DX推進 2026.07.06

統合マネジメントシステム(IMS)とは|ISO複数規格を一体運用するメリットと構築の進め方

統合マネジメントシステム(IMS)とは|ISO複数規格を一体運用するメリットと構築の進め方

「ISO 9001に加えて14001や45001も取得したが、規格ごとにマニュアルも監査もバラバラで管理が大変」「複数のISO認証を、もっと効率よく一つにまとめて運用できないか」——複数のISO規格を運用する製造業・建設業の現場では、こうした悩みがよく聞かれます。その答えになるのが統合マネジメントシステム(IMS)という考え方です。

本記事では、製造業・建設業をはじめ複数のISO規格の取得・運用を検討する経営者や品質・環境・安全の管理担当者に向けて、統合マネジメントシステム(IMS)とは何かを基礎から解説します。規格を統合できる理由(共通構造)、統合のメリット、構築の進め方、そして中小企業がつまずきやすいポイントまで整理します。個々の規格の基礎は、「ISO 9001とは|中小製造業のための取得・進め方入門」「ISO 14001とは|製造業の環境マネジメント」「ISO 45001とは|労働安全衛生マネジメント」もあわせてご覧ください。

統合マネジメントシステム(IMS)とは

統合マネジメントシステム(IMS:Integrated Management System)とは、ISO 9001(品質)・ISO 14001(環境)・ISO 45001(労働安全衛生)など複数のマネジメントシステム規格を、別々にではなく一つの仕組みとして統合的に運用する取り組みを指します。

ここで押さえておきたいのは、「IMS」という名前の単一の認証規格は存在しないという点です。認証はあくまでISO 9001やISO 14001といった各規格ごとに取得します。IMSは、それらを一体で運用する「考え方・運用形態」を表す言葉です。つまり、認証は複数あっても、社内の仕組み(マネジメントシステム)は一つという状態を目指すのがIMSです。

たとえば製造業では、品質(ISO 9001)・環境(ISO 14001)・労働安全衛生(ISO 45001)の3規格を統合するケースが代表的です。方針、目標、文書管理、内部監査、マネジメントレビューといった「共通して必要になる要素」を一本化し、規格ごとに固有な部分だけを個別に管理します。

なぜ複数のISO規格を統合できるのか——共通構造(附属書SL)

複数のISO規格を無理なく統合できる背景には、附属書SL(Annex SL)と呼ばれる共通の枠組みがあります。附属書SLは、ISOのマネジメントシステム規格が共通して従う章立て・用語・要求事項の骨格で、近年は調和構造(Harmonized Structure)とも呼ばれます。

この共通構造により、ISO 9001・ISO 14001・ISO 45001などは、次のような同じ章立て(おおむね箇条4〜10)を共有しています。

  • 組織の状況(内外の課題・利害関係者の理解)
  • リーダーシップ(経営者の関与・方針)
  • 計画(リスクと機会・目標)
  • 支援(資源・力量・文書化した情報)
  • 運用(実際の業務プロセス)
  • パフォーマンス評価(監視・測定・内部監査・マネジメントレビュー)
  • 改善(不適合・是正処置・継続的改善)

方針の立て方も、内部監査のやり方も、マネジメントレビューの進め方も、規格をまたいで共通しています。だからこそ、共通部分を一つにまとめ、品質・環境・安全それぞれに固有の要求だけを足し込む形で統合できるのです。附属書SLは、IMSを実現するための土台と言えます。

統合マネジメントシステム(IMS)を構築するメリット

複数のISO規格を統合するメリットは、大きく次の4つに整理できます。

1. 文書・記録・手順の重複をなくせる

規格ごとにマニュアルや様式、記録を別々に作ると、方針も手順も似たものが二重・三重に増えていきます。IMSでは共通部分を一本化するため、文書の総量とメンテナンスの手間を大きく減らせます。「どの規格の書類だったか分からなくなる」といった混乱も防げます。

2. 内部監査・マネジメントレビューを一体化できる

規格ごとに内部監査やマネジメントレビューを別日程で行うと、それだけ工数がかかります。IMSなら品質・環境・安全をまとめて監査・レビューでき、経営層が全体を一度に俯瞰できます。監査の準備や記録作成の負担も軽くなります。内部監査の基本は「ISO内部監査の進め方」で解説しています。

3. 方針・目標が整合し、組織運営が一貫する

品質・環境・安全の方針や目標がバラバラだと、現場は「どれを優先すべきか」で迷います。IMSでは統合方針として整合をとるため、経営の意思が現場まで一貫して伝わり、目標管理も一元化できます。

4. 認証審査(複合審査)を効率化できる

認証機関は、複数規格を同時に審査する複合審査(統合審査)に対応しています。別々に審査を受けるより、審査日数・費用・受審側の対応工数を抑えられることが多く、更新審査やサーベイランス(維持審査)の負担も軽くなります。取得・審査の全体像は「ISO認証の取得方法|費用・期間・流れ」もご参照ください。

統合マネジメントシステム(IMS)構築の進め方

IMSは、すでに複数規格を運用している場合も、これから複数規格を取得する場合も、次のステップで構築・整理していくのが基本です。

ステップ1:統合する規格と適用範囲を決める

まず、どの規格を統合対象にするかを決めます。品質・環境・安全の3つが定番ですが、情報セキュリティ(ISO 27001)を加える場合もあります。あわせて、統合を適用する部門・拠点・業務の範囲(適用範囲)を明確にします。

ステップ2:共通構造(附属書SL)で要求事項を対応づける

各規格の要求事項を、附属書SLの章立てに沿って対応表(マトリクス)にまとめます。共通する部分と、規格固有の部分(品質の製品要求、環境の環境側面、安全の危険源など)を切り分けるのが、統合設計の要です。

ステップ3:方針・目標・マニュアルを一本化する

品質方針・環境方針・安全衛生方針を統合方針としてまとめ、目標やマネジメントシステム文書も一つの体系に整理します。重複する手順書は統合し、規格固有の手順だけを個別に残します。

ステップ4:文書・記録を一元管理する

手順書・様式・記録を規格ごとにばらばらに保管せず、一元的に保管・検索できる状態にします。ここが運用の負担を最も左右する部分で、紙やローカルのExcelで分散管理していると、統合したはずが結局バラバラという事態に陥りがちです。文書管理の効率化は「ISO文書管理を効率化|製造業の脱・紙とExcel」で詳しく解説しています。

ステップ5:内部監査とマネジメントレビューを統合して回す

規格ごとに分かれていた内部監査とマネジメントレビューを一体で計画・実施し、統合されたPDCAとして継続的改善を回します。不適合や是正処置も統合の仕組みの中で管理します。是正処置の進め方は「是正処置の進め方|製造業の再発防止と予防処置」を参考にしてください。

中小企業がIMSでつまずきやすいポイント

  • 「統合したつもり」で文書だけ二重管理:表紙は一つでも中身が規格ごとに分かれ、結局メンテナンスが増える
  • 記録が拠点・現場ごとに散在:品質・環境・安全の記録がバラバラの場所にあり、統合審査のたびに探し回る
  • 担当が規格ごとに分かれている:品質担当・環境担当・安全担当が縦割りで、統合の全体設計をする人がいない
  • 共通構造を理解せずに統合を始める:附属書SLの対応づけをせずに文書だけ合体させ、要求の抜け漏れが生じる
  • 目的が「効率化」から「認証維持」にすり替わる:本来の狙いだった負担軽減や改善が薄れ、審査対応だけの作業になる

これらの多くは、「共通構造での要求整理」と「文書・記録のデジタル一元管理」を最初に押さえることで避けられます。とくに専任担当を置きにくい中小企業では、品質・環境・安全の記録をクラウド上で一元管理し、内部監査やレビューをまとめて回せる体制を整えておくと、統合運用が一気に現実的になります。

まとめ:IMSは「仕組みは一つ、規格の要求は満たす」を実現する

統合マネジメントシステム(IMS)は、複数のISO規格を別々に運用する重複や負担を解消し、組織を一貫して管理するための考え方です。要点を整理します。

  • IMSとは、ISO 9001・14001・45001などを一つの仕組みに統合して運用すること(「IMS」という認証規格はない)
  • 統合を可能にするのは、規格共通の枠組みである附属書SL(調和構造)
  • メリットは、文書の重複削減・監査の一体化・方針の整合・複合審査による効率化
  • 構築は、対象規格の決定 → 共通構造での対応づけ → 方針・文書の一本化 → 記録の一元管理 → 監査・レビューの統合の順で進める
  • 中小企業のつまずきの多くは「二重管理」と「記録の散在」——デジタル一元管理で解消できる

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