QC工程表の作り方|製造業の書き方と記載項目、工程フロー図・作業標準書との違い、現場で使われる7つの手順と記入例
「QC工程表は取引先に出すために作ったけれど、現場では誰も見ていない」「不良が出るたびに検査項目を足していったら、何が大事なのか分からなくなった」。中小工場で品質管理の仕組みを見直すと、こうした声がよく聞かれます。新規取引の立ち上げや監査の前にあわてて作り、その後は更新されないままになっているケースも少なくありません。
QC工程表は本来、材料の受け入れから出荷までのどの工程で、何を、どの基準で、どうやって管理するかを1枚で見渡すための表です。うまく作れば、品質管理の抜けや重複が見え、検査のやりすぎを減らし、不良が出たときにどこで止めるべきだったかをすぐに振り返れるようになります。
この記事では、QC工程表と似た文書との違い、形だけになる原因、記載すべき項目と記入例、現場で使われるQC工程表を作る7つの手順、運用とデジタル化のポイントを、中小製造業の現場を前提に整理します。
QC工程表とは|工程フロー図・作業標準書・検査基準書との違い
QC工程表(品質管理工程表)とは、製品が材料から完成品になるまでの工程の流れに沿って、工程ごとの管理項目・管理方法・担当・記録・異常時の処置を一覧にした表です。工程管理表、品質管理工程図などと呼ぶ会社もあります。目的は、品質を検査で選別するのではなく、工程でつくり込むための管理の全体像を決めておくことです。似た文書との違いは次のとおりです。
- 工程フロー図:材料が切断・加工・組立・検査を経て製品になるまでのモノの流れを図にしたもの。QC工程表の左端の列に置かれる、管理の「骨格」にあたる。
- QC工程表:工程フローの各工程に、何を(管理項目)、どの基準で(規格値)、どうやって・どのくらいの頻度で(管理方法)、誰が確認し、どこに記録するかを書き込んだもの。品質管理の全体設計図。
- 作業標準書:1つの作業について、やり方・急所・作業条件を詳しく定めたもの。QC工程表から文書番号で参照される側の書類。
- 検査基準書:検査項目ごとの判定基準・測定方法・限度見本などを詳しく定めたもの。QC工程表の検査工程から参照される。
つまりQC工程表は、工程全体を横串で俯瞰する目次であり、各工程の詳しいやり方は作業標準書や検査基準書に任せる、という関係です。自動車部品メーカーで求められるコントロールプラン(管理計画書)も考え方は近く、IATF 16949の要求に沿って項目を増やしたものと捉えると理解しやすいでしょう。なお、受注や手配など情報と人の流れを描く業務フロー図は別物で、その違いは製造業の業務フロー図の書き方で解説しています。
QC工程表が形だけになる5つの原因
1. 取引先や監査に出すためだけに作っている
提出することが目的になると、見栄えのよい項目が並ぶ一方で、現場が実際に何を測り、どこに記録しているかとずれていきます。現場の帳票と結びついていないQC工程表は、作った日から使われなくなります。
2. 管理項目が多すぎて、重要なものが埋もれている
不良が出るたびに項目を足し、削ることがないと、すべての寸法・すべての外観を同じ重さで管理する表になります。限られた人手では全部を守れず、結果として重要な特性の管理まで甘くなります。
3. 製品の特性しか書かれていない
寸法や外観といった結果(製品特性)だけを並べ、温度・圧力・トルク・刃物の摩耗といった原因側の条件(工程条件)を管理していないケースです。これでは不良を後から見つけることはできても、不良をつくらない管理になりません。
4. 異常が出たときの処置が書かれていない
「規格外が出たらどうするか」が決まっていないと、現場は手直しして流す、上司に聞くまで止める、など人によって対応がばらつきます。誰に連絡し、どこまで遡って確認するかが決まっていないことが、流出不良の原因になります。
5. 設備・材料・工法を変えても改訂されない
設備の更新や材料の変更、外注先の切り替えがあっても表が直されないと、実態との差が広がり、表そのものが信用されなくなります。改訂の担当とタイミングが決まっていないことが根本の原因です。
QC工程表の記載項目と記入例
QC工程表の様式は会社や業界によってさまざまですが、中小工場でまず押さえたいのは次の項目です。ヘッダーに製品名・品番・図面番号・文書番号・版数・制定日と改訂日・作成者と承認者を書き、本体を工程ごとの行で構成します。
- 工程番号と工程名:工程フロー図と同じ番号を振る。受入・加工・組立・検査・梱包まで漏れなく
- 使用設備・治具・測定器:どの設備で行う工程かを明示する
- 管理項目(製品特性・工程条件):その工程で守るべき寸法・外観などの特性と、温度・トルクなどの条件
- 規格値・管理値:図面公差や条件の上限・下限。数値で書く
- 管理方法:測定方法と測定器、頻度とサンプル数(全数・始業時・n=5/ロットなど)
- 担当:作業者・検査員・班長など、誰が確認するか
- 記録帳票:チェックシート・検査記録・日報など、結果を残す場所
- 異常時の処置:停止・連絡先・隔離・遡り確認の範囲
- 関連文書:作業標準書・検査基準書の文書番号
- 重要度:重要特性に印を付け、管理の重さを区別する
金属部品の機械加工を例にすると、記入のイメージは次のようになります(数値は説明のための例です)。
| 工程 | 管理項目 | 規格値 | 管理方法・頻度 | 担当・記録 | 異常時の処置 |
|---|---|---|---|---|---|
| 10 材料受入 | 材質・外径 | ミルシート一致、φ30±0.2 | ミルシート照合、ノギスで1本/ロット | 資材担当・受入記録 | 保留札を付けて隔離、購買へ連絡 |
| 20 旋削 | 外径(重要)・全長 | φ25 0/−0.02、L50±0.1 | マイクロメータで初品・2時間ごと・終品 | 作業者・チェックシート | 設備停止、前回確認以降を全数再検査、班長へ連絡 |
| 20 旋削 | 工程条件:刃物の使用数 | 500個で交換 | カウンタ確認、交換ごと | 作業者・刃物交換記録 | 交換して初品を再確認 |
| 30 穴あけ | 穴位置・穴径 | 図面公差どおり | 専用ゲージで全数(通り・止まり) | 作業者・チェックシート | 不良品を赤箱へ隔離、原因確認まで停止 |
| 40 最終検査 | 外観(キズ・バリ)・寸法 | 検査基準書・限度見本による | 外観は全数目視、寸法はn=5/ロット | 検査員・検査成績書 | ロット保留、品質担当が判定 |
| 50 梱包・出荷 | 数量・現品票・品番 | 出荷指示どおり | 現品票と指示書の照合、全箱 | 出荷担当・出荷記録 | 出荷停止、営業へ連絡 |
ポイントは、旋削工程のように製品特性(外径)と工程条件(刃物の使用数)を両方書くことと、異常時の処置に「どこまで遡って確認するか」を入れることです。これだけで、不良を出さない管理と、出たときに外へ流さない管理の両方が表の上で見えるようになります。
QC工程表の作り方|現場で使われる7つの手順
手順1:対象製品を決め、工程フローを洗い出す
最初から全製品の表を作る必要はありません。不良やクレームが多い製品、出荷量が多い主力製品、新規に立ち上げる製品から1つ選びます。次に、材料の受け入れから出荷まで、実際に現場を歩いて工程を順に書き出します。外注工程、手直し、一時保管、工程間の運搬も1つの工程として書き出すのがコツで、ここで抜けた工程は管理からも抜けます。
手順2:工程ごとに品質特性と工程条件を洗い出す
工程ごとに、その工程で作り込まれる製品特性(寸法・外観・強度など)と、それを左右する工程条件(温度・圧力・トルク・速度・刃物や型の状態など)を書き出します。図面の寸法や客先の仕様書、過去の不良記録、ベテランへの聞き取りが材料になります。原因側の条件を洗い出すときは、人・機械・材料・方法の4Mで考えると漏れが減ります。4Mの考え方は製造業の不良率を下げる方法で詳しく解説しています。
手順3:重要度を付けて、管理項目を絞り込む
洗い出した項目をすべて同じ重さで管理すると、手が回りません。客先が指定した重要特性、安全や機能に関わる特性、過去に不良やクレームが出た特性に印を付け、重点的に管理します。それ以外は、設備や治具で保証できるなら頻度を下げる、後工程の検査でまとめて確認するなど、管理の重さに差を付けます。項目を絞る判断に迷うときは、不良の件数や影響の大きさをパレート図で並べると決めやすくなります。
手順4:規格値・測定方法・頻度・担当・記録を決める
絞り込んだ管理項目ごとに、規格値、測定方法と測定器、頻度とサンプル数、担当、記録する帳票を決めて記入します。頻度は「初品・中間・終品」「段取り替えのたび」「2時間ごと」のように、現場が守れる単位で決めます。記録帳票は、すでに使っているチェックシートや日報と項目を合わせ、QC工程表にあるのに帳票がない、帳票にあるのにQC工程表にない、という状態をなくします。
手順5:異常時の処置を決める
規格外や異常が見つかったときの処置を、工程ごとに具体的に書きます。基本は止める・呼ぶ・待つです。設備を止める、班長や品質担当を呼ぶ、判断が出るまで勝手に手直しせず待つ。そのうえで、不良品の隔離場所、前回の確認以降に作ったものをどこまで遡って再検査するか、記録の残し方を決めます。再発防止まで進める手順は是正処置の進め方を参考にしてください。
手順6:現場で検証し、作業標準書・検査基準書とつなぐ
下書きができたら、現場のリーダーと作業者と一緒に、表のとおりに測れるか、その頻度で回るかを実際のラインで確かめます。測定器が工程にない、記録する時間がない、といった問題はこの段階で直します。あわせて、各工程の詳しいやり方を定めた作業標準書や、判定基準を定めた検査基準書の文書番号を記入し、QC工程表から迷わずたどれるようにします。作業標準書がまだない工程は、作業標準書の作り方を参考に重要な工程から整えていきます。
手順7:承認して版管理し、改訂のルールを決める
品質の責任者が承認し、版数と制定日を付けて発行します。あわせて改訂のルールを決めておきます。設備・治具・材料・工法・外注先の変更(変化点)、不良やクレームの発生、客先の仕様変更があったときは必ず見直し、改訂日と理由を記録して、古い版は回収します。版管理の仕組みは、ISO文書管理をDXで効率化の方法と同じ考え方で運用できます。
QC工程表を生かす運用とデジタル化
QC工程表を生かすには、使う場面を決めておくことが欠かせません。新しい製品の立ち上げ時には、QC工程表をもとに量産前の確認を行います。不良が出たときは、まず「QC工程表のどの工程で止められたはずか」「管理項目・頻度・処置のどこが足りなかったか」を確認し、必要なら表を改訂します。新人や異動者には、担当する工程の行を見せながら、何を守るべきかを説明すると全体像をつかみやすくなります。ISO 9001を運用している会社では、製造の管理や監視・測定の計画を示す文書としても活用できます。ISO 9001の全体像はISO 9001とはを参考にしてください。
紙やExcelのQC工程表は、改訂のたびに配布と回収が必要で、帳票との項目のずれも起きやすくなります。QC工程表の管理項目と検査記録・チェックシートを同じデータで結び、タブレットで測定値を入力できるようにすると、規格外の値が入力された時点で担当者に知らせたり、工程ごとの不良の傾向をすぐに集計したりできます。紙の記録をなくす進め方は製造業のペーパーレス化事例を、現場の記録をデータにする方法は製造業の日報を電子化する手順を参考にしてください。
まとめ:QC工程表は、管理項目を絞り、帳票と異常時の処置までつなげて生かす
- QC工程表は、工程の流れに沿って管理項目・管理方法・担当・記録・異常時の処置を一覧にした、品質管理の全体設計図
- 工程フロー図は骨格、作業標準書と検査基準書は各工程の詳細。QC工程表はそれらを横串でつなぐ目次の役割
- 形だけになる原因は、提出目的、項目過多、製品特性のみ、異常時処置の欠落、改訂されないの5つ
- 手順は、工程フローの洗い出し→特性と条件の洗い出し→重要度で絞り込み→管理方法の決定→異常時の処置→現場検証と関連文書の紐付け→承認・版管理と改訂ルールの7つ
- 立ち上げ・不良の振り返り・教育で必ず使い、記録とデータでつなげると生きた表になる
QC工程表は、一度に全製品を作る必要はありません。まずは不良やクレームの多い製品を1つ選び、現場を歩いて工程フローを書き出すところから始めてみてください。製造業の現場改善の全体像は製造業の生産性向上|現場改善の具体策を、生産性向上の考え方は生産性完全ガイドを、製造業に絞った進め方は製造業のDX・生産性向上ガイドを参考にしてください。
株式会社Sei San Seiでは、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERPであるMINORI Cloud 製造業版を提供しています。製造・建設・福祉に最適化された13モジュールで、QC工程表や作業標準書の版管理、検査記録や不良の記録をひとつにまとめ、品質管理を仕組みとして回す取り組みを支援します。「まずはQC工程表の様式づくりから相談したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. QC工程表とは何ですか?
QC工程表(品質管理工程表)とは、製品が材料から完成品になるまでの工程の流れに沿って、工程ごとの管理項目・規格値・管理方法・担当・記録帳票・異常時の処置を一覧にした表です。品質を検査で選別するのではなく、工程でつくり込むための管理の全体像を1枚で見渡せるようにすることが目的です。
Q2. QC工程表と作業標準書の違いは何ですか?
QC工程表は、材料受入から出荷までの全工程を横串で俯瞰し、どの工程で何をどう管理するかを一覧にした表です。作業標準書は、1つの作業について、やり方・急所・作業条件を詳しく定めた文書です。QC工程表から作業標準書の文書番号を参照し、各工程の詳しいやり方は作業標準書に任せるという関係になります。
Q3. QC工程表にはどんな項目を書けばよいですか?
ヘッダーに製品名・品番・図面番号・文書番号・版数・作成者と承認者を書き、本体には工程番号と工程名、使用設備、管理項目(製品特性と工程条件)、規格値、管理方法と頻度、担当、記録帳票、異常時の処置、関連文書、重要度を工程ごとに記入するのが基本です。
Q4. QC工程表とコントロールプランの違いは何ですか?
どちらも工程ごとの管理項目と管理方法を定めた表で、考え方は近いものです。コントロールプラン(管理計画書)は主に自動車業界でIATF 16949などの要求に沿って使われ、特性の分類や反応計画などの記載が求められます。自動車部品以外の中小工場では、まずQC工程表として整え、取引先の要求に応じて項目を追加するのが現実的です。
Q5. QC工程表はいつ見直せばよいですか?
設備・治具・材料・工法・外注先の変更といった変化点があったとき、不良やクレームが発生したとき、客先の仕様変更があったときには、その都度見直すのが基本です。あわせて年1回程度の定期的な見直しを行い、改訂日と改訂理由を記録して、古い版を回収し最新版だけが使われる状態を保ちます。