人事・採用 2026.07.17

人事のAI活用は「9割時代」へ——経団連報告書に見る活用領域と、中小企業が押さえるべき3つの提言

人事部門のAI活用と経団連報告書のポイント

「人事の仕事にAIを使う」——数年前まで先進企業の取り組みだったこのテーマが、いよいよ標準になりつつあります。経団連(日本経済団体連合会)が2026年4月に公表した「HR部門におけるAI等の活用に関する報告書」では、調査対象企業の9割以上が人事関連業務で何らかのAIを導入しているという結果が示されました。

もっとも、中身を見ると「全社的に使いこなしている企業」と「一部で試している企業」の差は大きく、人事評価や配置といったセンシティブな領域はまだ手探りです。本記事では、経団連報告書のポイントを整理したうえで、人事担当者が少ない中小企業がこの流れにどう向き合うべきかを解説します。

経団連報告書の概要:9割以上の企業が人事でAIを活用

報告書は、経団連の会員企業75社への調査とヒアリングをもとにまとめられたものです。AI活用状況の内訳は次のとおりでした。

  • 複数の業務プロセスで広く活用:46%
  • 一部部署・一部業務に限定して活用:24%
  • 生成AIツールの利用を許可:23%

合計すると9割超がAIを取り入れている計算ですが、「複数業務で広く活用」は半数弱にとどまります。つまり現在地は、導入は当たり前になったが、使いこなしはこれからという段階です。なお、調査対象は大企業中心である点には注意が必要です。中小企業を含む調査では人事・採用へのAI活用はまだ3割前後という報告もあり、企業規模による格差がこの領域でも生まれ始めています。

活用が進む領域:採用が最多、評価・配置は慎重

報告書によると、AI活用の実績が最も多いのは採用領域(25社)でした。内訳では応募者のスクリーニング(15社)と面接サポート(13社)が中心です。次いで労務管理(22社)、エンゲージメント(21社)、人材育成(20社)と続きます。

一方、人材配置・人事評価は各13社と活用は限定的でした。この濃淡には合理性があります。採用や労務は「定型的な処理が多く、AIで効率化しやすい」領域である一方、評価・配置は従業員の処遇に直結するため、判断根拠の説明責任が重く、慎重にならざるを得ないからです。

採用の現場感覚とも一致します。AI時代の中途採用で取り上げたように、求める人材像そのものが変わるなかで、母集団形成・書類整理・日程調整といった前工程はAIに任せ、見極めと口説きに人の時間を使う分業が主流になりつつあります。

経団連の3つの提言:安全性・公平性・透明性

報告書は活用実態の紹介にとどまらず、企業が取るべき対応を3つの柱で提言しています。

提言1:安全性・公平性・透明性の確保

個人情報・プライバシーの保護とセキュリティ対策に加え、AIバイアスへの対策が明記されました。採用AIが学習データの偏りによって特定の属性を不利に扱うリスクは海外で実例があり、「AIが選んだから公平」とは言えません。AIの判断根拠を説明できる状態を保つことが求められます。

提言2:戦略的な推進体制の構築

現場任せのバラバラなツール導入ではなく、社内に「司令塔」機能を置くこと。具体的にはCHRO(最高人事責任者)とCAIO(最高AI責任者)の連携が挙げられています。中小企業に役職は不要ですが、「誰がルールを決め、誰が結果に責任を持つか」を一人に定めるという本質は同じです。

提言3:AIは「人間の意思決定のサポート機能」と位置づける

採用の合否や評価をAIに委ねるのではなく、最終判断は人が行う。この原則は、EUのAI規制など海外の法制度とも整合する国際標準の考え方です。

日本の出遅れ:アルゴリズム管理ツールの導入率は米国の半分以下

報告書で興味深いのは国際比較です。業務指示や労務管理にアルゴリズムを用いるツールの導入割合(管理職ベース)は、米国90%、フランス81%に対して日本は40%にとどまります。

裏を返せば、日本の人事業務にはまだ大きな効率化余地が残っているということです。人手不足が深刻化し、人事部門自体の人員も限られるなかで、「人事の生産性」を上げることは採用力・定着力の土台になります。海外との差は脅威であると同時に、これから取り組む企業にとっての伸びしろでもあります。

中小企業はどう動くべきか:定型業務から始める3ステップ

経団連報告書は大企業の実態がベースですが、そこから中小企業が取るべき動きは明確に読み取れます。

  • ステップ1:定型業務から着手する——求人票の作成、応募者への連絡文面、面接日程の調整、労務手続きの案内。処遇に関わらない業務なら、バイアスのリスクを避けながら今日から効率化できます
  • ステップ2:簡単なルールを3つ決める——個人情報をAIに入力してよい範囲、人が最終判断する場面、AI利用を候補者・従業員にどう説明するか。これだけで提言の骨子はカバーできます
  • ステップ3:効果を測って広げる——1件あたりの対応時間や応募者への返信スピードを記録し、効果が確認できた業務から隣へ広げます

人事担当者が1〜2名という中小企業では、そもそも社内に手が足りないことも多いはずです。その場合は、AIを組み込んだ採用代行を外部に任せることも現実的な選択肢になります。採用プロセス全体の設計は採用CX(候補者体験)の記事も参考にしてください。

まとめ:人事のAI活用は「やるか」ではなく「どうやるか」の段階へ

  • 経団連調査では9割以上の企業が人事関連業務でAIを導入。ただし「複数業務で広く活用」は46%
  • 活用が最も進むのは採用領域(スクリーニング・面接サポート)。評価・配置は慎重
  • 提言の柱は「安全性・公平性・透明性」「推進体制」「人間の意思決定のサポートという位置づけ」
  • アルゴリズム管理ツールの導入率は日本40%と米国90%に大差。伸びしろは大きい
  • 中小企業は定型業務×簡単なルール3つから始めるのが現実的

株式会社Sei San Seiは、AIを活用した採用代行「RPaaS」を通じて、母集団形成から面接調整までの採用実務を支援しています。「人事にAIを取り入れたいが、何から始めればいいかわからない」「採用に割ける人手が足りない」という企業様は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. 経団連のHR部門AI活用報告書とはどのようなものですか?

経団連が2026年4月に公表した報告書で、会員企業75社の調査をもとに人事領域のAI活用実態と提言をまとめたものです。9割以上の企業がAIを導入していると回答しました。

Q2. 人事のAI活用が最も進んでいる領域はどこですか?

採用領域が最多で、応募者スクリーニングや面接サポートが中心です。次いで労務管理、エンゲージメント、人材育成と続き、評価・配置での活用はまだ限定的です。

Q3. 採用選考にAIを使うのは問題ないのでしょうか?

設計次第です。AIバイアスのリスクがあるため、足切りの自動判定ではなく、書類整理や日程調整の効率化と人の最終判断を組み合わせる形が推奨されます。

Q4. 中小企業でも人事のAI活用はできますか?

可能です。求人票作成・応募者連絡・日程調整などの定型業務から始めれば、専任担当がいなくても導入できます。AIを活用した採用代行を利用する選択肢もあります。

Q5. 最初に決めるべきルールは何ですか?

個人情報をAIに入力してよい範囲、人が最終判断する場面、AI利用を候補者にどう説明するか、の3つです。経団連が提言する安全性・公平性・透明性に対応します。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社リクルートキャリア(当時)にて地方転職のノウハウを社内外に共有し、北海道をはじめとする地方転職市場の拡大に寄与。2020年にベンチャー企業で人事責任者・子会社取締役を経験したのち、2023年1月に株式会社Sei San Seiを設立。DX・HR領域のサービスを展開。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

ブログ一覧へ戻る

最新記事

まずはお気軽にご相談ください

無料相談・資料請求を受け付けております

お問い合わせはこちら