DX推進 2026.10.02

製造業の業務フロー図の書き方|受注から出荷までの例、使う記号と、改善点を見つける5ステップ

製造業の業務フロー図の書き方|受注〜出荷の例と記号

「納期回答に時間がかかる」「同じ数字を何度もExcelに打ち直している」「あの人が休むと出荷が止まる」。中小工場のこうした悩みは、原因がどこにあるのかを誰も全体として説明できないことから長引きます。営業、生産管理、購買、製造、品質、出荷、経理がそれぞれ自分の担当範囲だけを見ていて、受注から請求までの仕事がどうつながっているかを描いた資料がないためです。

そこで役に立つのが業務フロー図です。誰が、何をきっかけに、どの帳票やシステムを使って、次の誰に仕事を渡すのかを1枚の図にすると、転記・待ち・属人化といった改善点が目に見えるようになります。システム導入やRPA、ペーパーレス化を検討するときの出発点にもなります。

この記事では、製造業の業務フロー図について、書く目的、使う記号とルール、受注から出荷・請求までの例、現場で描いて改善につなげる5ステップを解説します。業種を問わない業務の見える化の考え方は属人化解消の進め方で扱っていますので、ここでは製造業に特有の流れと論点に絞ります。

業務フロー図とは|製造業で書く目的

業務フロー図は、仕事の流れを、担当する部門や人ごとに、順番と分岐をつけて図にしたものです。製造業では、似た名前の図として工程フロー図やQC工程表がありますが、表しているものが違います。

  • 工程フロー図・QC工程表:材料が切断・加工・組立・検査を経て製品になるまでのモノの流れと、各工程の管理項目を表します。
  • 業務フロー図:受注・指示・手配・記録・承認・請求といった情報と人の仕事の流れを、部門ごとに表します。

工場の改善というと、モノの流れに目が向きがちです。しかし、納期遅れや残業の原因を調べると、製造ラインそのものではなく、指示書が届くまでの待ち、在庫の確認の手間、日報の集計といった情報の流れに問題があることが少なくありません。業務フロー図を書く主な目的は次の4つです。

  • 改善点を見つける:転記・待ち・やり直しが発生している箇所を特定します。
  • システム導入の準備をする:何をシステムに置き換えるのかを決め、システム会社に業務を正確に伝えます。
  • 属人化をなくす:ベテランの頭の中にある手順や判断を、誰でも読める形にします。
  • 教育と引き継ぎに使う:新人や異動者が、自分の仕事が前後のどの仕事とつながっているのかを理解できます。ISOの品質マネジメントシステムで求められるプロセスの明確化にも活用できます。

業務フロー図で使う記号と書き方のルール

基本の記号は6つで足りる

フローチャートの記号はJIS(日本産業規格)でも定められていますが、社内で使う業務フロー図なら、次の6つを押さえれば十分です。

記号 意味 製造業での例
角の丸い四角(端子) 流れの開始と終了 注文書の受領、入金の確認
四角(処理) 誰かが行う作業 生産計画を作る、作業指示書を発行する
ひし形(判断) 条件による分岐 在庫はあるか、検査は合格か
波形の四角(書類) 紙の帳票や出力物 注文書、作業指示書、作業日報、納品書
円筒(データ) システムやファイルへの記録 販売管理システム、在庫管理のExcel
矢印 仕事や情報が渡る順番 営業から生産管理へ受注情報を渡す

部門ごとに「スイムレーン」で区切る

製造業の業務フロー図は、スイムレーン形式で描くのが基本です。図を横長の帯に分け、帯ごとに「営業」「生産管理」「購買」「製造」「品質保証」「出荷」「経理」などの部門を割り当て、それぞれの処理を担当部門の帯の中に置きます。こうすると、矢印が帯をまたぐ箇所が部門間の受け渡しになり、待ちや伝達ミスが起きやすい場所がひと目で分かります。取引先や協力工場が関わる場合は、社外の帯も加えます。

読みやすい図にするための5つのルール

  • 1つの四角に1つの処理:「受注を登録する」のように、主語の部門と動詞が分かる書き方にします。
  • 流れの向きをそろえる:時間の流れを左から右(または上から下)に統一し、矢印の逆流は差し戻しの場合に限ります。
  • 粒度をそろえる:ある部分だけ細かく、別の部分は大まかという状態を避けます。1枚の図は20〜40個程度の処理が目安です。
  • 帳票とシステムを書き添える:処理ごとに、何を見て何に記録するのかを書きます。紙とExcelの転記が見えるのはこの部分です。
  • 例外の流れも描く:特急品、仕様変更、検査の不合格、欠品など、現場の手間が集中するのは例外の流れです。

製造業の業務フロー図の例|受注から出荷・請求まで

中小の部品加工・組立工場によくある、受注生産の流れを例にします。実際の図では、次の表の各行が担当部門のレーンに置かれ、矢印でつながります。右端の列は、業務フロー図を描くと見えてくる典型的な問題です。

順 レーン(部門) 処理 帳票・システム よくある問題
1 営業 注文を受け、受注を登録する FAX・メールの注文書、販売管理 注文書の内容を手で打ち直す
2 生産管理 在庫と負荷を確認し、納期を回答する 在庫表、生産計画のExcel 現場に聞きに行かないと回答できない
3 生産管理 生産計画を作り、作業指示書を発行する 生産計画のExcel、作業指示書(紙) 計画の作り方が担当者しか分からない
4 購買 不足する材料・部品を発注し、入荷を受け入れる 注文書(FAX)、入荷記録 発注漏れに着工直前で気づく
5 製造 指示に沿って加工・組立し、日報を書く 作業指示書、作業日報(紙) 日報の集計が翌週になり、進捗が見えない
6 品質保証 検査し、合否を判定する(不合格なら手直し・再検査) 検査記録表、不適合報告書 不合格時の流れが決まっておらず、対応が人によって違う
7 出荷 梱包し、納品書を発行して出荷する 出荷指示書、納品書、販売管理 出荷実績を販売管理へ二重に入力する
8 経理 請求書を発行し、入金を確認する 請求書、会計ソフト 納品書と請求書の突き合わせに月末の時間を取られる

この例では、「在庫はあるか」「材料は足りているか」「検査は合格か」の3か所が判断(ひし形)になり、それぞれに分岐の流れが生まれます。また、受注・在庫・生産実績・出荷の情報が紙とExcelに分かれているため、同じ情報を部門ごとに入力し直す転記が少なくとも3か所で発生しています。受注から請求までを1枚に描くと、こうした問題が部門をまたいでつながっていることが分かります。

見込生産の工場では「計画」と「補充」の流れを加える

在庫を持って出荷する見込生産の製品がある工場では、受注を起点とする流れとは別に、「需要の見込みから生産計画を立てる」「在庫が発注点を下回ったら補充の生産を指示する」という流れが加わります。受注生産と見込生産が混在する工場は、2つの流れを別の図に分けて描くと読みやすくなります。需要の見込みの立て方は製造業の需要予測AIで解説しています。

製造業の業務フロー図を書く5ステップ

ステップ1:目的と対象範囲を決める

「納期回答を早くしたい」「生産管理システムの導入を準備したい」「ベテランの引退に備えて手順を残したい」など、描く目的を1つに決めます。目的によって、どこまで細かく描くかが変わるためです。あわせて、「注文書の受領から入金の確認まで」のように始点と終点を決め、範囲を区切ります。最初から工場の全業務を描こうとすると、完成する前に止まってしまいます。

ステップ2:現場で聞き取り、実際の流れを書き出す

各部門の担当者に、「何をきっかけに」「何を見て」「何をして」「誰に渡すのか」を聞き取ります。規程やマニュアルに書かれた流れではなく、実際に行われている流れを描くことが大切です。付箋に1枚1処理で書き出し、ホワイトボードに並べながら確認すると、担当者同士で「そこは実はこうしている」という話が出てきます。担当者の手元にしかないExcelや、口頭で伝えている確認なども漏らさず拾います。

ステップ3:スイムレーンで現状の業務フロー図に清書する

聞き取った内容を、部門ごとのレーンに並べて清書します。ツールはExcelやPowerPoint、作図ツールなど、社内で共有と更新がしやすいものを選びます。清書したら、もう一度現場の担当者に見てもらい、実態と合っているかを確認します。この現状の図をAs-Is(アズイズ)と呼びます。

ステップ4:転記・待ち・属人化などの問題箇所に印を付ける

現状の図に、問題のある箇所を書き込みます。どこを見ればよいかは次の章のチェックポイントを使います。印を付けるだけでなく、「1件あたり10分」「月に約200件」のように時間と件数を書き添えると、どこから手を付けるべきかの優先順位が決めやすくなります。

ステップ5:改善後の業務フロー図を描き、施策とシステム化につなげる

問題箇所をなくした、あるべき姿の図To-Be(トゥービー)を描きます。そのうえで、改善策を「運用ルールの変更で済むもの」「RPAや電子化で解決するもの」「システムの導入や入れ替えが必要なもの」に分けます。運用ルールの変更は今日からでも始められ、システム導入はTo-Beの図がそのまま要件の説明資料になります。業務フロー図は一度描いて終わりではなく、業務が変わるたびに更新する前提で管理します。

業務フロー図から改善点を見つける5つのチェックポイント

  • 同じ情報を何度も入力していないか:注文書から販売管理へ、販売管理から生産計画のExcelへ、日報から実績の集計表へ、という転記は、ミスと手間の大きな原因です。定型の転記は製造業のRPA導入事例で紹介している自動化の対象になります。
  • 紙とExcelを行き来していないか:紙の帳票をExcelに入力し、Excelを印刷して現場に配る流れは、ペーパーレス化の候補です。受注のFAXはFAX受発注をなくす手順、日報は日報を電子化する手順が参考になります。
  • レーンをまたぐ箇所で待ちが発生していないか:承認待ち、確認待ち、書類の回覧待ちは、作業時間ではなく待ち時間として納期を延ばします。矢印が部門をまたぐ箇所を重点的に確認します。
  • 特定の人しか判断できない処理はないか:「納期回答は○○さんに聞く」「段取りの順番は班長が決める」といった処理は、その人の不在で流れが止まります。判断の基準を書き出し、製造業の属人化を解消する方法で紹介している標準化を進めます。
  • 例外の流れが多すぎないか:特急品、仕様変更、不合格品の対応が通常の流れより多い場合、例外を前提にした仕組みが必要です。例外の発生件数を数えると、根本の原因が見えてきます。

改善点が見えたら、現場で出た改善のアイデアを一覧にして順番に取り組みます。具体的な改善のネタは工場の業務改善 具体例30選も参考にしてください。

まとめ:業務フロー図は「情報の流れ」を見える化する改善の出発点

  • 業務フロー図は、受注・指示・記録・請求といった情報と人の仕事の流れを表す図で、モノの流れを表す工程フロー図とは役割が違う
  • 記号は端子・処理・判断・書類・データ・矢印の6つで足り、部門ごとのスイムレーンで描くと受け渡しの問題が見える
  • 受注から出荷・請求までを1枚に描くと、転記・待ち・属人化が部門をまたいでつながっていることが分かる
  • 進め方は、目的と範囲の決定 → 現場で聞き取り → スイムレーンで清書 → 問題箇所に印 → 改善後のフローを描いて施策につなぐ、の5ステップ

業務フロー図を描くと、多くの工場で、受注・在庫・生産実績・出荷の情報が紙とExcelに分かれていることが問題の根にあると分かります。製造業の現場改善とDXの全体像は製造業のDX・生産性向上ガイドを、業種を問わない生産性向上の考え方は生産性完全ガイドを参考にしてください。

株式会社Sei San Seiでは、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERPであるMINORI Cloud 製造業版で、受発注・在庫・生産実績・品質の記録を1つの仕組みにまとめ、転記と待ちを減らす環境づくりをご支援しています。「業務フロー図をどう描けばよいか分からない」「描いてはみたが、どこから改善すべきか決められない」という段階では、MINORI Advisoryで業務の棚卸しとフローの整理からご相談いただけます。お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. 業務フロー図と工程フロー図(QC工程表)の違いは何ですか?

工程フロー図やQC工程表は、材料が加工・組立・検査を経て製品になるまでのモノの流れと、各工程の管理項目を表します。業務フロー図は、受注や指示、記録、承認といった情報と人の仕事の流れを、部門ごとに表します。工場の改善やシステム導入では、両方を並べて見ると、モノと情報の流れのずれや、紙の転記が発生している箇所が分かりやすくなります。

Q2. 業務フロー図はどのツールで書けばよいですか?

最初は紙と付箋、ホワイトボードで十分です。現場の担当者と一緒に付箋を動かしながら流れを確認し、固まったらExcelやPowerPoint、作図ツールで清書します。大切なのはツールの種類ではなく、部門ごとのレーン、処理の粒度、帳票とシステムの書き方を社内で統一することです。共有と更新がしやすい形式を選んでください。

Q3. 業務フロー図はどのくらいの細かさで書けばよいですか?

1つの四角に、誰が何をするかを1つだけ書き、1枚の図を20〜40個程度の処理に収めるのが目安です。最初は受注から出荷・請求までの全体を粗く描き、問題が多い部分だけを別の図で細かく描くと、全体と詳細の両方を把握できます。画面操作のレベルまで細かくすると、図が大きくなりすぎて読まれなくなるため注意してください。

Q4. 業務フロー図は誰が書くのがよいですか?

現場の流れをよく知る担当者と、部門をまたいで全体を見られる人の組み合わせが理想です。中小工場では、生産管理や業務改善の担当者が進行役となり、営業・製造・品質・経理の担当者に聞き取りながら描く形が一般的です。1人で想像して描くと、実際の例外処理や暗黙のルールが抜け落ちるため、必ず現場で確認してください。

Q5. 業務フロー図はシステム導入にどう役立ちますか?

現状の業務フロー図があると、どの帳票やExcelをシステムに置き換えるのか、どの転記や確認作業がなくなるのかを、導入前に具体的に検討できます。システム会社への説明もしやすくなり、導入後に今の業務に合わないというずれを減らせます。改善後の業務フロー図を描いてから、ツールや仕組みを選ぶ順番が基本です。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社Sei San Sei CEO。半導体商社での技術提案、リクルートでの製造業向け採用支援・RPO推進を経て、ITベンチャー取締役・人事責任者を歴任。2023年にSei San Seiを設立し、大手製造メーカーをはじめ累計30社以上の採用・業務改善支援を手掛ける。「現場の技術理解」と「採用・組織作り」の双方に強いノウハウを持つ。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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