FMEAとは|製造業の故障モード影響解析のやり方と、設計FMEA・工程FMEAの違い、影響度・発生度・検出度の評価基準とRPNの計算例、現場で使える6つの手順
「取引先からFMEAの提出を求められたが、何から書けばいいかわからない」「様式は埋めたが、点数をつけて終わりになっている」「FMEAでは低リスクと評価していた工程から、結局クレームが出た」。中小製造業の品質担当者からよく聞く悩みです。FMEA(故障モード影響解析)は、不良やトラブルが起きる前に「どこで・どんな不具合が起こり得るか」を洗い出し、手を打つ順番を決めるための手法です。
起きた不良に対しては、不良率を下げるための原因分析や是正処置で再発を防ぎます。FMEAはその一歩手前で、まだ起きていない不良を、設計や工程の段階でつぶしておくための道具です。ただし、書類を埋めること自体が目的になると、手間ばかりかかって現場は何も変わりません。
この記事では、FMEAの意味と目的、設計FMEAと工程FMEAの違い、FTAなど似た手法との違い、影響度・発生度・検出度の評価基準とRPN(リスク優先数)の計算例、形骸化する4つの理由、そして中小工場で工程FMEAを現場で使える形にする6つの手順を、記入例つきで整理します。
FMEAとは|故障モード影響解析の意味と目的
FMEAはFailure Mode and Effects Analysisの略で、日本語では「故障モード影響解析」と呼ばれます。製品の部品や製造工程の一つひとつについて、起こり得る不具合の形(故障モード)を挙げ、それが起きたときに後工程やお客様にどんな影響が出るか、なぜ起こるか(原因)を整理し、リスクの大きいものから対策を打つ手法です。
もともとは1940年代末に米国の軍で手順が定められ、その後、航空宇宙や自動車の分野に広まりました。現在では自動車部品メーカー向けの品質マネジメント規格であるIATF 16949で、APQP・PPAP・MSA・SPCと並ぶコアツールの一つとして使われており、自動車関連の取引では提出を求められることが少なくありません。また、ISO 9001が求める「リスク及び機会への取組み」を工程の単位で具体化する方法としても活用できます。
FMEAで使う主な用語
| 用語 | 意味 | 工程の例(穴あけ工程) |
|---|---|---|
| 機能・要求 | その部品や工程が果たすべき役割と、満たすべき特性 | 図面どおりの径・位置に穴をあける |
| 故障モード | 機能・要求を満たせなくなる不具合の形 | 穴径が大きい、穴位置がずれる、穴があいていない |
| 影響 | 故障モードが後工程・お客様・最終製品に与える結果 | 組付けできない、ガタが出て機能が落ちる |
| 原因 | 故障モードが起きる理由 | ドリルの摩耗、段取り替え時のプログラム選択ミス |
| 予防管理・検出管理 | 原因の発生を防ぐ今の管理と、起きた不具合を見つける今の管理 | 刃具の交換基準、ゲージによる抜取り検査 |
設計FMEAと工程FMEAの違い、FTAとの違い
設計FMEA(DFMEA)と工程FMEA(PFMEA)
FMEAは、何を対象にするかで大きく2つに分かれます。
| 項目 | 設計FMEA(DFMEA) | 工程FMEA(PFMEA) |
|---|---|---|
| 対象 | 製品・部品の設計(形状、材料、寸法、公差など) | 製造工程(加工、組立、検査、運搬、保管など) |
| 考える問い | 図面どおりに作っても、使われ方によって壊れたり機能しなかったりしないか | 図面どおりに作れないこと、不良が流出することはないか |
| 主な担い手 | 設計・開発部門 | 生産技術・製造・品質保証部門 |
| つながる文書 | 図面、設計審査(デザインレビュー)の記録、試験計画 | 工程フロー図、QC工程表、作業標準書、検査基準書 |
図面を客先から支給される受託加工の会社では、設計FMEAを自社で作る場面は多くありません。中小製造業でまず取り組むべきなのは、工程FMEAです。この記事の手順や記入例も、工程FMEAを前提に説明します。
FTA・DRBFMとの違い
FMEAとよく比べられるのがFTA(Fault Tree Analysis:故障の木解析)です。FMEAは部品や工程という個々の要素から出発して、「これが壊れたら何が起きるか」を広く洗い出すボトムアップ型の手法です。一方のFTAは、「製品が動かない」のような起きてほしくない結果から出発して、その原因を木の枝のように掘り下げるトップダウン型の手法です。網羅的に漏れを探すならFMEA、重大な1つの事象の原因を深く追うならFTA、と使い分けます。
また、トヨタ自動車で生まれたDRBFM(Design Review Based on Failure Mode)は、FMEAの考え方を変更点・変化点に絞って使う手法です。すべてを一から評価するのではなく、「前回から何を変えたか」に集中して心配点を議論します。工程や材料の変更を日常的に管理する方法は、変化点管理とはで解説しています。
影響度・発生度・検出度の評価基準とRPNの計算例
FMEAでは、故障モードと原因の組み合わせごとに、次の3つを1〜10の10段階で評価するのが一般的です。
- 影響度(S:Severity):故障が起きたときの影響の大きさ。数字が大きいほど重大
- 発生度(O:Occurrence):原因が起きる可能性の高さ。数字が大きいほど起きやすい
- 検出度(D:Detection):今の検出管理で、流出前に見つけられるか。数字が大きいほど見つけにくい
評価基準の例(工程FMEA・簡略版)
| 点数 | 影響度(S) | 発生度(O) | 検出度(D) |
|---|---|---|---|
| 9〜10 | 安全や法規制に関わる | 予防策がなく、頻繁に起きる | 検出する手段がない |
| 7〜8 | 製品の主な機能が損なわれる。お客様のラインが止まる | 予防策が弱く、たびたび起きる | 目視や抜取り検査に頼っている |
| 4〜6 | 補助的な機能が落ちる。手直しや選別で対応できる | ときどき起きる | 測定器による検査で見つけられる |
| 2〜3 | 外観など軽微で、気づかれにくい | 予防策があり、まれにしか起きない | 自動検査・全数検査で見つけられる |
| 1 | 影響はない | 設計や仕組みで、ほぼ起きない | ポカヨケで確実に止まる |
上の表は考え方をつかむための簡略版です。実際の評価基準は自社の製品や不良の実績に合わせて具体的に定めるか、取引先から指定された基準表があればそれに従います。大切なのは、評価する人によって点数がぶれないように、基準を文書にしておくことです。
RPN(リスク優先数)の計算例
3つの点数を掛け合わせた値をRPN(Risk Priority Number:リスク優先数)と呼びます。最小は1、最大は1,000です。
RPN = 影響度(S)× 発生度(O)× 検出度(D)
機械加工の穴あけ工程を例にした、工程FMEAの記入例です。
| 故障モード | 影響 | S | 原因 | O | 現行の検出管理 | D | RPN | 対策と対策後 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 穴径が大きい | ガタが出て組付け後に機能が落ちる | 7 | ドリルの摩耗(交換は作業者の判断) | 5 | 2時間ごとにゲージで抜取り | 6 | 210 | 加工数で刃具の交換時期を決める(O→3)、交換直後と30個ごとに測定(D→4)。7×3×4=84 |
| 穴があいていない | お客様の組立ラインで組付けできず、ラインが止まる | 8 | 段取り替え時の加工プログラムの選択ミス | 3 | 最終検査で目視 | 7 | 168 | 治具に穴の有無を確認するセンサーを付け、なければ次工程に流れない(D→2)。8×3×2=48 |
| バリが残る | 組付け時に引っかかり、手直しが必要 | 4 | バリ取り工程の作業ばらつき | 6 | バリ取り後に作業者が目視と指で確認 | 5 | 120 | 作業標準書に確認箇所と限度見本を追加(O→4)。4×4×5=80 |
RPNだけで優先順位を決めない
RPNは便利ですが、掛け算のため中身が違っても同じ値になるという弱点があります。例えば「S=10・O=2・D=5」も「S=4・O=5・D=5」もRPNは100ですが、前者は安全に関わる重大な故障です。そのため多くの会社では、影響度が9以上のものはRPNにかかわらず必ず対策を検討するといったルールを合わせて決めています。
自動車業界では、2019年に発行されたAIAG(米国自動車産業協同体)とVDA(ドイツ自動車工業会)の共同FMEAハンドブックで、RPNに代わって措置優先度(AP:Action Priority)という考え方が採り入れられました。影響度を最も重く見ながらS・O・Dの組み合わせで優先度を「高・中・低」に分ける方法で、評価の手順も7つのステップ(計画と準備、構造分析、機能分析、故障分析、リスク分析、最適化、結果の文書化)に整理されています。取引先からこの様式を指定されている場合は、その版と評価表に合わせて作成してください。
FMEAが形骸化する4つの理由
1. 提出のための書類になっている
取引先に求められて作ったFMEAは、提出したあと誰も開かないことがよくあります。点数をつけて終わりで、対策欄が空欄のまま、あるいは「教育する」「注意する」だけが並んでいる状態です。FMEAの価値は、点数ではなく、決めた対策が現場で実施されているかにあります。
2. 過去のFMEAを使い回している
似た製品のFMEAをコピーして品番だけ変えると、その製品特有の工程や新しく入れた設備の故障モードが抜け落ちます。流用すること自体は効率的ですが、前回から何が変わったかを必ず確認する必要があります。
3. 1人で机の上だけで作っている
品質担当者が1人で作ると、現場で実際に起きているトラブルや、作業者が感じている「やりにくさ」が反映されません。故障モードと原因の洗い出しは、製造・生産技術・品質・保全など複数の部門で、できれば現場を見ながら行うのが基本です。
4. 不良やクレームが起きても更新されない
FMEAで発生度を「2」と評価していた不良が実際に起きたなら、評価が甘かったということです。それでもFMEAが作成時のまま放置されていると、同じ見落としが別の製品でも繰り返されます。不良・クレーム・変化点が起きたらFMEAを開き直すというルールがないことが、形骸化の大きな原因です。
工程FMEAを現場で使える形にする6つの手順
手順1:対象範囲・メンバー・評価基準を決める
最初から全製品・全工程に取り組むと、途中で止まります。新製品の立ち上げ、工程や設備の変更、不良やクレームの多い工程などから、対象を1つに絞ります。メンバーは製造・品質・生産技術・保全などから4〜6人程度を集め、進行役を決めます。そして作業に入る前に、影響度・発生度・検出度の評価基準表と、「影響度9以上は必ず対策」「RPNが一定以上は対策」などの対策を検討する条件を決めておきます。
手順2:工程フロー図で工程と機能を洗い出す
受入から出荷までの工程を、工程フロー図にそって並べます。運搬や一時保管、手直しの工程も忘れずに入れます。工程ごとに「何をするための工程か(機能)」と、その工程で満たすべき製品特性(寸法、外観など)と工程条件(回転数、温度、トルクなど)を書き出します。この一覧は、そのまま後でQC工程表の骨組みにもなります。
手順3:故障モード・影響・原因を書き出す
工程ごとに、機能が果たせなくなる形を故障モードとして挙げます。「寸法が大きい・小さい」「抜けている」「逆に付いている」「傷がつく」「混入する」など、不具合の現れ方で書くのがコツです。そのうえで、後工程・お客様・最終製品への影響と、原因を書き出します。原因は、過去の不良やクレームの記録、ヒヤリハット、人・設備・材料・方法の4Mの観点から探すと漏れが減ります。
手順4:現行の管理を確認し、影響度・発生度・検出度を評価する
原因ごとに、今やっている予防管理(発生を防ぐ管理)と検出管理(見つける管理)を書き、評価基準表に沿って3つの点数をつけます。点数は1人で決めず、メンバーで根拠を確認しながら決めます。発生度は、不良の実績データがあれば感覚より実績を優先します。最後にRPN、または取引先指定の措置優先度を求めます。
手順5:優先順位を決めて対策し、再評価する
影響度の高いものを最優先に、対策を検討します。対策は、まず発生を防ぐ(Oを下げる)、次に確実に見つける(Dを下げる)の順で考えます。「注意する」「教育する」は効果が続きにくいため、刃具の交換基準、治具の工夫、ポカヨケ、全数検査の自動化など、仕組みで防ぐ対策を優先します。対策ごとに担当者と期限を決め、実施したら点数をつけ直して効果を確認します。影響度は設計を変えない限り下がらない点にも注意してください。
手順6:QC工程表・作業標準書に反映し、変化のたびに見直す
FMEAで決めた管理方法は、それだけでは現場に届きません。管理項目・頻度・異常時の処置はQC工程表に、作業のポイントや確認の仕方は作業標準書に反映して、はじめて日々の作業に入ります。あわせて、不良・クレームの発生、工程や設備の変更、設計変更のときにはFMEAを開き直して更新する、という運用ルールを決めておきます。変更後に量産へ移る前には、変更した特性を初物管理(初品検査)で重点的に確認すると、FMEAで想定した不具合が実際に出ていないかを確かめられます。ルールがあれば、FMEAは作って終わりの書類ではなく、工場の失敗と対策が蓄積していく知識の台帳になります。
FMEAの運用を続けるための工夫
- 様式はシンプルに始める:取引先の指定がなければ、工程・機能・故障モード・影響・S・原因・O・現行管理・D・RPN・対策・担当・期限・対策後の点数があれば十分です。
- 不良の分析結果をFMEAに戻す:QC七つ道具で絞り込んだ原因や、是正処置で決めた対策を、該当する行に追記します。
- 製品ごとではなく工程ごとに共通部分をつくる:同じ設備・同じ加工方法の工程は、共通のFMEAをひな形にし、製品ごとの違いだけを追加すると手間が減ります。
- 記録をつなげて管理する:FMEA・QC工程表・作業標準書・不良記録が別々のExcelに散らばっていると、更新漏れが起きます。どの文書が同じ工程を指しているかを、品番と工程番号でつないでおきます。
まとめ:FMEAは、点数をつけることではなく、対策を決めて工程に落とすこと
- FMEA(故障モード影響解析)は、起こり得る不具合の形とその影響・原因を洗い出し、リスクの大きいものから手を打つ未然防止の手法
- 設計を対象にする設計FMEAと、製造工程を対象にする工程FMEAがあり、中小製造業はまず工程FMEAから
- 影響度・発生度・検出度を1〜10で評価し、RPN=S×O×Dで優先順位をつける。ただし影響度の高いものはRPNにかかわらず対策する
- 形骸化の原因は、提出のための書類化、使い回し、1人での作成、不良が起きても更新しないことの4つ
- 手順は、対象と評価基準を決める→工程と機能の洗い出し→故障モード・影響・原因→現行管理と評価→対策と再評価→QC工程表・作業標準書への反映と見直し、の6つ
FMEAは、不良の多い工程を1つ選び、関係者で故障モードを書き出すところから始められます。工程の管理方法の決め方はQC工程表の作り方を、変更が入ったときの管理は変化点管理とはを、自動車部品の品質規格はIATF 16949とはを、生産性向上の考え方は生産性完全ガイドを、製造業に絞った進め方は製造業のDX・生産性向上ガイドを参考にしてください。
株式会社Sei San Seiでは、品質・ISOの運用を実務から支援するMINORI Advisoryで、FMEAやQC工程表の整備、評価基準づくり、取引先監査への準備をご相談いただけます。また、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERPであるMINORI Cloud 製造業版では、品質記録やISO文書を同じ仕組みの中で扱い、不良の記録と文書の更新をつなげて管理できます。「取引先からFMEAを求められたが、どう進めればよいか相談したい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. FMEAとは簡単にいうと何ですか?
FMEA(故障モード影響解析)は、製品の部品や製造工程ごとに、起こり得る不具合の形(故障モード)と、それが起きたときの影響、原因を洗い出し、リスクの大きいものから対策を打つ手法です。起きた不良に対処する是正処置とは違い、まだ起きていない不良を設計や工程の段階で防ぐ未然防止のための道具です。
Q2. 設計FMEAと工程FMEAはどちらから始めればよいですか?
図面を自社で描かない受託加工の会社や、中小製造業の多くは、工程FMEAから始めるのが現実的です。設計FMEAは製品の形状や材料、公差などの設計を対象にするため、設計部門を持つ会社が主に作ります。工程FMEAは、図面どおりに作れないことや不良の流出を防ぐもので、QC工程表や作業標準書にそのまま反映できます。
Q3. RPNはいくつ以上なら対策が必要ですか?
全業種共通の決まった基準値はなく、自社や取引先が定めた基準に従います。ただしRPNは掛け算のため、重大な故障でも値が小さくなることがあります。影響度が9以上のものはRPNにかかわらず必ず対策を検討する、といったルールを合わせて決めておくのが一般的です。自動車業界では措置優先度(AP)で判断する方法も使われています。
Q4. FMEAとFTAの違いは何ですか?
FMEAは部品や工程という個々の要素から出発し、それが故障したら何が起きるかを広く洗い出すボトムアップ型の手法です。FTA(故障の木解析)は、製品が動かないなどの起きてほしくない結果から出発し、その原因を木の枝のように掘り下げるトップダウン型の手法です。漏れなく洗い出すならFMEA、重大な事象の原因を深く追うならFTAと使い分けます。
Q5. FMEAはどのタイミングで見直せばよいですか?
新製品の立ち上げや工程・設備の変更の前に作成し、その後は不良やクレームが起きたとき、工程や設備、材料、作業方法を変えたとき、設計変更があったときに見直します。実際に起きた不良の発生度や検出度を評価し直し、決めた対策をQC工程表や作業標準書に反映することで、FMEAが現場で使われ続ける文書になります。