1on1ミーティングの進め方|部下の成長を引き出す質問テクニックと運用のコツ
「毎週1on1を入れてはいるけど、何を話せばいいかわからない」「部下が本音を言ってくれない」――こうした悩みを抱えるマネージャーは少なくありません。1on1ミーティングは、正しく運用すれば部下の成長を加速させ、組織のエンゲージメントを高める強力な仕組みです。しかし、やり方を間違えると「ただの雑談」や「進捗確認の場」になり、上司にとっても部下にとっても負担にしかなりません。
本記事では、1on1ミーティングの目的から具体的な進め方、すぐに使える質問例、よくある失敗パターンと回避策、そして組織に定着させるためのポイントまで、実践的に解説します。これから1on1を始める方も、すでに実施しているが手応えを感じていない方も、ぜひ参考にしてください。
1on1ミーティングとは何か――目的と効果を正しく理解する
1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で定期的に行う対話の場です。一般的な「業務報告ミーティング」とは異なり、部下の成長支援・キャリア開発・心理的安全性の構築を主な目的としています。
もともとシリコンバレーのIT企業で広まった手法ですが、近年は日本企業でも急速に導入が進んでいます。その背景には、従業員エンゲージメントの低下という深刻な課題があります。日本の従業員エンゲージメントは国際的に見ても低い水準にあるとされており、「上司と部下のコミュニケーション不足」が大きな要因のひとつと指摘されています。
1on1ミーティングが組織にもたらす効果は、大きく3つあります。
- 部下の成長促進:定期的な振り返りとフィードバックにより、部下が自分の課題に気づき、主体的に成長できるようになります
- 信頼関係の構築:「自分の話を聞いてくれる」という体験の積み重ねが、上司への信頼感と心理的安全性を育みます
- 早期の問題発見:業務上の悩みや人間関係のトラブルを早い段階でキャッチし、離職や大きな問題に発展する前に対処できます
つまり、1on1は「部下のための時間」であり、業績管理の場ではないという認識が出発点になります。この前提がずれていると、どれだけ頻度を増やしても効果は出ません。
効果的な1on1の進め方――頻度・時間・場所の最適解
1on1を始めるにあたって、まず決めるべきは頻度・時間・場所の3つです。これらを適切に設計することで、形骸化を防ぎ、持続的に運用できる仕組みが整います。
頻度:週1回30分がベストプラクティス
1on1の頻度は、週1回を基本としましょう。月1回では間隔が空きすぎて、話す内容を忘れたり、問題の発見が遅れたりします。逆に毎日行うのは、上司・部下ともに負担が大きくなりすぎます。
時間は30分を目安にしてください。15分では深い対話ができず、1時間では集中力が切れます。30分であれば、3つ程度のトピックについてじっくり話し合うことができます。慣れてきたら、状況に応じて15分に短縮したり、重要なテーマがあるときは45分に延長するなど、柔軟に調整しましょう。
場所:リラックスできる環境を選ぶ
1on1は、会議室やオープンスペースではなく、周囲の目を気にせず話せる場所で行うのが理想です。オフィスの個室が難しい場合は、カフェスペースやリモートでのビデオ通話も有効です。
大切なのは、部下が「ここなら本音を話せる」と感じられる環境をつくること。上司の席に呼びつけるのではなく、部下の希望を聞いて場所を決めるだけでも、対話の質は大きく変わります。
アジェンダ:部下が主導する仕組みをつくる
1on1のアジェンダ(話す内容)は、部下が事前に決めるのが原則です。上司が議題を設定すると、どうしても「業務進捗の報告会」になってしまいます。
具体的には、1on1の前日までに「今週話したいこと」を2〜3項目、共有シートやチャットで送ってもらう仕組みを整えましょう。最初は部下もアジェンダの立て方に戸惑うかもしれません。その場合は、以下のようなカテゴリを提示すると、話したいテーマが見つかりやすくなります。
- 今週うまくいったこと / うまくいかなかったこと
- 困っていること / 相談したいこと
- キャリアや今後の成長について
- チームや組織への提案・要望
すぐに使える1on1の質問例15選
1on1の質問は、オープンクエスチョン(はい/いいえで答えられない質問)を中心に構成します。以下、目的別に整理した質問例を紹介します。
業務の振り返りに使う質問
- 「今週、一番手応えを感じた仕事は何ですか?」――成功体験を言語化させることで、自信と学びを定着させます
- 「逆に、もっとうまくやれたなと思うことはありますか?」――失敗ではなく改善の視点で振り返らせます
- 「今、業務の中で一番時間がかかっているのはどの部分ですか?」――業務効率化のヒントやサポートの必要性が見えます
- 「もし自分がこのプロジェクトのリーダーだったら、何を変えますか?」――当事者意識と提案力を引き出します
成長・キャリアに関する質問
- 「半年後、どんなスキルを身につけていたいですか?」――中期的な成長目標を一緒に考えるきっかけになります
- 「今の仕事の中で、もっと挑戦したいと思っている領域はありますか?」――モチベーションの源泉を把握できます
- 「最近、仕事以外で学んでいることはありますか?」――キャリアの幅を広げる興味関心を発見できます
- 「将来、どんな仕事をしている自分が理想ですか?」――長期的なキャリアビジョンを共有します
コンディション・人間関係を把握する質問
- 「最近、仕事の負荷は適切だと感じていますか?」――バーンアウトの兆候を早期にキャッチします
- 「チームの中で、もっとこうなるといいなと思うことはありますか?」――チームの課題を部下の視点で把握します
- 「私(上司)のサポートで、もっとこうしてほしいということはありますか?」――上司自身の改善点を率直にフィードバックしてもらいます
- 「仕事をしていて、ストレスに感じることは何ですか?」――心理的な負担を言語化させ、対処法を一緒に考えます
フィードバック・承認に使う質問
- 「先日の〇〇の対応、とても良かったと思います。自分ではどう感じていますか?」――具体的な行動を承認しつつ、自己認識を促します
- 「今期の目標に対して、今どのあたりにいると感じていますか?」――自己評価と上司の評価のギャップを把握します
- 「もし一つだけ、今の仕事で改善するとしたら何を選びますか?」――優先度の高い課題を自分で選ばせることで、主体性を引き出します
これらの質問は、毎回すべてを使う必要はありません。その日の部下の状態やアジェンダに合わせて、2〜3問をピックアップして使うのが効果的です。
上司が陥りがちな3つの失敗パターン
1on1を導入しても「効果が感じられない」という声は少なくありません。多くの場合、原因は以下の3つの失敗パターンに集約されます。
失敗1:「業務進捗の確認会」になっている
最も多い失敗パターンです。1on1が始まるなり「あの件、どうなった?」「今週の数字は?」と業務の進捗確認に終始してしまう上司がいます。
進捗確認は通常のチームミーティングやチャットで十分です。1on1では、「数字の裏にある部下の思考や感情」にフォーカスしてください。「結果はわかっている。それよりも、そのプロセスの中でどんなことを感じた?」と聞くだけで、対話の深さは格段に変わります。
失敗2:上司が8割話してしまう
1on1で上司が「アドバイス」「自分の経験談」「会社の方針の説明」を延々と話してしまうケースも、非常によくあります。部下は相槌を打つだけで、時間が終わります。
理想的な1on1の発言比率は、上司3:部下7です。上司の役割は「話すこと」ではなく「聴くこと」。部下が沈黙しても、すぐに口を挟まず、10秒待つことを意識してください。沈黙の後に出てくる言葉こそ、部下の本音であることが多いのです。
失敗3:やりっぱなしでフォローがない
1on1で「来週までに〇〇を調べておきます」「△△についてサポートしますね」と約束したのに、次の1on1で一切触れない。これでは部下の信頼は失われます。
1on1で出たアクションアイテムは、必ずメモに残し、次回の冒頭で進捗を確認してください。シンプルなことですが、この「フォローの積み重ね」が、1on1の信頼性を大きく左右します。上司が約束を守ることで、部下も1on1を「意味のある時間」として認識するようになります。
1on1を組織に定着させるためのポイント
1on1は、個人の努力だけでは長続きしません。組織としての仕組みづくりが不可欠です。以下の4つのポイントを押さえることで、1on1を持続的な文化として根づかせることができます。
経営層からのコミットメントを得る
1on1の導入は、トップダウンで推進するのが効果的です。経営層自身が1on1を実践し、その価値を発信することで、組織全体に「これは重要な取り組みだ」というメッセージが伝わります。現場マネージャーに任せきりにすると、「忙しいから後回し」になりがちです。
マネージャー向けのトレーニングを実施する
1on1の質は、上司の「聴く力」に大きく依存します。傾聴スキル、コーチング的な質問の仕方、フィードバックの伝え方など、マネージャー向けの研修やワークショップを定期的に実施しましょう。外部のコーチを招いてロールプレイを行うのも効果的です。
記録と振り返りの仕組みをつくる
1on1の内容を記録し、定期的に振り返る仕組みがあると、対話の質は着実に向上します。専用のツール(1on1管理ツール)を導入する方法もありますが、まずはGoogleスプレッドシートやNotionなど、すでに使い慣れたツールで十分です。「日付・話したトピック・アクションアイテム・次回持ち越し事項」の4項目を記録するだけで、1on1の一貫性が格段に高まります。
定期的に「1on1の1on1」を行う
マネージャー同士で1on1の運用について情報交換する場を設けましょう。「こんな質問が効果的だった」「こういう場面で困った」といったノウハウの共有は、組織全体の1on1の質を底上げします。四半期に1回程度、マネージャー向けの振り返りセッションを開催するのがお勧めです。
まとめ:1on1は「部下の時間」を守ることから始まる
1on1ミーティングは、正しく運用すれば、部下の成長を引き出し、チームの信頼関係を強化し、組織全体のエンゲージメントを高める強力な手法です。しかし、その効果は「やり方」次第で大きく変わります。
本記事のポイントを改めて整理します。
- 1on1は「部下のための時間」――業務進捗の確認会ではなく、成長支援の場として位置づける
- 週1回30分を基本に、部下がアジェンダを主導する仕組みをつくる
- オープンクエスチョンを活用し、部下の思考や感情を引き出す
- 上司は「聴く」に徹し、発言比率は上司3:部下7を意識する
- アクションアイテムを記録し、次回必ずフォローする
- 組織として仕組み化し、マネージャーの育成と振り返りの場を設ける
1on1の第一歩は、とてもシンプルです。まずは来週、部下に「30分だけ、あなたの話を聞く時間をつくりたい」と声をかけてみてください。その一言が、組織を変える対話の始まりになります。
組織づくりや人材マネジメントについてさらに深く知りたい方は、エンゲージメント経営の基本と実践方法や、人事評価制度の設計と運用のポイントもあわせてご覧ください。1on1を起点に、評価制度やエンゲージメント施策と連動させることで、組織の成長はさらに加速します。
株式会社Sei San Seiでは、中小企業の組織づくり・マネジメント改善を支援しています。「1on1を導入したいが、何から始めればよいかわからない」「マネージャーの育成を強化したい」といったお悩みがあれば、お気軽にご相談ください。