女性活躍推進法改正|男女間賃金差異・女性管理職比率の公表義務が101人以上の企業へ拡大
2025年6月に公布された改正女性活躍推進法により、2026年4月1日から、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務の対象が「常時雇用する労働者が101人以上」の企業へ拡大されました。これまで対象だった301人以上の大企業だけでなく、社員100人強の中堅・中小企業も、自社の賃金データを算出し、外部へ公表する義務を負うことになります。
対象となる企業にとって初回の公表期限は決算期に応じてこれからやってきます。「うちは対象なのか」「何をどう計算すればいいのか」「数字が悪かったら採用に響かないか」——こうした疑問を持つ人事・経営層の方に向けて、本記事では改正の内容と実務対応、そして公表をむしろ採用力に変える視点を解説します。
改正の概要:対象が301人以上から101人以上へ
女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)は、企業に女性活躍に関する状況把握・行動計画の策定・情報公表を求める法律です。2022年からは常時雇用301人以上の企業に男女間賃金差異の公表が義務付けられていましたが、今回の改正でこの範囲が大きく広がりました。
改正後のポイントは次のとおりです。
- 対象企業:常時雇用する労働者が101人以上の企業(これまでは301人以上)
- 必須の公表項目:①男女間賃金差異、②女性管理職比率の2項目
- 追加の公表項目:既存の選択項目(採用者に占める女性比率、平均勤続年数の男女差など)から1項目以上を選択し、合計3項目以上を公表
- 施行日:2026年4月1日
「常時雇用する労働者」には正社員だけでなく、実態として継続的に雇用されているパート・契約社員も含まれます。従業員数が100人前後の企業は、雇用形態を含めた人数の数え方から確認する必要があります。
何をどう公表するのか:男女間賃金差異の計算方法
男女間賃金差異は、「男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合(%)」として算出します。たとえば男性の平均が500万円、女性の平均が400万円なら「80%」です。
公表は次の3つの区分ごとに行います。
- 全労働者
- 正規雇用労働者
- 非正規雇用労働者
賃金には基本給のほか、賞与や各種手当を含めるのが原則です。事業年度単位の実績で計算するため、給与システムから男女別・雇用形態別に年間賃金を集計できる体制が必要になります。
あわせて重要なのが説明欄の活用です。賃金差異の数値には、管理職比率の差や勤続年数の差、職種構成の違いといった構造的な背景が反映されます。「同じ仕事で賃金に差をつけている」わけではなくても数値上の差は出るため、背景事情を説明欄で補足することが認められています。
いつまでに対応が必要か:決算期で異なる初回期限
公表義務が生じるのは、施行日(2026年4月1日)以後、最初に終了する事業年度の実績からです。その実績を、次の事業年度が始まってから「速やかに」——おおむね3か月以内を目安に——公表する必要があります。
具体例で整理すると次のようになります。
- 3月決算の企業:2027年3月期(2026年4月〜2027年3月)の実績を、2027年6月末ごろまでに公表
- 12月決算の企業:2026年12月期の実績を、2027年3月末ごろまでに公表
「まだ先の話」に見えますが、集計対象となる事業年度はすでに始まっています。期中から給与データの集計方法を整えておかないと、期末になって慌てることになります。公表方法は、厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載や自社ホームページでの公表など、求職者が容易に確認できる方法が求められます。
中小企業が今から進める5つの準備
実務対応は次の順序で進めるのが現実的です。
- ①対象かどうかを確認する:パート・契約社員を含む常時雇用労働者数を数え、101人以上かを確認します。100人前後で増減する企業は、採用計画も踏まえて早めに「対象になる前提」で準備するのが安全です
- ②賃金データを集計できる体制を作る:給与システムから男女別・雇用区分別の年間賃金を出せるか確認し、手作業が必要なら集計手順を今のうちに固めます
- ③試算して要因を分析する:本番の公表前に直近年度で試算し、差異がどこから生じているか(管理職比率、勤続年数、職種構成など)を把握します
- ④説明欄の内容を準備する:数値の背景と、改善に向けた取り組み(登用計画、両立支援制度など)を文章化します
- ⑤行動計画・他の法対応と合わせて整理する:女性活躍の行動計画に加え、2026年10月施行の就活セクハラ防止措置やカスタマーハラスメント対策の義務化、障害者法定雇用率の引き上げなど、同時期の法改正対応と一覧化して漏れを防ぎます
公表義務を「採用力」に変える視点
今回の改正を単なる義務対応と捉えるか、採用戦略の材料と捉えるかで、得られるものは大きく変わります。
人手不足が深刻化するなか、求職者は企業選びの目を厳しくしています。賃金差異や女性管理職比率のデータは今後、求職者が応募前に比較する標準的な情報になっていきます。数値と改善計画をセットで誠実に開示している企業は、開示していない企業や説明のない企業より信頼されやすくなります。
特に、地方の中堅・中小企業にとっては、「女性が長く働き続けられる会社かどうか」を客観的なデータで示せる機会でもあります。試算の結果、差異の要因が管理職登用や勤続年数にあると分かれば、登用基準の見直しや両立支援の強化といった具体策につなげられます。これは公表のためだけでなく、定着率の改善という経営課題への投資でもあります。
まとめ:集計体制の整備は「今期から」始まっている
- 2026年4月1日施行の改正女性活躍推進法により、男女間賃金差異・女性管理職比率の公表義務が常時雇用101人以上の企業へ拡大された
- 必須2項目+選択1項目以上の合計3項目以上を公表する。賃金差異は全労働者・正規・非正規の3区分で算出する
- 初回の公表は、施行日以後最初に終了する事業年度の実績を、次年度開始後おおむね3か月以内に行う。集計対象の年度はすでに進行中
- 数値の背景は説明欄で補足できる。試算→要因分析→改善計画の順で準備する
- 誠実な開示は採用ブランディングにもなる。義務対応で終わらせず、定着・登用の改善につなげる
株式会社Sei San Seiでは、AIを活用した採用代行サービス「RPaaS」や人材紹介サービス「MINORI Agent」を通じて、中小企業の採用活動と人事体制づくりを支援しています。「公表データを採用広報にどう活かせばよいか分からない」「そもそも採用体制から見直したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. 女性活躍推進法の改正で何が変わりますか?
2025年6月に公布された改正女性活躍推進法により、2026年4月1日から、男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務の対象が、これまでの常時雇用301人以上の企業から101人以上の企業へ拡大されます。対象企業は、男女間賃金差異・女性管理職比率の2項目に加え、既存の選択項目から1項目以上、合計3項目以上を公表する必要があります。
Q2. 男女間賃金差異はどのように計算しますか?
男性の平均年間賃金に対する女性の平均年間賃金の割合(パーセント)を算出します。公表は「全労働者」「正規雇用労働者」「非正規雇用労働者」の3つの区分ごとに行います。賃金には基本給のほか賞与や各種手当を含めるのが原則で、事業年度単位の実績で計算します。数値の背景を説明する説明欄を活用することもできます。
Q3. いつまでに公表しなければなりませんか?
施行日である2026年4月1日以後、最初に終了する事業年度の実績を、その次の事業年度が始まってから速やかに(おおむね3か月以内が目安)公表する必要があります。たとえば3月決算の企業なら、2027年3月期の実績を2027年6月末ごろまでに公表するイメージです。決算期によって初回の公表時期が変わるため、自社のスケジュールを早めに確認しておきましょう。
Q4. どこで公表すればよいですか?
求職者などが容易に確認できる方法での公表が求められます。厚生労働省が運営する「女性の活躍推進企業データベース」への掲載が代表的な方法で、自社ホームページでの公表も可能です。多くの求職者が企業研究の際にデータベースを閲覧するため、公表と同時に自社サイトの採用ページにも掲載し、数値の背景や取り組みを説明すると採用広報として効果的です。
Q5. 賃金差が大きい場合、公表すると採用に不利になりませんか?
数値だけで判断されるとは限りません。男女間賃金差異は同一業務での賃金差別だけでなく、管理職比率や勤続年数、職種構成の違いなど構造的な要因で生じることが多く、説明欄で背景と改善の取り組みを示すことができます。むしろ何も説明せず公表だけする、あるいは公表義務を怠るほうがリスクです。差異の要因分析と改善計画をセットで示すことが、採用力の維持につながります。