是正処置の進め方|製造業の再発防止と予防処置
「同じ不良が何度も再発する」「クレームが起きるたびに対処はするが、なかなか減らない」——製造業の品質管理で、こうした悩みを抱える現場は少なくありません。その多くは、目の前の不具合を直す応急処置で終わってしまい、原因に手を打つ是正処置まで踏み込めていないことが原因です。
本記事では、中小製造業の品質担当者・現場リーダーに向けて、是正処置の進め方を6つのステップで解説します。修正(応急処置)との違い、なぜなぜ分析による根本原因の特定、是正処置報告書の書き方、有効性の確認、そしてISO 9001における予防処置の位置づけまで、再発を本当に止めるための実践ポイントをまとめます。
是正処置とは——再発を防ぐための処置
是正処置とは、不適合(要求事項を満たさない状態)の原因を取り除き、同じ問題が再び起こらないようにする処置のことです。ISO 9001でも、不適合が発生したときには、その不適合に対処したうえで原因を分析し、再発防止のための処置を実施・評価することが求められています。
ここで重要なのは、是正処置が「不良品を直すこと」ではなく、「なぜその不良が生まれたのかという原因に手を打つこと」だという点です。製造現場では、不良が出れば手直しや選別をして出荷を止めます。これは確かに必要な対応ですが、それだけでは原因が残ったままなので、しばらくすると同じ不良がまた発生してしまいます。是正処置は、この「再発のループ」を断ち切るための取り組みです。
是正処置・修正・予防処置の違いを整理する
是正処置を正しく進めるには、混同されやすい3つの言葉の違いをはっきりさせておく必要があります。
- 修正(応急処置):発生した不適合そのものを取り除く処置。不良品の手直し、選別、出荷停止など。被害の拡大を止めるための「その場の対応」。
- 是正処置:不適合の原因を取り除き、再発を防ぐ処置。原因分析を伴い、仕組みや手順を変えるところまで踏み込む。
- 予防処置:まだ起きていない不適合を、未然に防ぐ処置。起こりうるリスクを想定して先手を打つ。
たとえば「寸法不良の製品が見つかった」とき、不良品を選別して取り除くのが修正、なぜ寸法不良が発生したのかを調べて測定手順や治具を見直すのが是正処置です。修正だけで満足してしまうと、原因が残り再発します。一方で、似た工程の別ラインでも同じ不良が起こりうると考えて先に手を打てば、それは予防処置にあたります。
ISO 9001における予防処置の位置づけ
かつてのISO 9001には「予防処置」という独立した要求事項がありました。しかし2015年の改訂以降は、予防処置という項目はなくなり、「リスク及び機会への取組み」としてマネジメントシステム全体に組み込まれたとされています。つまり、問題が起きてから対処するのではなく、起こりうるリスクをあらかじめ想定して計画に織り込む——という予防的な発想が、規格全体を貫く考え方になったということです。
そのため現在のISO 9001では、不適合が発生したときの是正処置が明確な要求事項として残り、予防的な取り組みはリスクに基づく考え方として日常のプロセスに溶け込んでいます。「予防処置という項目がなくなった=予防しなくてよい」ではない点に注意しましょう。
是正処置の進め方——6つのステップ
ここからは、不適合が発生してから再発を防ぐまでの是正処置を、6つのステップで具体的に見ていきます。
ステップ1:不適合の内容を正確に記録する
まず、何が起きたのかを事実ベースで正確に記録します。いつ・どの工程・どの製品で・どのような不適合が・どれだけの数量で発生したのか。誰がどうやって発見したのかも残します。ここで事実が曖昧だと、後の原因分析がぶれてしまいます。推測や責任論を交えず、起きた事実だけを書くのがポイントです。
ステップ2:応急処置(修正)で被害を止める
次に、被害の拡大を止める応急処置を行います。不良品の選別・隔離、出荷の一時停止、顧客への連絡など、その場で必要な対応を実施します。これは是正処置そのものではありませんが、原因分析に時間をかける間に被害が広がらないようにする、欠かせない初動です。応急処置の内容も必ず記録に残します。
ステップ3:なぜなぜ分析で根本原因を特定する
是正処置の核心が、この根本原因の特定です。代表的な手法がなぜなぜ分析で、「なぜ起きたのか」を繰り返し問いながら原因を深掘りしていきます。ここで重要なのは、個人のミスで止めないこと。「確認を忘れた」で終わらせず、「なぜ確認が抜けてしまう手順だったのか」「なぜチェックの仕組みがなかったのか」と、仕組み・手順の側に原因を求めると、再発を防げる対策にたどり着きます。原因を1つに絞り込めない場合は、要因を洗い出して切り分けていきます。
ステップ4:是正処置を立案し実行する
特定した根本原因に対して、具体的な是正処置を立案・実行します。手順書の改訂、チェック工程の追加、治具・設備の改善、教育の実施などが典型です。このとき、「いつまでに・誰が・何をするか」を明確にすることが大切です。担当と期限が曖昧だと、対策が実行されないまま立ち消えになります。対策が現場の負担を増やしすぎないか、現実に運用できるかも確認しましょう。
ステップ5:是正処置の有効性を確認する
対策を打って終わりにせず、その是正処置が本当に効いているかを確認します。一定期間が経った後に、同じ不適合が再発していないか、対策が現場で守られているかをチェックします。もし再発していれば、原因分析が不十分だった可能性が高いため、ステップ3に戻って分析をやり直します。この有効性の確認こそが、是正処置を「やりっぱなし」にしないための要です。
ステップ6:水平展開して標準化する
最後に、有効だった対策を他の工程・製品・ラインにも広げる「水平展開」を行います。同じような不適合が起こりうる箇所に先回りで対策を入れることで、一件の是正処置が組織全体の品質向上につながります。あわせて、改訂した手順書やルールを標準として定着させ、誰が担当しても同じやり方ができる状態にします。ここまでやって、はじめて是正処置が完了します。
是正処置報告書のまとめ方
是正処置の一連の流れは、是正処置報告書として記録に残します。盛り込む項目の例は次のとおりです。
- 不適合の内容と発見経緯:いつ・どこで・何が・どれだけ発生したか
- 応急処置(修正)の内容:被害を止めるために実施した対応
- 根本原因の分析結果:なぜなぜ分析などで特定した原因
- 是正処置の内容:実施した対策、担当者、期限
- 有効性の確認:確認の方法・時期・結果
- 水平展開・標準化:他工程への展開や手順書改訂の有無
報告書は、第三者が読んでも経緯と対策が理解できるように書くのが基本です。これらの記録は内部監査やISO審査でも確認され、組織の改善履歴そのものになります。蓄積された是正処置の記録は、似た不適合が起きたときの貴重な参考資料にもなります。
製造業が是正処置でつまずきやすいポイント
是正処置の運用でよくある失敗を、あらかじめ知っておきましょう。
- 修正で終わってしまう:手直し・選別だけで満足し、原因に手を打たないため再発する
- 原因を個人のせいにする:「担当者の不注意」で止め、仕組みの改善に至らない
- 有効性を確認しない:対策を打ったきりで、効いているかを見届けない
- 報告書が形骸化する:書式を埋めること自体が目的になり、中身が薄くなる
- 記録が分散して探せない:紙やExcelに散らばり、過去の是正事例を活かせない
これらの多くは、「原因を仕組みで捉える姿勢」と「記録を活かせる仕組み」があれば避けられます。とくに、過去の是正処置を検索・参照できる状態にしておくと、似た不適合への対応が速くなり、組織全体の品質ナレッジが蓄積されていきます。
まとめ:是正処置は「原因に手を打つ」から効く
是正処置は、製造業が同じ不良・クレームを繰り返さないための要となる取り組みです。要点を整理します。
- 是正処置は不適合の「原因」を取り除き、再発を防ぐ処置(修正=応急処置とは別物)
- 2015年版以降のISO 9001では、予防はリスクに基づく考え方として全体に組み込まれた
- 進め方は「記録→応急処置→なぜなぜ分析→是正処置→有効性確認→水平展開」の6ステップ
- 原因を個人ではなく仕組みに求めることが、再発を防ぐ鍵
- 記録の蓄積と活用が、組織の品質ナレッジになる
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