生産性 2026.02.27

働き方改革と生産性の関係|残業削減だけでは生産性は上がらない理由

働き方改革と生産性の関係|残業削減だけでは生産性は上がらない理由

2019年に施行された働き方改革関連法以降、多くの企業が「残業時間の削減」に取り組んできました。しかし、残業を減らしたにもかかわらず、「生産性が上がった実感がない」「むしろ現場が苦しくなった」という声が少なくありません。

働き方改革の本来の目的は、単に労働時間を短くすることではありません。限られた時間の中で同等以上の成果を出す——つまり「生産性を上げる」ことが本質です。残業を削減するだけで業務の仕組みを変えなければ、生産性は上がるどころか下がってしまう場合すらあります。

本記事では、働き方改革と「生産性」の関係を整理したうえで、残業削減だけでは生産性が上がらない理由と、本当に効果のある改革の進め方を5つのステップで解説します。中小企業の経営者・管理職の方にとって、形だけの改革から脱却するヒントになれば幸いです。

働き方改革の本来の目的とは

働き方改革関連法の趣旨を改めて確認しましょう。この法律が掲げる目的は、大きく分けて3つあります。

  • 長時間労働の是正:過労死や健康被害を防止するための時間外労働の上限規制
  • 多様な働き方の実現:正規・非正規間の格差是正、柔軟な勤務形態の推進
  • 生産性の向上:労働時間の短縮と並行して、付加価値の創出を促進する

注目すべきは3つ目です。働き方改革は「早く帰りましょう」という運動ではなく、「少ない労働時間で同等以上の成果を出す仕組みを作りましょう」という経営課題です。法律が求めているのは、残業時間の上限規制という「枠」であり、その枠の中でどう成果を出すかは各企業に委ねられています。

しかし現実には、多くの企業が「残業を減らすこと」そのものを目的にしてしまい、業務プロセスの見直しを後回しにしました。その結果、働き方改革が「掛け声倒れ」になっているケースが全国的に見られます。

「時間を減らす」と「成果を維持する」は別の話

ここが最も重要なポイントです。労働時間を減らしても、仕事の量や質が変わらなければ、社員一人ひとりにかかるプレッシャーは増す一方です。「定時で帰れ」と言われても、仕事が終わっていなければストレスがたまるだけです。

働き方改革を生産性向上につなげるには、まず「業務そのもの」を見直す必要があります。この順序を間違えると、改革は形骸化します。

残業削減だけでは生産性が上がらない4つの理由

残業時間を制限しただけで生産性が上がらないのは、構造的な問題があるからです。ここでは、多くの企業が陥る4つの落とし穴を具体的に見ていきます。

理由1:仕事量は同じで時間だけ減る矛盾

これが最も根本的な問題です。「残業を月45時間以内にしてください」と号令をかけても、受注量、顧客対応件数、社内会議の数、作成すべき報告書の量は何も変わっていない——こういう状況は珍しくありません。

入ってくる仕事の量が変わらないのに、使える時間だけが減る。その結果、何が起きるかというと、「急いでやる」「品質を下げる」「やるべきことを先送りする」のいずれかです。いずれも生産性の向上とは正反対の方向です。

この矛盾を解消するには、仕事量そのものにメスを入れる必要があります。つまり、「やらなくていい仕事をやめる」という判断です。後述するStep2で詳しく解説します。

理由2:持ち帰り残業・サービス残業の増加リスク

残業の上限規制が厳しくなった結果、「会社では残業できないから自宅でやる」という持ち帰り残業が増えたという指摘があります。特にテレワークが普及した環境では、勤務時間と私的時間の境界が曖昧になりやすく、実質的な労働時間は減っていないケースがあります。

また、「残業を申請しづらい雰囲気」が醸成されると、サービス残業が常態化するリスクもあります。これは労務管理上の問題であると同時に、社員のモチベーションを根底から損なう深刻な問題です。表面上は残業時間が減っていても、実態が伴っていなければ改革とは呼べません。

理由3:管理職への負荷集中

一般社員の残業を削減した結果、しわ寄せが管理職に集中するというパターンも頻繁に見られます。部下が終わらせられなかった仕事を管理職が引き取る、報告書の最終チェックを管理職が深夜に行う——こうした状況では、組織全体の生産性は向上しません。

特に中小企業では、管理職自身がプレイヤーとしての役割も担っていることが多いため、マネジメント業務と実務の両方で長時間労働に陥りやすい構造があります。管理職の労働環境を改善しなければ、働き方改革は「一般社員だけの話」で終わってしまいます。

理由4:現場の不満と形骸化

「定時退社を強制されるが、仕事の進め方は何も変わらない」「業務量の見直しもなく、ただ早く帰れと言われるだけ」——現場からこうした不満が出始めたら、働き方改革は形骸化の兆候です。

経営層が掲げる理想と、現場の実態にギャップがあるとき、社員は「会社は本気で改革する気がない」と感じます。一度そう認識されると、その後どんな施策を打っても冷めた目で見られるようになります。働き方改革を成功させるには、現場の声を聞き、具体的な業務改善と一体で進めることが不可欠です。

生産性が上がる働き方改革の進め方|5つのステップ

では、形だけの残業削減ではなく、本当に生産性を向上させる働き方改革はどう進めればよいのでしょうか。ここでは、中小企業でも実践できる5つのステップを順に解説します。

Step1:業務の棚卸し(本当に必要な仕事の選別)

改革の第一歩は、現在行っている業務を全て洗い出し、一つひとつの「必要性」を評価することです。多くの企業では、「昔からやっているから」「上司が求めるから」という理由だけで続けている業務が少なくありません。

業務の棚卸しでは、以下の基準で分類すると効果的です。

  • 売上・利益に直結する業務:最優先で時間を確保する
  • 法的・制度的に必須の業務:効率化の余地を探る
  • 社内向けの管理業務:大幅な簡略化または廃止を検討
  • 慣習的に続けている業務:やめた場合の影響を検証する

この棚卸しを行うだけで、「実は全体の2〜3割の業務はやめても問題ない」という発見が得られることが多いとされています。業務の棚卸しは、生産性向上の方法15選でも基本施策として紹介しています。

Step2:「やめる」判断(不要な会議、過剰な報告書)

棚卸しの結果を受けて、次は「やめる」という判断を実行に移す段階です。これが最も難しく、かつ最も効果が大きいステップです。

特に削減効果が高いのは以下の3つです。

  • 会議の削減:「情報共有」だけが目的の会議はメールやチャットに置き換える。出席者を本当に必要な人だけに絞る。会議時間は原則30分に設定する
  • 報告書の簡略化:体裁を整えるだけの報告書は廃止し、箇条書きや共有ドキュメントでの報告に切り替える
  • 承認プロセスの短縮:複数段階の承認フローを見直し、金額や影響度に応じた権限委譲を行う

「やめる」判断には、経営層のコミットメントが不可欠です。現場だけで「この会議をやめたい」と言っても実現しにくいため、トップダウンで「やめていい」という許可を出すことが重要です。

Step3:業務プロセスの効率化(自動化、標準化)

残すと決めた業務については、そのプロセスを効率化します。効率化の方向性は大きく2つあります。

自動化:繰り返し行う定型作業をツールやシステムに任せる方法です。データの転記、集計、帳票作成などは、RPAや業務自動化ツールで大幅に時間を短縮できます。自動化は「人間がやる必要のない作業」を見極めることから始まります。

標準化:属人化している業務を、誰でも同じ品質でこなせるようにマニュアル化・テンプレート化する方法です。「あの人にしかできない」業務は、その人が休むと止まってしまうリスクがあるだけでなく、引き継ぎのたびに時間がかかる非効率の原因にもなります。

自動化と標準化を組み合わせることで、業務全体の所要時間を3割から5割程度削減できるケースは珍しくありません。このステップが、残業削減と生産性向上を両立させる具体的な手段です。

Step4:柔軟な働き方の導入(テレワーク、フレックス)

業務プロセスの効率化と並行して、働く時間と場所の柔軟性を高めることも生産性向上に寄与します。テレワークやフレックスタイム制度は、単なる「福利厚生」ではなく、生産性を高めるための経営戦略です。

テレワークについては、テレワークの生産性を上げる方法で詳しく解説していますが、ポイントは以下の通りです。

  • 通勤時間の削減:往復1〜2時間の通勤がなくなることで、その時間を業務や自己研鑽に充てられる
  • 集中できる環境:オフィスでの割り込みや雑談がなくなり、集中力を要する作業の効率が上がる
  • フレックスとの組み合わせ:個人の生産性が高い時間帯に仕事ができる(朝型・夜型に対応)

ただし、テレワークやフレックスの導入だけでは不十分です。成果を適切に評価する仕組みがなければ、「見えないところでサボっている」という疑念や、逆に「常に監視されている」という不信感が生まれ、かえって生産性が落ちることもあります。

Step5:成果主義への評価制度改革

働き方改革を持続的に機能させるためには、評価制度の見直しが欠かせません。「長時間働く人が頑張っている」という評価基準を改め、「限られた時間で成果を出す人が評価される」仕組みに変える必要があります。

具体的な評価の転換ポイントは以下の通りです。

  • 「残業時間」ではなく「時間当たりの成果」で評価する:同じ成果を短時間で出せる社員を高く評価する
  • プロセスよりも結果を重視する:「何時間デスクに座っていたか」ではなく「何を達成したか」を見る
  • 業務改善の取り組みを評価対象に含める:「この業務をやめた」「この作業を自動化した」といった効率化の成果を正当に評価する

評価制度を変えることで、社員一人ひとりが「どうすれば少ない時間で成果を出せるか」を主体的に考えるようになります。これが、組織全体の生産性を底上げする原動力になります。

時間当たり生産性を測る

働き方改革の効果を正しく把握するためには、「時間当たり生産性」という指標が欠かせません。単に売上や利益だけを見ていると、残業を増やして数字を作ることが「正解」になってしまいます。

労働生産性とはの記事で詳しく解説していますが、時間当たり労働生産性の基本的な考え方は以下の通りです。

時間当たり労働生産性 = 付加価値額(売上総利益など) / 総労働時間

この指標が重要なのは、「残業を減らした結果、生産性がどう変化したか」を客観的に評価できるからです。

  • 残業を減らしても時間当たり生産性が同じまたは上がった:改革が正しく機能している証拠
  • 残業を減らした結果、時間当たり生産性も下がった:業務プロセスの見直しが不十分で、単に成果が減っただけの可能性がある
  • 残業は変わらないが時間当たり生産性が下がった:新たな非効率が発生している可能性がある

月次で時間当たり生産性を計測し、働き方改革の施策との因果関係を分析することで、「何が効いて、何が効いていないか」を数字で判断できるようになります。感覚ではなくデータに基づいた改善が、持続的な生産性向上には不可欠です。

日本の長時間労働と生産性の逆説

日本は先進国の中でも労働時間が長いにもかかわらず、労働生産性の国際ランキングでは下位に位置しています。日本の生産性が低い原因の記事で詳しく分析していますが、ここではこの「長く働いているのに生産性が低い」という逆説について考えてみましょう。

長く働くほど生産性は下がる

人間の集中力には限界があります。一般的に、集中力が高い状態を維持できるのは1日のうち数時間程度とされています。長時間労働が常態化すると、疲労の蓄積によって判断力や作業精度が低下し、かえってミスや手戻りが増えます。

「8時間で終わるはずの仕事が、疲労で集中できないために10時間かかった」という経験は、多くのビジネスパーソンに心当たりがあるのではないでしょうか。これは、長時間労働そのものが生産性を下げる要因になっている典型例です。

「残業=努力」という文化的問題

日本の職場には、「遅くまで残っている人は頑張っている」「上司より先に帰りにくい」という文化が根強く残っています。この「残業=努力」という等式は、「短時間で成果を出す」ことへのインセンティブを弱める方向に作用します。

効率的に仕事を終わらせて定時に帰る社員よりも、深夜まで残業している社員の方が「頑張っている」と評価される職場では、誰も効率化に取り組もうとしません。この文化を変えることが、働き方改革の本丸と言えます。

生産性先進国に学ぶ

労働生産性の高い国々に共通する傾向として、以下の特徴が指摘されています。

  • 労働時間の短さ:年間労働時間が相対的に短い国ほど、時間当たり生産性が高い傾向がある
  • 成果主義の徹底:「何時間働いたか」ではなく「何を達成したか」で評価する文化が浸透している
  • デジタル化の進展:業務のデジタル化・自動化が進んでおり、人間は付加価値の高い業務に集中している
  • 有給休暇の取得率の高さ:適切な休息を取ることで、労働時間中のパフォーマンスを最大化している

日本の働き方改革は、こうした先進国の特徴に近づくための取り組みとも言えます。重要なのは、「時間を減らす」ことではなく「時間の使い方を変える」という発想の転換です。

中小企業が働き方改革を成功させるポイント

大企業と比べてリソースの限られる中小企業が、働き方改革と生産性向上を両立させるために意識すべきポイントを3つ紹介します。

経営者自身が率先して変わる

中小企業では、経営者の姿勢が組織文化に直結します。経営者自身が定時退社を実践し、「早く帰ることは悪いことではない」というメッセージを行動で示すことが最も効果的です。口だけで「早く帰れ」と言いながら自分は深夜まで働いている経営者の下では、改革は進みません。

一度に全てを変えようとしない

働き方改革も、先述した5つのステップを一度に全て実行する必要はありません。まずは1つの部署、1つの業務から着手し、成功事例を作ってから横展開する方が、確実に成果が出ます。小さな成功を積み重ねることで、社員の中に「改革は実際に効果がある」という確信が生まれ、組織全体の変革への推進力になります。

業務自動化を味方につける

中小企業こそ、業務自動化のメリットは大きいと言えます。人手が限られる中で、定型作業に時間を取られるのは大きな損失です。RPAやクラウドツール、業務自動化サービスを活用して、人がやらなくてもいい作業を徹底的に減らすことで、限られた人員で高い生産性を実現できます。

まとめ

働き方改革と生産性向上は、本来切り離せない関係にあります。しかし、残業削減だけに注力した結果、「時間は減ったが成果も減った」という状態に陥っている企業は少なくありません。

本記事のポイントを振り返ります。

  1. 働き方改革の本来の目的は、「少ない労働時間で同等以上の成果を出す」こと——すなわち生産性の向上
  2. 残業削減だけでは生産性は上がらない:仕事量の見直し、持ち帰り残業の防止、管理職への配慮、現場の納得が不可欠
  3. 5ステップで改革を進める:業務の棚卸し→やめる判断→効率化→柔軟な働き方→評価制度改革
  4. 時間当たり生産性を測定し、改革の効果を数字で検証する
  5. 日本の長時間労働と低生産性の逆説を理解し、「時間の使い方を変える」という発想に転換する

働き方改革は、正しく進めれば生産性改革になります。「残業を減らしなさい」ではなく、「どうすれば短い時間で同じ成果を出せるか」を全社で考える。その問いに向き合うことが、真の働き方改革のスタートラインです。

株式会社Sei San Seiでは、BPaaS(業務自動化)を通じて働き方改革と生産性向上の両立をご支援しています。「残業は減らしたいが、生産性も落としたくない」とお考えの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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