人事・採用 2026.08.28

育成就労制度とは|2027年4月開始の新制度と技能実習との違い、中小企業が今から準備すべきこと

多様な国籍のスタッフが職場で先輩から指導を受けるイメージ

2027年4月1日、30年以上続いた技能実習制度が廃止され、新しい「育成就労制度」がスタートします。人手不足に悩む製造業、建設業、介護、農業、飲食料品製造などの中小企業にとって、外国人材の受入れルールが根本から変わる大きな転換点です。

「技能実習と何が違うのか」「今いる実習生はどうなるのか」「転籍が認められると、せっかく育てた人材が辞めてしまうのではないか」。こうした疑問や不安を持つ経営者・人事担当者に向けて、この記事では制度の全体像と、2026年のうちに準備しておくべきことを整理します。

育成就労制度とは何か

育成就労制度は、技能実習制度を発展的に解消して新設される在留資格の仕組みで、「人材育成」と「人材確保」を正面から目的に掲げた制度です。技能実習が「開発途上国への技能移転による国際貢献」を建前としていたのに対し、育成就労は日本の人手不足分野で働きながら技能を身につけ、中長期的に日本で活躍する人材を育てることを目指します。

制度の基本的な枠組みは次のとおりです。

  • 育成期間:原則3年間。この間に「特定技能1号」の水準に到達することを目標とする
  • 受入れ対象分野:特定技能の産業分野と原則として一致させ、就労を通じた育成になじむ分野に限定
  • その後のキャリア:育成就労修了後は特定技能1号、さらに特定技能2号へと移行し、長期就労や家族帯同への道が開ける
  • 施行日:2027年4月1日。同日に技能実習制度は廃止

つまり育成就労は、それ単体で完結する制度ではなく、「育成就労(3年)→ 特定技能1号 → 特定技能2号」という一本のキャリアパスの入口として設計されています。受入れ企業の側から見ると、「3年で帰国する前提の労働力」から「長く働いてもらう人材の採用・育成」へと発想を切り替える必要があります。

技能実習制度との5つの違い

実務に影響が大きい違いを5つに絞って整理します。

違い1:転籍(転職)が一定要件のもとで認められる

技能実習では、やむを得ない事情がない限り実習先の変更は認められませんでした。育成就労では、本人の意向による転籍が制度として認められます。要件は後述しますが、「原則転籍不可」から「条件付きで転籍可」への転換は、受入れ企業の人材戦略に最も大きく影響するポイントです。

違い2:受入れ分野が特定技能と揃えられる

技能実習の職種・作業と、特定技能の産業分野は必ずしも一致しておらず、実習後に特定技能へ移行できないケースがありました。育成就労では受入れ分野を特定技能と原則一致させ、育成から長期就労まで途切れないキャリアパスが前提になります。逆に言えば、これまで技能実習で受け入れていた職種でも、育成就労の対象分野に含まれなければ受入れが難しくなる可能性があるため、自社の業種の確認が欠かせません。

違い3:就労開始時から日本語能力が求められる

育成就労では、就労開始の時点で日本語能力A1相当(日本語能力試験N5相当)の試験合格、またはこれに相当する日本語講習の受講が求められます。技能実習では入国前講習はあったものの明確な語学要件はなく、現場での意思疎通が課題となっていました。受入れ企業側にも、就労中の日本語学習機会の確保が求められます。

違い4:監理団体が「監理支援機関」に再編される

技能実習の監理団体は、新たに「監理支援機関」として許可を取り直す必要があります。受入れ企業との独立性の確保、外部監査人の設置、職員の要件などが厳格化され、監理団体としての実績や体制によっては許可を得られない機関も出てくると見込まれます。現在の提携先がどう対応するかは、受入れ企業にとって早めに確認すべき事項です。

違い5:送出しに関わる費用負担の適正化

技能実習では、来日前に本人が送出機関に高額な手数料を支払い、借金を背負って来日するケースが問題視されてきました。育成就労では、送出機関に支払う手数料等について、受入れ企業側も一定の負担を分担する仕組みが導入され、本人の過度な負担を減らす方向で見直されます。受入れコストは技能実習より増える可能性があるため、予算面での織り込みが必要です。

転籍ルールの要点|企業が最も気にする「辞められるリスク」

転籍が認められると聞くと、「1年育てたところで条件の良い会社に移られてしまうのでは」と心配になる経営者は多いでしょう。ただし、本人意向による転籍には明確な要件があります。

  • 転籍制限期間の経過:分野ごとに定められた1年以上2年以内の期間、同一の受入れ企業で就労していること
  • 技能要件:技能検定基礎級または育成就労評価試験に合格していること
  • 日本語要件:日本語能力試験N5相当以上に合格していること
  • 転籍先の要件:転籍先が優良な育成就労実施者であること、転籍先で受け入れる育成就労外国人のうち本人意向による転籍者の割合が一定以内(原則3分の1以内。地方の指定区域から区域外への転籍はさらに厳しく6分の1以内)であること

また、受入れ企業側の法令違反やハラスメントなど「やむを得ない事情」がある場合の転籍は、期間を問わず認められます。これは技能実習でも同様でしたが、育成就労では相談窓口や支援の仕組みが強化されます。

ここで押さえておきたいのは、転籍要件は「1〜2年は同じ会社で働き、技能と日本語を身につけた人だけが移れる」という設計だという点です。裏返せば、この期間に「この会社で働き続けたい」と思ってもらえるかどうかが、そのまま定着率を左右します。制度で縛れなくなる分、職場としての魅力と、育成に本気で向き合う姿勢が問われる制度だと言えます。

今いる技能実習生はどうなるのか

2027年4月1日の施行後も、すでに技能実習を行っている人は経過措置により、認定を受けた技能実習計画の期間は実習を継続できます。施行日をまたいで、いきなり在留資格が失われることはありません。

一方で、施行前に技能実習の申請を行う場合は、2026年中が実質的な移行期間となります。2026年9月1日からは育成就労計画の認定申請(施行日前申請)の受付が始まり、2027年4月の制度開始と同時に受入れを始められるよう準備が可能です。「技能実習で最後の受入れを行うか、育成就労を待つか」は、監理団体や行政書士と相談しながら判断することになります。

中小企業が2026年中に準備すべき5つのこと

1. 自社の業種が受入れ対象分野に含まれるか確認する

受入れ分野は特定技能の産業分野に原則一致します。現在の技能実習の職種が育成就労の対象分野に含まれるか、分野別運用方針や出入国在留管理庁の情報で確認しましょう。対象外であれば、受入れ計画そのものの見直しが必要です。

2. 監理団体(監理支援機関)の対応方針を確認する

現在提携している監理団体が監理支援機関の許可を取得する予定か、いつ頃申請するかを確認します。許可を取らない、あるいは取れない見込みであれば、提携先の変更を早めに検討します。施行直前は申請が集中し、切り替えが間に合わない恐れがあります。

3. 賃金・労働条件を「日本人と同等以上」で点検する

育成就労では日本人と同等以上の報酬が要件となり、転籍の可能性がある以上、賃金水準は定着に直結します。最低賃金の引き上げも続いていますから、賃金テーブル、残業管理、休日の取得状況を点検しておきましょう。労務管理の不備は転籍事由になるだけでなく、受入れ停止のリスクにもつながります。

4. 日本語学習と技能育成の仕組みをつくる

育成就労計画には技能と日本語の育成計画が含まれます。就業時間内の学習時間の確保、オンライン教材や地域の日本語教室の活用、技能検定の受験スケジュールなど、「計画に書けること」を具体的に用意します。生成AIによる翻訳や多言語マニュアルの整備も、現場の意思疎通を助ける実務的な手段です。

5. 「選ばれる職場」としての受入れ体制を整える

住居や生活面の支援、相談できる担当者、キャリアパス(特定技能への移行支援)の明示は、転籍が可能な制度のもとでは他社との差別化要素になります。外国人材に限らず、日本人の若手が定着する職場づくりと本質は同じです。「安く使える労働力」という発想が残っていると、制度開始後に人材が流出する側に回りかねません。

外国人材の受入れは「採用戦略」の一部として考える

育成就労制度への移行は、事務手続きの変更にとどまりません。3年の育成を経て特定技能へと進み、長く働いてもらうことを前提にする以上、外国人材の受入れは自社の採用・育成・定着の戦略全体の中に位置づける必要があります

日本人の採用が難しい地方の中小企業ほど、外国人材の重要度は高まります。しかし同時に、転籍が可能な制度のもとでは、外国人材からも「選ばれる会社」でなければ人は残りません。賃金、労務管理、育成の仕組み、キャリアの見通しを整えることは、日本人・外国人を問わず、これからの採用力の土台になります。

まとめ:制度で縛れない時代の外国人材受入れ

  • 育成就労制度は2027年4月1日施行。技能実習制度は同日に廃止され、原則3年で特定技能1号水準の人材育成を目指す
  • 技能実習との違いは、転籍の容認、受入れ分野の特定技能との一致、就労開始時の日本語要件、監理支援機関への再編、送出し費用の負担分担
  • 本人意向の転籍は1〜2年の制限期間と技能・日本語の要件つき。制限期間中に「働き続けたい」と思われる職場かどうかが定着を決める
  • 今いる技能実習生は経過措置で継続可能。2026年9月から育成就労計画の施行日前申請が始まる
  • 2026年中の準備は、対象分野の確認、監理支援機関の確認、賃金・労務の点検、育成の仕組み、選ばれる職場づくりの5つ

株式会社Sei San Seiでは、AI採用代行「RPaaS」や人材紹介「MINORI Agent」を通じて、中小企業の採用戦略の設計から人材の定着までを支援しています。また、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERP「MINORI Cloud」では、製造・建設・福祉の現場で多言語マニュアルや育成記録をAIで運用する仕組みづくりもご相談いただけます。「外国人材も含めた採用と定着の全体像を整理したい」という方は、お気軽にご相談ください

よくある質問

Q1. 育成就労制度はいつから始まりますか?

育成就労制度は2027年4月1日に施行され、同日に技能実習制度は廃止されます。ただし施行日前の2026年9月1日から育成就労計画の認定申請の受付が始まり、施行と同時に受入れを開始できる準備が可能です。2026年中は技能実習の申請も並行して受け付けられる移行期間で、すでに在留している技能実習生は経過措置により実習を継続できます。

Q2. 育成就労制度と技能実習制度の違いは何ですか?

最大の違いは制度の目的です。技能実習は「国際貢献(技能移転)」を建前としていたため原則として転籍が認められませんでしたが、育成就労は「人材育成と人材確保」を正面から目的に掲げ、原則3年で特定技能1号水準の人材を育てることを目指します。そのため一定要件のもとで本人の意向による転籍が認められ、受入れ対象分野は特定技能の分野と原則一致し、就労開始時に日本語能力の要件が設けられました。

Q3. 育成就労制度では外国人は自由に転職できますか?

完全に自由ではありません。本人の意向による転籍には、分野ごとに定められた1年以上2年以内の転籍制限期間を同じ企業で就労していること、技能検定基礎級または育成就労評価試験に合格していること、日本語能力試験N5相当以上に合格していることなどの要件があります。加えて転籍先も優良な受入れ企業であること、転籍先で受け入れる育成就労外国人のうち本人意向転籍者の割合が一定以内であることが求められます。

Q4. 育成就労外国人を受け入れる企業に求められる要件は何ですか?

受入れ企業(育成就労実施者)は、技能と日本語の育成計画を含む育成就労計画を作成して認定を受ける必要があります。日本人と同等以上の報酬、適切な労働時間管理、生活支援体制、日本語学習機会の提供などが求められ、監理支援機関からの監理を受けます。また転籍制限期間中に企業側の事情や法令違反で転籍が生じないよう、労務管理の整備が重要になります。

Q5. 中小企業は育成就労制度に向けて何から準備すべきですか?

最初に、自社の業種が受入れ対象分野に含まれるかを確認します。次に、現在提携している監理団体が監理支援機関の許可を取得する予定かを確認し、必要なら提携先を見直します。並行して、日本人と同等以上の賃金水準、残業や休日の管理、住居や生活面の支援、日本語学習の仕組みといった受入れ体制を整えます。転籍が可能になる制度である以上、「選ばれる職場」であることが定着の前提になります。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社リクルートキャリア(当時)にて地方転職のノウハウを社内外に共有し、北海道をはじめとする地方転職市場の拡大に寄与。2020年にベンチャー企業で人事責任者・子会社取締役を経験したのち、2023年1月に株式会社Sei San Seiを設立。DX・HR領域のサービスを展開。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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