人事・採用 2026.04.02

2026年4月施行の人事労務法改正まとめ|中小企業が今すぐ対応すべきポイントと実務チェックリスト

2026年4月施行の人事労務法改正まとめ|中小企業が今すぐ対応すべきポイントと実務チェックリスト

2026年4月、人事労務に関わる複数の法改正が一斉に施行されました。女性活躍推進法の対象拡大、子ども・子育て支援金制度の開始、高年齢労働者の安全衛生対策の努力義務化など、企業の実務に直結する改正が目白押しです。

「うちは中小企業だから関係ない」と思っている方こそ要注意です。今回の改正では、従業員101人以上の企業にまで対象が拡大された制度もあり、これまで義務の対象外だった中小企業も新たに対応を求められます。対応漏れは行政指導や企業名の公表といったペナルティだけでなく、採用活動における企業イメージの毀損にもつながりかねません。

本記事では、2026年4月に施行された主要な法改正を網羅的に整理し、それぞれの改正内容、対象企業、そして中小企業の人事担当者が今すぐ着手すべき具体的なアクションをわかりやすく解説します。

2026年4月施行の法改正一覧

まずは今回の主要な法改正を一覧で整理します。それぞれの詳細は後述しますが、まずは全体像を把握しましょう。

法律名 対象企業 義務内容 罰則等
女性活躍推進法 従業員101人以上 男女間賃金差異・女性管理職比率の公表 行政指導・企業名公表
子ども・子育て支援金制度 全企業(健康保険適用事業所) 保険料率に0.23%上乗せ(労使折半) 未対応の場合は保険料算定誤り
労働安全衛生法関連 60歳以上の労働者がいる全事業所 高年齢労働者の安全衛生対策(努力義務) 努力義務(罰則なし、ただし行政指導あり)

これらの改正は、いずれも2026年4月1日付で施行されています。特に女性活躍推進法の改正は対象企業が一気に拡大した点で影響が大きく、多くの中小企業が新たに義務を負うことになりました。以下、それぞれの改正内容を詳しく見ていきます。

女性活躍推進法改正 -- 賃金差異と女性管理職比率の公表義務化

今回の法改正で最もインパクトが大きいのが、女性活躍推進法の改正です。これまで従業員301人以上の企業に限られていた「男女間賃金差異」の公表義務が、101人以上の企業にまで拡大されました。さらに、「女性管理職比率」の公表も新たに義務化されています(出典: ヒューマンテック「2026年4月施行 主な法改正事項」)。

何が変わったか -- 101人以上企業への対象拡大

改正前は、男女間賃金差異の公表義務は従業員301人以上の大企業のみが対象でした。しかし今回の改正で、従業員101人以上300人以下の企業にも同様の義務が課されることになりました。

日本には従業員101人以上300人以下の企業が数万社存在します。これまで「うちは対象外」だった企業の多くが、一夜にして公表義務を負うことになったのです。「知らなかった」では済まされません。厚生労働省は未対応企業に対して行政指導を行い、改善が見られない場合は企業名を公表することができます。

公表すべき項目と計算方法

公表が義務付けられた項目は、主に以下の2つです。

  1. 男女間賃金差異: 男性の平均年間賃金を100とした場合の女性の平均年間賃金の割合。全労働者、正規雇用、非正規雇用の3区分で算出する必要があります。
  2. 女性管理職比率: 管理職全体に占める女性の割合。ここでいう「管理職」とは、課長級以上の役職者を指します。

計算方法のポイントは、パート・アルバイトを含む非正規雇用も対象に含める必要がある点です。正規雇用だけで計算すると実態と乖離した数値が出てしまうため、雇用形態別にきちんと分けて算出しなければなりません。

公表先は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」が基本です。自社のコーポレートサイトでの公表も認められていますが、データベースへの登録は必須となっています。

対応チェックリスト

人事担当者がすぐに着手すべきアクションを、チェックリスト形式でまとめます。

  • ステップ1: データ集計 -- 直近の事業年度における男女別・雇用形態別の賃金データ(基本給、賞与、各種手当を含む総額)を集計する
  • ステップ2: 差異の算出 -- 全労働者、正規雇用労働者、非正規雇用労働者の3区分で男女間賃金差異を計算する
  • ステップ3: 管理職比率の算出 -- 課長級以上の役職者における女性の割合を算出する
  • ステップ4: 公表場所の決定 -- 「女性の活躍推進企業データベース」への登録手続きを進める
  • ステップ5: 期限の確認 -- 直近の事業年度終了後、おおむね3ヶ月以内の公表が求められる

特に注意すべきは、賃金データの定義です。基本給だけでなく、時間外手当、通勤手当を除く各種手当、賞与を含めた「総賃金」で計算する必要があります。給与システムからのデータ抽出方法を事前に確認しておきましょう。

子ども・子育て支援金制度 -- 保険料の変更と実務対応

2026年4月から、健康保険料に新たな上乗せが始まりました。「子ども・子育て支援金」制度の開始により、すべての健康保険適用事業所が影響を受けます(出典: IEC「2026年『人事・労務』の法改正一覧」)。

制度の概要 -- 0.23%の上乗せ、労使折半

子ども・子育て支援金制度は、少子化対策の財源を確保するために創設された制度です。具体的には、健康保険料率に0.23%が上乗せされます。この負担は事業主と労働者で折半するため、それぞれ0.115%ずつの負担増となります。

月収30万円の従業員を例にとると、従業員側の負担増は月額約345円、事業主側も同額の約345円です。一人あたりの金額は大きくありませんが、従業員が100人いれば事業主負担だけで月額約34,500円、年間で約41万円の追加コストとなります。中小企業にとっては無視できない金額です。

給与計算システムへの影響

実務面で最も重要なのは、給与計算システムの保険料率を速やかに更新することです。主要な給与計算ソフト(弥生給与、freee人事労務、マネーフォワードクラウド給与など)は、保険料率の自動更新機能を備えていますが、更新タイミングの確認は必須です。

特に注意すべきケースは以下の通りです。

  • 自社開発の給与システムを使用している場合: 保険料率テーブルを手動で更新する必要がある
  • Excelで給与計算を行っている場合: 計算式の保険料率を変更し、4月分の給与計算から反映させる
  • 社会保険労務士に委託している場合: 委託先が対応済みか確認する

4月分の給与から新しい保険料率が適用されるため、遅くとも4月の給与計算日までにシステム更新を完了させる必要があります。更新が遅れると、遡及精算が必要になり、従業員への追加控除という混乱が生じます。

社員への説明と周知

保険料率の変更は、従業員の手取り額に直接影響します。金額はわずかとはいえ、「なぜ手取りが減ったのか」という問い合わせが想定されます。事前に以下の情報を社内に周知しておくことをお勧めします。

  • 子ども・子育て支援金制度が4月から開始されたこと
  • 健康保険料に0.23%(労使折半)が上乗せされること
  • 具体的な手取りへの影響額(月収帯別の目安を提示するとわかりやすい)
  • この制度は少子化対策の財源確保が目的であること

社内ポータルやメール、あるいは給与明細に同封する説明文書など、自社に合った方法で周知しましょう。従業員が「よくわからないまま手取りが減った」と感じることが、最も避けるべき事態です。

高齢者の安全衛生対策 -- 60歳以上の労働災害防止

2026年4月から、60歳以上の労働者に対する安全衛生対策が事業者の努力義務となりました。高年齢労働者の労働災害が増加していることを受けた改正で、職場環境の改善や作業負荷の軽減が求められます(出典: エン・ジャパン「人事が知るべき法改正[2026年・2027年]」)。

努力義務の内容

今回の改正で事業者に求められるのは、以下のような取り組みです。

  • 職場環境の改善: 高齢者が安全に働けるよう、設備や作業環境を見直す
  • 作業負荷の軽減: 重量物の取り扱い、高所作業など身体的負荷の高い業務について、高齢者の体力を考慮した配慮を行う
  • 健康管理の強化: 定期健康診断の結果を踏まえた就業上の配慮を行う
  • 安全衛生教育の実施: 加齢に伴う身体機能の変化に関する教育を行う

「努力義務」とは、法律上の義務ではあるものの罰則がないものを指します。しかし、努力義務を怠った結果として労働災害が発生した場合、安全配慮義務違反として損害賠償責任を問われるリスクがあります。「罰則がないから対応しなくてよい」という判断は極めて危険です。

具体的な職場改善策

厚生労働省が公表している「エイジフレンドリーガイドライン」を参考に、具体的な改善策を紹介します。

  • 照明の改善: 作業場所の照度を上げる(加齢により暗所での視力が低下するため)。特に階段、通路、機械操作部周辺は300ルクス以上を目安にする
  • 作業台の高さ調整: 腰への負担を軽減するため、作業台の高さを調整可能にする。立ち作業の場合は肘の高さを基準にする
  • 休憩時間の配慮: 連続作業時間を短縮し、こまめな休憩を取れる体制にする。夏場は熱中症予防のため特に配慮が必要
  • 転倒防止対策: 床面の段差解消、滑り止めの設置、手すりの取り付け。高齢者の労災で最も多いのは転倒事故
  • 表示の見やすさ: 警告表示や操作パネルの文字サイズを大きくする。色のコントラストを高めて視認性を向上させる

これらの改善は、高齢者だけでなくすべての従業員にとって安全で働きやすい職場づくりにつながります。ユニバーサルデザインの観点から、職場全体の安全性向上として取り組む姿勢が重要です。

高齢者雇用が増える背景 -- 人手不足と就業率の上昇

なぜ今、高齢者の安全衛生対策が法改正の対象になったのでしょうか。その背景には、日本の深刻な人手不足と高齢者の就業率上昇があります。

総務省の労働力調査によれば、65歳以上の就業率は年々上昇を続けています。2025年時点で65歳以上の就業者数は約900万人を超え、労働力人口に占める割合も増加しています。高年齢者雇用安定法により65歳までの雇用確保が義務化され、70歳までの就業機会確保が努力義務となっている現在、60歳以上の労働者は「例外的な存在」ではなく「職場の主力の一角」になりつつあります。

一方で、60歳以上の労働災害発生率は全年齢平均の約2倍とされています。転倒、墜落・転落、腰痛など、加齢に伴う身体機能の低下が原因となる労災が増えており、企業として安全衛生対策を講じることは、人材確保と事業継続の両面から不可欠になっています。

中小企業が今すぐやるべき5つのアクション

ここまで個別の法改正を見てきましたが、実際に「何から手をつけるべきか」を整理します。以下の5つのアクションを、優先度の高い順に実行していきましょう。

1. 自社の従業員数を正確に把握する

女性活躍推進法の対象は「常時雇用する労働者が101人以上」の企業です。ここでいう「常時雇用する労働者」には、正社員だけでなく、1年以上雇用されている(または雇用が見込まれる)パート・アルバイト・契約社員も含まれます。「正社員は80人だから対象外」と思っていても、非正規雇用を含めると101人を超えるケースは少なくありません。まず正確な人数を確認しましょう。

2. 男女別の賃金データを集計する

賃金差異の公表に向けて、直近の事業年度における男女別・雇用形態別の賃金総額と人員数を集計します。基本給、各種手当(通勤手当を除く)、賞与を含めた総額で算出する必要があります。給与システムからデータを抽出し、Excelなどで集計表を作成するのが実務的です。

3. 給与計算システムの支援金率を更新する

子ども・子育て支援金制度の開始に伴い、健康保険料率が変更されています。使用している給与計算ソフトの料率テーブルが更新されているか確認し、4月分の給与計算に正しく反映されていることを検証しましょう。手計算やExcelの場合は、計算式の修正を忘れずに行います。

4. 60歳以上の社員の安全衛生リスクを洗い出す

自社に60歳以上の従業員がいる場合、その方々が従事している業務のリスクアセスメントを行います。転倒リスクのある場所、重量物を扱う作業、高温環境での業務など、高齢者に特にリスクの高い業務を特定し、改善計画を立てましょう。

5. 就業規則・社内規程を見直す

法改正に伴い、就業規則や社内規程の見直しが必要になる場合があります。特に、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画の策定・届出が新たに義務付けられた企業は、計画の策定と労働局への届出を速やかに行いましょう。また、高齢者の安全衛生に関する社内ルールの整備も、この機会に進めておくことを推奨します。

まとめ

2026年4月の法改正は、人事労務の実務に大きな影響を与えるものばかりです。特に女性活躍推進法の対象拡大は、多くの中小企業にとって初めて直面する義務であり、データ集計や公表体制の構築に一定の時間と工数がかかります。

法改正への対応は、後回しにするほどリスクが大きくなります。行政指導や企業名公表といった直接的なペナルティだけでなく、求職者から「法令を遵守していない企業」と見なされることは、採用活動にも深刻な悪影響を及ぼします。逆に、法改正に迅速に対応し、情報を積極的に開示する企業は、求職者や取引先からの信頼を獲得できます。

「対応が必要なのはわかったが、社内にリソースがない」という中小企業も多いでしょう。株式会社Sei San Seiでは、RPaaS(AI採用代行)を通じて、法改正に対応した採用制度の見直しや人事データの整備を支援しています。また、MINORI Learning(研修サービス)では、管理職向けの法改正対応研修や、女性活躍推進に向けたマネジメント研修も実施可能です。法改正を「負担」ではなく「組織を強くする機会」に変えるために、ぜひお気軽にご相談ください。

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