生産性 2026.02.27

中小企業の生産性向上|社員10人からできる具体的アクションプラン

中小企業の生産性向上|社員10人からできる具体的アクションプラン

「生産性向上」と聞くと、大企業がコンサルティング会社を雇い、数千万円規模のシステムを導入するイメージを持つ方も多いのではないでしょうか。しかし実際には、社員10人規模の中小企業こそ、生産性向上の効果が最も大きく現れるのです。少人数だからこそ、一つの改善が全社に波及しやすい。意思決定も早い。大企業のような複雑な稟議もありません。

本記事では、中小企業(社員10〜100人規模)に特化した生産性向上のアクションプランを、4つのフェーズに分けて解説します。「何から手をつければいいかわからない」という方でも、Phase 1から順に取り組むことで、着実に成果を出せる構成になっています。生産性の基本的な考え方については「生産性」完全ガイドも合わせてご覧ください。

なぜ中小企業こそ生産性向上が急務なのか

日本の中小企業は、全企業数の約99.7%を占めています。しかし、日本の生産性が低い5つの原因でも解説した通り、日本企業の労働生産性はOECD加盟国のなかで長年低位に留まっており、とりわけ中小企業での生産性の低さが課題として指摘されています。

人手不足の直撃を受ける

大企業はブランド力や待遇面で人材を集めやすい一方、中小企業は採用が年々厳しくなっています。少子高齢化による労働人口の減少は、今後さらに加速します。「人が足りない」を前提にした経営に転換しなければ、事業そのものの継続が危うくなります。

一人あたりの負担が大きい

社員10人の会社で1人が欠けると、業務の10%が消失します。大企業の社員1,000人で1人が欠けるのとはインパクトが全く違います。一人ひとりの生産性を上げることが、そのまま会社全体の競争力につながるのです。

「忙しすぎて改善に手が回らない」という悪循環

中小企業でよく聞くのが「日々の業務に追われて、改善どころではない」という声です。これは典型的な悪循環です。忙しいから改善できない、改善できないから忙しいまま。この悪循環を断ち切る最初の一歩が、次に紹介する「現状把握」です。

【Phase 1】現状把握(1〜2週間)

生産性向上の第一歩は、「何に時間を使っているか」を正確に把握することです。生産性向上の方法15選でも強調している通り、現状を数値で把握しなければ、改善の優先順位がつけられません。

業務の棚卸し:誰が何にどれだけ時間を使っているか

まず、全社員に1〜2週間の業務記録をつけてもらいます。難しいツールは不要で、Excelやスプレッドシートで十分です。記録する項目は以下の3つだけです。

  • 何をしたか(業務内容)
  • どれくらいかかったか(所要時間)
  • その業務は自分にしかできないか(代替可能性)

たった2週間の記録でも、「この作業に毎週こんなに時間をかけていたのか」という発見が必ずあります。

「やめられる業務」「減らせる業務」を洗い出す

棚卸しの結果を分類します。業務を以下の4つに振り分けてください。

  1. やめる:惰性で続けているだけの業務。誰も読まない報告書、形骸化した朝礼など
  2. 減らす:頻度や時間を半分にできる業務。週1で十分な会議を毎日やっていないか
  3. 任せる:社長や管理職がやる必要のない業務。経理処理、データ入力、スケジュール調整など
  4. 改善する:やり方を変えれば効率が上がる業務。手作業をデジタル化、テンプレート化するなど

KPIの設定:何を測定するか決める

改善の効果を測るために、最低1つはKPIを設定します。難しく考える必要はありません。例えば「月間残業時間の合計」「受注から納品までのリードタイム」「一人あたり売上高」など、今のデータで測定できるものを選びましょう。

【Phase 2】クイックウィン(1〜3ヶ月)

現状把握ができたら、次はコストをほとんどかけずに、すぐに効果が出る施策から着手します。いわゆる「クイックウィン」です。ここで早期に成果を出すことが、社内のモチベーション維持に直結します。

無駄な会議の廃止・短縮

中小企業でも、意外と多いのが「なんとなく続いている会議」です。以下のルールを導入するだけで、会議にかかる時間を大幅に削減できます。

  • 会議は目的とゴールを事前に明示する。目的がないなら開催しない
  • 時間は30分を上限とする。どうしても足りなければ延長ではなく次回に持ち越す
  • 参加者は必要最小限に絞る。「念のため出席」は禁止
  • 議事録はアクションアイテムと期限だけ記録する

クラウドツールの導入

まだ社内のファイル共有をUSBメモリやメール添付で行っている企業は少なくありません。Google WorkspaceやMicrosoft 365のようなクラウドツールを導入するだけで、ファイルの共有、同時編集、バージョン管理が一気に効率化されます。月額数百円から始められるので、投資対効果は非常に高いです。

社内コミュニケーションも、メールからSlackやTeamsなどのチャットツールに移行すると、情報共有のスピードが格段に上がります。

紙業務のデジタル化

請求書、見積書、稟議書、日報——紙で運用している書類をデジタルに切り替えるだけで、印刷・郵送・ファイリングの時間とコストが消滅します。クラウド請求書サービスやワークフローツールは、無料プランや安価なプランが豊富にあります。

テンプレート・チェックリストの整備

日常的に繰り返す業務は、テンプレート化・チェックリスト化しておきましょう。メールの定型文、報告書のフォーマット、新規顧客対応のチェックリストなど、「毎回ゼロから作る」を「テンプレートを埋める」に変えるだけで、作業時間は半分以下になります。

【Phase 3】本格的な仕組み化(3〜6ヶ月)

Phase 2で「小さな成功体験」を積んだら、いよいよ本格的な仕組み化に進みます。ここからは多少の投資が必要ですが、投資以上のリターンが見込める施策に絞って実行します。

RPA導入で定型業務を自動化

RPA(Robotic Process Automation)は、パソコン上の定型的な作業をソフトウェアのロボットが代行する技術です。例えば、毎日の売上データの集計、システム間のデータ転記、定期レポートの作成など、「ルールが決まっていて、繰り返し行う作業」はRPAの得意分野です。

中小企業向けのRPAツールは月額数万円程度から導入でき、プログラミング不要で設定できるものも増えています。業務効率化の進め方の記事も参考にしてください。

BPaaS活用で専門業務を外部化

BPaaS(Business Process as a Service)とは、業務プロセスそのものをクラウドサービスとして外部に委託する仕組みです。経理、人事労務、カスタマーサポートなど、専門知識が必要だが自社でフルタイム雇用するほどではない業務は、BPaaSを活用することで品質を保ちながらコストを抑えられます。

「外注」との違いは、BPaaSはAIやクラウドツールを組み合わせて提供されるため、単なる人手の代替ではなく、業務プロセスそのものが効率化される点にあります。

AI採用代行(RPaaS)で採用業務の負荷を軽減

中小企業にとって、採用活動は大きな負担です。求人票の作成、応募者対応、日程調整、スクリーニング——これらの業務に経営者や管理職が毎日時間を取られているケースは珍しくありません。

RPaaS(Recruitment Process as a Service)は、AIを活用した採用代行サービスです。スカウトメールの作成・送信、応募者の一次スクリーニング、面接日程の自動調整などをAIと専門スタッフが組み合わせて代行します。採用担当者は面接と最終判断に集中でき、採用の質を落とさずに工数を大幅に削減できます。

データに基づく意思決定の仕組みづくり

Phase 1で設定したKPIを定期的にモニタリングし、「勘」ではなく「データ」で判断する習慣を社内に根付かせましょう。ダッシュボードツール(Google Looker Studio等は無料で使えます)を導入し、売上、コスト、稼働率などの主要指標をリアルタイムで可視化することで、問題の早期発見と迅速な対応が可能になります。

【Phase 4】持続的な改善文化(6ヶ月〜)

Phase 1〜3で仕組みを整えたら、最後は改善を「一時的なプロジェクト」ではなく「日常」にする段階です。ここが最も重要であり、多くの企業が挫折するポイントでもあります。

改善を「特別なこと」から「日常」にする

生産性向上は、一度やって終わりではありません。市場環境は変わり、新しいツールが登場し、社員の構成も変化します。「改善し続けること」そのものが競争優位性になるのです。トヨタの「カイゼン」が世界的に注目されたのも、まさにこの「日常としての改善」を仕組み化したからです。

月次の振り返り会議の導入

月に1回、30分で構いません。「先月設定した改善施策の効果はどうだったか」「新たに発見した課題はあるか」を全員で振り返る場を設けましょう。この振り返りの場があるだけで、改善が自然と継続するようになります。

従業員からの改善提案制度

現場の社員は、日々の業務のなかで「ここがもっとこうなれば効率がいいのに」という気づきを数多く持っています。改善提案を気軽に出せる仕組み(Slackの専用チャンネル、月次の提案シートなど)を整え、良い提案は即座に採用して本人にフィードバックしましょう。「提案しても何も変わらない」という体験をさせないことが肝要です。

生成AI等の新技術を継続的にキャッチアップ

AIやデジタルツールの進化は加速しています。半年前にはなかったサービスが、今日の業務を劇的に変える可能性があります。経営者自身が新しい技術に関心を持ち、「試してみる」姿勢を見せることで、社内全体のデジタルリテラシーが底上げされます。

補助金・助成金を活用する

中小企業の生産性向上に取り組む際、活用を検討したいのが国や自治体の補助金・助成金です。初期投資のハードルを大きく下げることができます。

IT導入補助金

中小企業がITツールを導入する際の費用を一部補助する制度です。会計ソフト、受発注システム、顧客管理ツールなど幅広い対象があり、導入費用の最大半額程度が補助されるケースもあります。

ものづくり補助金

製造業に限らず、サービス業なども対象になる補助金です。生産性向上のための設備投資やシステム導入に活用できます。「革新的なサービス開発」や「生産プロセスの改善」に取り組む中小企業が対象です。

業務改善助成金

事業場内の最低賃金を引き上げた中小企業に対して、生産性向上のための設備投資費用を助成する制度です。賃上げと生産性向上を同時に実現する仕組みとして設計されています。

これらの補助金・助成金は、募集時期や条件が年度ごとに変更されることがあります。最新の情報は、中小企業庁のWebサイトや各自治体の産業振興課で確認してください。

事例:社員15人の企業が生産性を1.5倍にした取り組み

ここでは、Phase 1〜4の流れに沿って生産性向上に成功した、ある地方の製造業(社員15人)の取り組みを紹介します。

Phase 1:現状を数値で把握した

この企業では、社長が「なんとなく忙しい」と感じていたものの、どこにボトルネックがあるか分かっていませんでした。全社員に2週間の業務記録をつけてもらった結果、営業担当者が1日の約40%を見積書の作成と修正に費やしていることが判明しました。

Phase 2:まず見積書をテンプレート化した

最初に取り組んだのは、見積書のテンプレート化です。過去の見積書300件を分析し、パターンを8種類に集約。テンプレートを選んで数値を入れるだけで見積書が完成する仕組みにしたところ、見積書の作成時間が平均60分から15分に短縮されました。

Phase 3:受発注をクラウド化、採用はRPaaSを活用

次に、紙とFAXで行っていた受発注をクラウドシステムに移行。同時に、年に数回の採用活動にかかる負荷をRPaaSで外部化しました。社長と営業部長が採用業務に割いていた月20時間が、ほぼゼロになりました。

Phase 4:月次振り返りを定着させた

毎月最終金曜日の30分間を「改善タイム」と位置づけ、KPI(一人あたり売上高、残業時間)の確認と改善提案の共有を行うようにしました。開始から6ヶ月後、一人あたり売上高は約1.5倍に向上。残業時間は月平均15時間削減されました。

この企業の成功要因は、大掛かりなシステム導入ではなく、「身の丈に合った改善を、正しい順序で、継続的に行った」ことにあります。

まとめ

中小企業の生産性向上は、大企業の事例をそのまま真似しても上手くいきません。限られたリソースのなかで、最大の効果を出すための「順序」が重要です。

  1. Phase 1(現状把握):業務の棚卸しとKPI設定で「どこが課題か」を明確にする
  2. Phase 2(クイックウィン):会議の削減、クラウドツール導入、紙のデジタル化で即効性のある改善を実施
  3. Phase 3(仕組み化):RPA、BPaaS、RPaaSを活用して本格的な効率化を推進
  4. Phase 4(改善文化):月次振り返りと提案制度で、改善を日常の習慣にする

生産性向上の方法15選「生産性」完全ガイドと合わせて活用していただければ、自社に合った具体的な打ち手が見つかるはずです。

株式会社Sei San SeiのRPaaS(AI採用代行)やBPaaS(業務自動化)は、中小企業の生産性向上に特化したサービスです。「何から始めればいいかわからない」という方も、まずはお気軽にお問い合わせください。

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