Wi-Fiの速度測定を行い、ボトルネックを特定する
- セキュリティ対策:ウイルス対策ソフト、ファイアウォール、バックアップの整備。セキュリティ事故は最大の業務停止リスク
15. 業務マニュアル・ナレッジベースの整備
「あの業務はAさんしかわからない」「Bさんが休むと仕事が止まる」——属人化は中小企業の生産性を最も大きく蝕む問題のひとつです。業務マニュアルやナレッジベース(社内Wiki)を整備することで、誰が担当しても一定の品質で業務を遂行できる体制を構築します。
- 主要業務のマニュアルを作成する:まずは「その人がいないと回らない業務」から
- 動画マニュアルも活用する:画面録画ツールで操作手順を録画するだけでも有効
- 定期的に更新する:古いマニュアルは使われない。更新ルールを決める
ナレッジベースの整備は短期的な効果は見えにくいですが、社員の入退社時の引き継ぎコスト削減、教育コストの低減、業務品質の安定化など、中長期的に大きなリターンをもたらします。
施策の選び方:自社に合った優先順位の付け方
15個の施策を紹介しましたが、すべてを一度に実行するのは不可能です。自社の状況に合った優先順位の付け方を考えましょう。
コスト・時間・効果で比較する
各施策を「導入コスト」「効果が出るまでの時間」「期待される効果の大きさ」の3軸で評価し、優先マトリクスを作成するのが効果的です。
- すぐに始められて効果が大きい:業務の棚卸し(1)、会議の削減(11)、集中時間の確保(13)
- 導入に時間はかかるが効果が大きい:RPA導入(2)、BPaaS活用(3)、生成AI活用(4)
- コストは低いが着実に効く:権限委譲(7)、評価制度の見直し(9)、マニュアル整備(15)
まず「痛みが大きい」ところから
優先順位に迷ったら、「今、最も業務のボトルネックになっている部分」から着手しましょう。残業が多い部門、ミスが頻発している業務、社員の不満が集中しているプロセス——こうした「痛み」が大きい部分を改善すれば、効果を実感しやすく、組織全体のモチベーションも上がります。
段階的に拡大する
生産性向上は一度に完成させるものではなく、継続的に改善していくものです。最初の施策で効果を実感したら、次の施策へ。小さな成功体験を積み重ねることで、組織全体に「改善の文化」が根付いていきます。
生産性向上 = 一発の大改革 ではなく、小さな改善の積み重ね。
「1日1%の改善」を365日続ければ、1年後には約37倍になる。
まとめ
本記事で紹介した生産性向上の方法15選を改めて整理します。
【効果大】業務プロセスの抜本改善
- 業務の棚卸しと「やめる」判断
- RPA導入による定型業務の自動化
- BPaaS(業務プロセスの外部委託)の活用
【効果大】AI・デジタルツールの活用
- 生成AI(ChatGPT等)の業務活用
- クラウドツールによるペーパーレス化
- データ分析による意思決定の高速化
【効果中】組織・人材マネジメントの改善
- 権限委譲と意思決定の分散化
- 適材適所の人材配置
- 評価制度の見直し(成果ベースへ)
- 人材育成・リスキリング投資
【効果中】ワークスタイルの改革
- 会議の削減・効率化ルール
- テレワーク・フレックスタイムの導入
- 集中作業時間の確保(ディープワーク)
【基盤づくり】環境・制度の整備
- IT基盤の整備
- 業務マニュアル・ナレッジベースの整備
最も大切なのは、「完璧な計画を立ててから始める」のではなく、「小さく始めて、素早く効果を検証する」ことです。15個のうち、まずは1つだけでも今週中に着手してみてください。
RPaaSやBPaaSについて詳しく知りたい方は、株式会社Sei San Seiまでお気軽にご相談ください。また、AI活用による生産性向上の具体的な導入事例と費用対効果や、中小企業に特化した生産性向上のアクションプランもあわせてお読みいただくと、自社に合った施策が見つかるはずです。
「生産性」について体系的に学びたい方は、こちらの完全ガイドもぜひご活用ください。