ビジネストレンド 2026.07.31

最低賃金2026年度改定はいくら?全国平均1,176円・55円引き上げへ——中小企業がいま打つべき対策

最低賃金2026年度改定と中小企業の対策

2026年7月28日、厚生労働省の中央最低賃金審議会が2026年度の最低賃金について、全国加重平均で55円引き上げ、時給1,176円とする目安を答申しました。引き上げ率は4.9%で、現在の1,121円から大幅な上昇となります。

最低賃金の引き上げは、パート・アルバイトを多く雇用する中小企業にとって人件費に直結する話です。しかも2026年10月は、社会保険の「106万円の壁」撤廃が重なるタイミング。時給の上昇と社会保険料負担の増加が同時に来るため、例年以上に早めの準備が欠かせません。本記事では、目安答申の内容といつから適用されるのか、そして中小企業がいま打つべき対策を整理します。

※本記事は2026年7月28日の目安答申時点の情報に基づいています。8月の都道府県別答申が出次第、内容を更新する予定です。

2026年度の最低賃金はいくら?——目安は全国平均1,176円

今回の目安答申のポイントは次のとおりです。

  • 全国加重平均で55円引き上げ、時給1,176円へ(現在1,121円、引き上げ率4.9%)
  • ランク別の目安:経済力の高いAランク(東京都・大阪府など6都府県)は54円、Bランク・Cランクは56円。地方の引き上げ額を大きくし、地域間格差の縮小を図る構図が今年も続いています
  • 引き上げ額は前年度をやや下回る水準:それでも4%台後半の引き上げは歴史的に見て高い伸びです

目安どおりに改定された場合、東京都は現在の1,226円から1,280円になる見込みです。地方でも時給1,000円超えが当たり前になり、都市部との時給差は縮まっていきます。

なお、目安はあくまで「目安」であり、最終的な金額は各都道府県の審議で決まります。近年は地方を中心に目安を上回る引き上げを行う県も出ているため、自社の所在地の答申は必ず確認しましょう。

いつから適用される?——10月から順次発効

最低賃金改定の流れは例年ほぼ決まっています。

  • 7月28日:中央最低賃金審議会が目安を答申(済み)
  • 8月中:各都道府県の地方最低賃金審議会が審議し、改定額を答申
  • 9月:官報公示などの手続き
  • 10月:都道府県ごとに順次発効

つまり、実務上のデッドラインは9月末です。10月の給与計算に間に合わせるには、9月中に時給改定の対象者の洗い出し、給与システムの設定変更、雇用契約書や労働条件通知書の更新までを終えておく必要があります。

中小企業への影響——賃上げと社会保険拡大の「ダブルインパクト」

今回の改定が例年と違うのは、2026年10月に社会保険の適用拡大(いわゆる106万円の壁の撤廃)と同時に来ることです。詳しくは106万円の壁撤廃の解説記事にまとめていますが、短時間労働者の社会保険加入の賃金要件がなくなり、週20時間以上働くパートは月収にかかわらず社会保険の対象になっていきます。

企業側から見ると、次の3つの負担増が同時に発生します。

  • 時給の引き上げ:最低賃金付近で雇用しているパート・アルバイトは一律で時給改定が必要
  • 社会保険料の会社負担:新たに加入対象となるパートの分だけ、労使折半の保険料負担が増加
  • 賃金バランスの調整:最低賃金付近の時給だけ上げると、先輩社員や職責のある社員との差が縮まる「賃金の逆転・圧縮」が起き、全体の賃金テーブルの見直しが必要になる

東京商工会議所の調査では、中小企業の65.6%が人手不足と回答し、賃上げを実施予定の企業は6割を超えています。一方で、その多くは業績改善を伴わない「防衛的な賃上げ」です。中小企業白書2026が示すとおり、賃上げの原資を確保できるかどうかは、価格転嫁と生産性向上にかかっています。

いま打つべき5つの対策

目安答申から発効までの2カ月でできることを、優先度順に整理します。

対策1:最低賃金割れのチェックと賃金テーブルの点検

まず、自社の全従業員の時給換算額を一覧にし、改定後の最低賃金を下回る人がいないかを確認します。月給制の社員も、所定労働時間で割った時給換算での確認が必要です。あわせて、時給を底上げした結果、役職者や熟練者との差が不自然に縮まらないか、賃金テーブル全体を点検しましょう。

対策2:パートの労働時間と社会保険加入の設計見直し

時給が上がると、同じ労働時間でも年収が増え、社会保険の加入ラインとの関係が変わります。10月の適用拡大とあわせて、本人の希望(手取り重視か、厚生年金加入による将来の給付重視か)を面談で確認し、シフト設計を再構築することが重要です。

対策3:労務費の価格転嫁

賃上げ分を自社で丸ごと吸収し続けるのは限界があります。原材料費に比べ、労務費の価格転嫁は進みにくい傾向がありますが、最低賃金の引き上げは取引先に値上げを説明する客観的な根拠になります。公表されている引き上げ率(4.9%)を材料に、早めに取引先との交渉テーブルをつくりましょう。

対策4:業務の自動化・省力化で「時間あたり付加価値」を上げる

時給が上がる以上、同じ業務を同じ時間のかけ方でやっていては利益が減るだけです。定型業務のAI・RPAによる自動化は、人手不足と人件費上昇の両方に効く打ち手です。AIエージェントによる業務自動化の始め方ノーコードでの業務自動化で解説しているとおり、いまは専門人材がいない中小企業でも自動化に着手できる環境が整っています。

対策5:採用・定着コストの見直し

時給相場が上がると、募集時給も引き上げないと応募が集まらなくなります。採用単価が上がるほど、「辞めない職場」をつくって採用回数そのものを減らすことの費用対効果が大きくなります。採用プロセスの効率化や定着施策は、人件費対策の一部として考えるべきテーマです。

まとめ:9月末までが勝負。人件費対策は「守り」と「攻め」を同時に

  • 2026年度の最低賃金は全国平均55円引き上げの1,176円が目安。8月に都道府県別の金額が確定し、10月から順次発効
  • 東京都は1,280円になる見込み。地方はB・Cランクで56円と、都市部より大きい引き上げ幅
  • 2026年10月は106万円の壁撤廃と同時期。時給上昇×社会保険料負担のダブルインパクトに備える
  • 9月末までに、最低賃金割れチェック・賃金テーブル点検・雇用契約の更新を完了させる
  • 中長期では、価格転嫁と業務自動化による生産性向上が賃上げ原資の確保に直結する

株式会社Sei San Seiでは、人件費上昇の時代に対応する中小企業の生産性向上をご支援しています。生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERP「MINORI Cloud」による業務自動化や、採用業務を効率化するAI採用代行「RPaaS」など、限られた人員で利益を出す体制づくりを伴走型でサポートします。「賃上げはしたいが原資がない」とお悩みの企業様は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. 2026年度の最低賃金はいくらになりますか?

2026年7月28日に中央最低賃金審議会が示した目安では、全国加重平均で55円引き上げの時給1,176円(現在1,121円、4.9%増)です。目安は都道府県のランク別にAランク54円、B・Cランク56円とされており、8月に各都道府県の地方最低賃金審議会で最終的な金額が決まります。

Q2. いつから適用されますか?

例年どおりであれば、8月中に都道府県ごとの改定額が答申され、官報公示を経て2026年10月から順次発効する見込みです。発効日は都道府県ごとに異なるため、自社の事業所がある都道府県の労働局の発表を確認してください。10月の給与計算から新しい時給を反映できるよう、9月中の準備が必要です。

Q3. 東京都はいくらになりますか?

東京都はAランク(目安54円)に区分されており、現在の1,226円に目安どおり上乗せされれば1,280円になる見込みです。ただし最終的な金額は東京地方最低賃金審議会の審議で決まり、目安を上回る引き上げになる可能性もあります。8月の答申で確定します。

Q4. 最低賃金を下回る賃金で雇うとどうなりますか?

最低賃金法違反となり、地域別最低賃金を下回った場合は罰金の対象になります。仮に労使が合意していても最低賃金未満の契約は無効で、最低賃金額との差額を支払う義務が生じます。月給制の場合も時給換算で下回っていないかの確認が必要で、改定のたびに賃金テーブル全体の点検が欠かせません。

Q5. パート・アルバイトにも適用されますか?

適用されます。最低賃金は雇用形態を問わず、パート・アルバイト・契約社員・派遣社員を含むすべての労働者が対象です。また2026年10月には社会保険の106万円の壁(賃金要件)の撤廃も予定されており、時給上昇と社会保険加入が同時に進むため、パートの働き方と人件費設計の見直しが必要になります。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社リクルートキャリア(当時)にて地方転職のノウハウを社内外に共有し、北海道をはじめとする地方転職市場の拡大に寄与。2020年にベンチャー企業で人事責任者・子会社取締役を経験したのち、2023年1月に株式会社Sei San Seiを設立。DX・HR領域のサービスを展開。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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