生産性 2026.10.06

段取り替え時間の短縮方法|内段取りの外段取り化から始めるSMEDの手順と、中小工場の改善例

段取り替え時間の短縮方法|製造業のSMED手順

金型を外し、次の金型を取りに倉庫へ歩き、合う工具を探し、取り付けてから試し打ちと調整を繰り返す。その間、設備はずっと止まっています。多品種少量の中小工場では、1日の稼働時間のうち段取り替えが大きな割合を占めていることが珍しくありません。それでも「段取りは仕方ない時間」として、改善の対象から外されがちです。

しかし、段取り替えの中身を分解してみると、設備を止めなくてもできる作業が驚くほど多く混ざっています。工具の準備、材料の運搬、図面の確認。これらを設備が動いているうちに済ませるだけで、停止時間は大きく縮みます。設備投資をしなくても始められる、最も効果の出やすい現場改善の一つです。

この記事では、段取り替えの基本である内段取りと外段取りの違い、段取りが長くなる原因、SMED(シングル段取り)の考え方に沿った6つのステップ、工程別の改善パターンと効果の測り方を、中小工場の現場を前提に整理します。

段取り替えとは|内段取りと外段取りの違い

段取り替えとは、生産する製品を切り替えるときに、金型・刃物・治具の交換、材料の入れ替え、加工条件の設定、試し加工と調整を行う一連の作業です。段取り時間は、一般に前の製品の最後の良品が出てから、次の製品の最初の良品が出るまでの時間で測ります。取り付けが終わった時点ではなく、良品が出るまでの調整も含める点が重要です。

段取り作業は、次の2つに分けて考えます。

  • 内段取り:金型の交換、刃物の取り付け、位置合わせなど、設備を止めないとできない作業。この時間がそのまま設備の停止時間になります。
  • 外段取り:次に使う工具・治具・金型の準備、材料の運搬、図面や条件表の確認、予熱など、設備を動かしたままできる作業。

段取り時間の短縮の基本は、内段取りの中に紛れ込んでいる外段取りを見つけ、設備が動いているうちに済ませることです。この考え方を体系化したのが、シングル段取り(SMED:Single Minute Exchange of Die)です。段取り時間を10分未満の一桁分に縮めることを目標にした手法で、プレスの金型交換から生まれましたが、成形、切削、組立、包装など、ほとんどの工程に応用できます。

段取り時間は、設備の稼働率やOEE(設備総合効率)を下げる大きな要因です。計算方法は製造業の生産性向上指標で解説していますが、OEEを分解したときに時間稼働率が低い設備は、段取り改善の効果が特に大きくなります。

段取り替えが長くなる5つの原因

段取りが長い工場には、共通する原因があります。自社の段取りを思い浮かべながら確認してください。

1. 設備を止めてから準備を始めている

前の製品が終わってから、次の金型を倉庫に取りに行き、工具を集め、図面を確認する。外段取りでできる作業が内段取りの中で行われているため、その分だけ停止時間が延びています。最も多く、最も改善しやすい原因です。

2. 探す・運ぶ時間が多い

工具や治具の置き場が決まっていない、金型の保管場所が設備から遠い、必要な部品が欠品している。段取りを動画で撮ると、作業者が設備から離れて歩いている時間の長さに驚くことがよくあります。

3. 締結・取り付けに手間がかかる

多数のボルトを1本ずつ締める、金型ごとに取付高さが違うためシムで調整する、工具の種類がばらばらで持ち替えが多い。取り付けの仕組みそのものが、時間のかかる構造になっています。

4. 試し加工と調整を繰り返している

取り付けた後に、試し打ちをして寸法を測り、少しずつ位置や条件を動かす。この「調整」が段取り時間の半分近くを占めることもあります。基準となる位置や条件が決まっておらず、毎回感覚で合わせていることが原因です。

5. 段取りがベテランの経験に頼っている

手順や条件が文書になっておらず、人によって段取り時間が倍以上違う。ベテランが休むと段取りが進まない。段取りは、工場の属人化が最も表れやすい業務の一つです。属人化の全体像と解消の進め方は製造業の属人化を解消する方法で整理しています。

段取り替え時間を短縮する6つのステップ

ステップ1:対象設備を1台に絞り、動画で現状を測る

最初の1台は、段取り回数が多く、止まると後工程まで止まるボトルネック設備から選びます。設備ごとに「1回の段取り時間 × 月間の段取り回数」を出すと、段取りでどれだけ止まっているかを比べられます。対象を決めたら、段取り替えをスマートフォンで最初から最後まで撮影します。ストップウォッチで測るより現場の負担が小さく、後から何度でも見返せます。撮影の目的は作業者の評価ではなく手順の改善だと、事前に伝えておくことが大切です。

ステップ2:作業を書き出し、内段取りと外段取りに分ける

動画を見ながら、作業を1行ずつ書き出し、それぞれにかかった時間を付けます。「金型を取りに行く」「ボルトを外す」「試し打ちをする」といった粒度です。次に、各作業が設備を止めないとできないかを判断し、内段取りと外段取りに分類します。作業者と一緒に動画を見ながら分類すると、「これは前もってできる」という気づきが現場から出てきます。

ステップ3:内段取りを外段取りに移す

外段取りに分類された作業を、すべて設備の停止前に済ませるよう順番を組み替えます。次の金型・治具・工具・材料を設備の横に揃えておく、金型を予熱しておく、図面と加工条件を確認しておく、といった作業です。このステップは設備や治具に手を加えないため費用がほとんどかからず、それでいて効果が最も大きいことが多いのが特徴です。

ステップ4:残った内段取りを短くする

設備を止めないとできない作業そのものを短くします。代表的な打ち手は次の4つです。

  • 締結のワンタッチ化:ボルトの本数を減らす、クランプやレバー式に変える、ボルト穴をU字穴にして完全に抜かずに着脱できるようにする。
  • 高さ・位置の統一:金型や治具の取付高さを揃え、シム調整をなくす。位置決めピンで一発で位置が決まるようにする。
  • 調整レス化:基準ブロック、ストッパー、目盛り、条件の数値化によって、試し加工の繰り返しを減らす。
  • 並行作業:1人で設備の前後を往復していた作業を、2人で分担して同時に進める。

ステップ5:外段取りも短くする

外段取りは停止時間には直接響きませんが、時間がかかると準備が間に合わず、結局設備を待たせることになります。段取りに使う工具・治具・部品を1セットにまとめた段取り台車、金型や治具の置き場の定位置化と表示、準備漏れを防ぐ段取りチェックリストで、探す・運ぶ・忘れるを減らします。5Sの取り組みと組み合わせると効果が上がります。

ステップ6:標準化して記録し、他の設備に広げる

改善した手順は、写真付きの段取り手順書と、製品ごとの加工条件表にまとめます。あわせて、段取り時間を毎回記録します。紙の日報に書くだけでは集計されないまま埋もれがちなので、製造業の日報を電子化する手順と合わせて、段取りの開始と終了を記録できるようにしておくと、効果の確認と次の改善点の発見が楽になります。最初の1台で手順書の型ができたら、同じ進め方で他の設備に展開します。

工程別の改善パターン

段取りの中身は工程によって違いますが、改善の打ち手にはパターンがあります。自社の工程に近いものを参考にしてください。

  • プレス加工:金型の取付高さを統一してシム調整をなくす、金型を設備横の台車で待機させる、クランプを油圧やレバー式に変える。ステップ3と4の効果が最も出やすい工程です。
  • 樹脂の射出成形:次の金型を事前に予熱しておく、材料の乾燥を前もって済ませる、温調機や取り出し機の配管をカプラーでワンタッチ化する。
  • NC旋盤・マシニングセンタ:工具を機外でプリセットしておく、加工プログラムと工具の組み合わせを製品ごとに登録する、治具をパレット化して機外で段取りする。
  • 組立・包装ライン:品種ごとの部品と資材をキット化して事前に配膳する、ガイドの幅を目盛りやストッパーで一発で合わせる、品種切り替えの手順をライン全員で分担する。

こうした改善のアイデアは、現場の作業者から出てくるものが最も実用的です。改善提案の集め方と例文は工場の業務改善 具体例30選で紹介しています。

効果の測り方|段取り時間だけを見ない

改善の効果は、次の4つの数字で確認します。

  • 1回あたりの段取り時間:前の製品の最後の良品から次の製品の最初の良品まで。改善の直接の成果です。
  • 月間の段取りによる停止時間:段取り時間 × 段取り回数。回数が増えていないかもあわせて確認します。
  • 設備稼働率・OEE:段取りの短縮が、設備が動いている時間の増加につながっているか。
  • ロットサイズと在庫:段取りが短くなった分、ロットを小さくして仕掛品・製品在庫を減らせているか。

段取り時間の短縮で生まれた時間を、単に生産量を増やすことに使うか、ロットを小さくして在庫と納期を改善することに使うかは、工場の状況によって判断が分かれます。多品種少量で短納期の注文が増えている工場ほど、後者の効果が大きくなります。工程計画への反映は製造業の工程管理をExcelから移行する手順も参考にしてください。

日本生産性本部などの調査でも、日本の製造業の労働生産性向上は継続的な課題とされています。段取り改善は、大きな設備投資なしに時間当たりの付加価値を上げられる、中小工場にとって取り組みやすい打ち手です。

段取り改善のつまずきと対策

一度は短くなったのに、元に戻る

改善した直後は意識されていても、数か月経つと元のやり方に戻ってしまう。手順書がない、段取り時間を記録していない、の2つが主な原因です。手順書を設備の横に置き、段取り時間を毎回記録して、朝礼や週次の打ち合わせで数字を見る習慣を作ります。

ベテランが自分のやり方を変えたがらない

長年の経験で築いた手順を否定されると感じると、協力が得られません。改善の目的は「ベテランのやり方を誰でもできるようにすること」だと伝え、動画の分析や手順書づくりの中心をベテランに担ってもらいます。ベテランの知恵を手順書に残す役割として位置づけると、前向きに関わってもらいやすくなります。手順書と合わせて、誰がどの設備の段取りをできるかを製造業のスキルマップで見える化すると、教える計画も立てやすくなります。

改善が1台で止まってしまう

最初の設備で成果が出ても、担当者が通常業務に戻ると横展開が止まります。改善の対象設備と期限を年間の計画に入れ、1台ごとに「改善前後の段取り時間」を掲示して成果を見えるようにすると、次の設備への展開が進みやすくなります。

まとめ:段取り改善は、止めずにできる作業を探すことから

  • 段取り時間は、前の製品の最後の良品から次の製品の最初の良品までで測る。調整の時間も含める
  • 設備を止めないとできない内段取りと、動かしたままできる外段取りに分けるのが出発点
  • 手順は、動画で現状を測る→内外に分ける→外段取り化→内段取りの短縮→外段取りの短縮→標準化と記録の6ステップ
  • 最も費用がかからず効果が大きいのは、内段取りに紛れた準備作業を停止前に済ませること
  • 効果は段取り時間だけでなく、停止時間の合計・設備稼働率・ロットサイズと在庫で確認する

段取り替えが長いのは、作業者の腕の問題ではなく、手順と準備の仕組みの問題です。動画を1本撮って作業を書き出すだけでも、止めずにできる作業が必ず見つかります。生産性向上の全体像は生産性完全ガイドを、製造業に絞った進め方は製造業のDX・生産性向上ガイドを参考にしてください。

株式会社Sei San Seiでは、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERPであるMINORI Cloud 製造業版を提供しています。製造・建設・福祉に最適化された13モジュールで、作業実績・工程・設備の情報をひとつにまとめ、段取り時間や稼働状況の記録を改善に活かせる形で残せます。「段取り時間の記録から始めたい」「手順書の整備を相談したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. 内段取りと外段取りの違いは何ですか?

内段取りは、金型の交換や刃物の取り付けなど、設備を止めないとできない段取り作業です。外段取りは、工具や治具の準備、材料の運搬、次の製品の図面確認など、設備を動かしたままできる作業です。段取り時間の短縮では、まず内段取りに混ざっている外段取りを見つけ、設備が動いているうちに済ませることが最初の打ち手になります。

Q2. SMEDとは何ですか?

SMEDは Single Minute Exchange of Die の略で、日本ではシングル段取りとも呼ばれます。段取り替えにかかる時間を10分未満の一桁分に縮めることを目標にした改善手法で、内段取りと外段取りを分ける、内段取りを外段取りに移す、残った内段取りと外段取りをそれぞれ短くする、という順番で進めます。プレス金型の交換から生まれましたが、成形、切削、組立、包装など幅広い工程に使えます。

Q3. 段取り時間はどのように測ればよいですか?

前の製品の最後の良品が出た時点から、次の製品の最初の良品が出た時点までを段取り時間として測るのが一般的です。試し打ちや寸法調整の時間も含めることで、実際の停止時間が見えます。最初は段取り替えをスマートフォンで動画撮影し、後から作業ごとの時間を書き出すと、現場の負担を増やさずに正確な現状を把握できます。

Q4. 段取り替えの改善はどの設備から始めるべきですか?

段取り回数が多く、その設備が止まると後工程まで止まってしまうボトルネック設備から始めるのが効果的です。段取り時間 × 月間の段取り回数で、設備ごとの段取りによる停止時間を比べると優先順位が付けやすくなります。最初の1台で成果と手順書の型を作ってから他の設備へ広げると、現場の納得も得やすくなります。

Q5. 段取り時間を短縮すると、どのような効果がありますか?

直接の効果は設備稼働率の向上と、段取りに伴う残業の削減です。さらに、段取りが短くなるとロットを小さくしても生産性が落ちにくくなるため、仕掛品や製品在庫を減らし、多品種少量や短納期の注文に対応しやすくなります。段取り手順が標準化されることで、特定のベテランしか段取りできないという属人化の解消にもつながります。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社Sei San Sei CEO。半導体商社での技術提案、リクルートでの製造業向け採用支援・RPO推進を経て、ITベンチャー取締役・人事責任者を歴任。2023年にSei San Seiを設立し、大手製造メーカーをはじめ累計30社以上の採用・業務改善支援を手掛ける。「現場の技術理解」と「採用・組織作り」の双方に強いノウハウを持つ。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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