図面管理の方法|製造業の図番・版数(リビジョン)の付け方と改訂履歴、出図・旧版回収のルール、紙・共有フォルダから電子化して最新版だけを使う6つの手順
「現場に古い版の図面が残っていて、改訂前の寸法で加工してしまった」「共有フォルダに『最新』『最終』『修正2』と似た名前のファイルが並び、どれが正しいかわからない」「顧客から届いた図面と社内で描き直した図面が混ざっている」。中小製造業では、こうした図面まわりのトラブルをよく聞きます。図面は加工・検査・見積もり・購買のすべての出発点になるため、どの図面が最新かがあいまいなままだと、不良や手戻りが繰り返し起きます。
この記事では、図面を高価なシステムに頼らずに整理するための図面管理の方法として、図番と版数(リビジョン)の付け方、改訂履歴の書き方、出図と旧版回収のルール、共有フォルダのフォルダ構成の例、紙・共有フォルダから電子化する6つの手順を整理します。図面だけでなく作業指示書や帳票まで含めた脱・紙の全体像は製造業のペーパーレス化事例で、設計変更を部品表に反映する方法は部品表(BOM)の記事で解説しています。
図面管理とは|最新版の図面を、必要な人がすぐ使える状態に保つ仕組み
図面管理とは、製品や部品の図面を図番と版数で識別し、承認された最新版だけが必要な人にすぐ届く状態に保つ仕組みです。具体的には、図番の採番、版数の付け方、改訂履歴、作成・検図・承認の流れ、出図(図面を正式に発行して関係者へ渡すこと)と配布、旧版の回収、保管場所とアクセス権限といったルールで成り立ちます。
目的は大きく3つあります。1つめは旧版の図面による加工・検査のミスを防ぐこと、2つめは図面を探す時間を減らすこと、3つめはいつ、誰が、何を変えたかを後から確認できるようにすることです。3つめは、不良が出たときの原因調査や、取引先への説明でも役立ちます。
文書管理・部品表・PDMとの違い
品質マニュアルや手順書など社内文書全般の版と承認を扱うのが文書管理で、図面管理はその中でも図面に特化した仕組みです。図面にはCADの元データと出図したPDFの2つの形があること、顧客から支給される図面があること、部品表や作業指示と版を合わせる必要があることが、ほかの文書との違いです。PDM(製品データ管理)は、図面やCADデータ、部品構成などの設計情報をまとめて管理するシステムの総称で、図面管理をシステムで行う手段の1つと考えると整理しやすくなります。
図面管理でよく起きる5つの問題
- 旧版の図面で加工してしまう:改訂後も紙の旧版が機械の横に残り、改訂前の寸法で作ってしまう
- どれが最新かわからない:「最新」「最終」「修正版」などのファイル名が乱立し、更新日時を見ても判断できない
- 改訂が伝わらない:設計は図面を直したが、購買・製造・検査に知らせる手順がなく、一部の部署だけが古い図面で動く
- 図面がどこにあるかわからない:設計者個人のパソコンやメール添付にしかない図面があり、担当者が不在だと探せない
- 顧客支給図面と社内図面が混ざる:顧客の図番と社内の図番の対応がとれず、顧客側の改訂を見落とす
どれも、図面を描く技術の問題ではなく、識別・保管・伝達のルールがないことから起きています。逆に言えば、ルールを決めて守る仕組みをつくれば、システムを入れる前でも多くを防げます。
図面管理の基本ルール
最低限決めておきたいルールは次の7つです。紙でも共有フォルダでもシステムでも、考え方は変わりません。
| ルール | 決めること |
|---|---|
| 図番の採番 | 1つの図面に1つの番号を付ける方法。重複させない採番の台帳と担当者 |
| 版数(リビジョン) | 初版の表し方と、改訂のたびの上げ方。版数ではなく図番を変える条件 |
| 改訂履歴 | 改訂欄に残す項目(版数・日付・変更内容・理由・承認者) |
| 承認 | 作成・検図・承認の担当。承認前の図面を現場に出さない決まり |
| 出図と配布 | 承認後に誰へどう知らせるか。紙で配る場合の配布先の台帳 |
| 旧版の扱い | 回収・廃棄の方法と、履歴として残す旧版の保管場所と表示 |
| 保管場所と権限 | 正本を置く場所(1か所)と、更新・閲覧できる人の範囲 |
図番と版数の付け方の例
図番は、製品分類の記号と連番を組み合わせる方法がわかりやすく、たとえば「BR-0123」(BRはブラケット類)のように付けます。番号の中に意味を詰め込みすぎると、分類が変わったときに破綻しやすいため、分類記号+連番程度にとどめるのが無難です。版数は図番とは別に持ち、初版を「0」や「A」、改訂のたびに「1、2」や「B、C」と上げていきます。
迷いやすいのが、版数を上げるか、図番を変えるかの判断です。一般的には、改訂後の部品が改訂前の部品と置き換えて使える(互換性がある)なら版数を上げ、互換性がなくなるなら図番を変える、という基準がよく使われます。互換性のない部品を同じ図番のまま版数だけ上げると、在庫や部品表の中で新旧が区別できなくなるためです。
改訂履歴の書き方の例
以下は、図番BR-0123のブラケットを想定した説明用の例です。図面の表題欄の近くに改訂欄を設け、同じ内容を台帳にも残します。
| 版数 | 日付 | 変更内容 | 理由 | 承認 |
|---|---|---|---|---|
| A | (初版の日付) | 初版発行 | 新規 | 設計課長 |
| B | (改訂日) | 穴位置の寸法を変更(変更箇所に改訂記号Bを付記) | 相手部品との組付け不具合 | 設計課長 |
| C | (改訂日) | 表面処理の指示を追加 | 顧客からの仕様変更 | 設計課長 |
図面の中の変更箇所にも、三角で囲んだ改訂記号などで版数を付けておくと、現場の人がどこが変わったかをすぐ見つけられます。表題欄や改訂欄の書き方は、機械製図のJIS(JIS B 0001)などの製図の規格や、取引先の図面の様式に合わせると、社外とのやり取りでも混乱が起きにくくなります。
共有フォルダで図面を管理するときの構成例
図面の数や設計者が多くない段階なら、共有フォルダでも十分に管理できます。以下は説明用の構成例です。
- 01_正本(承認済み):承認済みの最新版PDFだけを置く。現場や購買はここだけを見る。更新できるのは設計担当のみ
- 02_作業中:設計者が作成・改訂中のCADデータと検図用のPDF。現場には公開しない
- 03_旧版:改訂で置き換えた旧版を履歴として保管。ファイル名の先頭に「旧版」と付けるなど、正本と見分けられるようにする
- 04_顧客支給図面:顧客から受け取った図面を、受け取った日付と顧客側の版数がわかる形で保管し、社内図番との対応表を置く
ファイル名は「図番_版数_品名.pdf」(例:BR-0123_C_ブラケット.pdf)のように、図番と版数を必ず入れるルールにします。「最新」「最終」といった言葉はファイル名に使わないと決めておくと、どれが最新かを名前で判断する習慣がなくなります。
紙・共有フォルダから図面を電子化して版管理する6つの手順
手順1:図面の現状を棚卸しする
紙の図面の保管棚、共有フォルダ、設計者個人のパソコン、メール添付など、図面がどこに何枚あるかを書き出します。あわせて、加工・検査・購買・営業など誰がどの場面で図面を使っているかも聞き取ります。同じ図面が複数の場所にある箇所や、版数のわからない図面には印を付け、優先して整理する対象にします。全部を一度に整理しようとせず、まず量産中の製品から始めると現実的です。
手順2:図番と版数のルールを決める
前の章の例を参考に、図番の採番方法、版数の付け方と上げる条件、ファイル名の付け方、顧客支給図面の扱いを1枚のルールにまとめます。既存の図面をすべて付け直すのは負担が大きいため、新しく作る図面と改訂する図面から新ルールを適用し、古い番号との対応表を残す進め方がおすすめです。
手順3:正本の保管場所とアクセス権限を決める
承認済みの最新版を置く「正本」の場所を1か所だけに決めます。作業中・承認済み・旧版を分け、正本は設計の担当者だけが更新でき、ほかの部署は閲覧のみという権限にします。図面は自社や取引先の技術情報でもあるため、社外への持ち出しやメール送付のルール、バックアップもこのときに決めておきます。
手順4:承認と出図の流れを決める
作成・検図・承認の担当を決め、承認されてはじめて正本に置く流れにします。改訂のときは、改訂履歴の記入に加えて、変更内容と切り替えの時期を関係部署に知らせる手順を決めます。仕掛品や在庫部品をどう扱うか、どのロットから新しい版で作るかといった切り替えの判断は、部品表や生産計画にも関わるため、部品表の設計変更ルールとあわせて決めておくと漏れが減ります。品質に影響する変更は、変化点管理の対象として扱い、変更後の最初の製品を確認します。
手順5:現場での閲覧方法を整え、紙の旧版を回収する
現場では、正本へのリンクや機械ごとに置いたタブレットで図面を見る方法に切り替えると、旧版が残る余地がなくなります。どうしても紙で配る場合は、配布先と部数を台帳で管理し、改訂のたびに旧版を回収して新しい版と差し替えます。回収できなかった紙には「旧版」と大きく表示して、使えないようにします。
手順6:定期的に点検し、部品表・生産管理とつなぐ
月に1回など時期を決めて、現場にある図面と正本の版数が一致しているかを照合します。ずれが見つかったら、どこで伝達が漏れたかを確認してルールを直します。さらに、図番を品目マスタや部品表、作業指示、作業標準書とつなぎ、作業指示に図番と版数を印字するようにすれば、指示と図面の版がずれない状態に近づきます。
図面管理システム(PDM)を検討する目安
共有フォルダとルールで回せるうちは、無理にシステムを入れる必要はありません。一方で、次のような状態になったら図面管理システムやPDMを検討する目安になります。
- 図面の数が多く、探す時間や照合の手間が目立ってきた
- 設計者が複数いて、同じ図面を同時に編集してしまうことがある
- CADデータの部品と組立の関係(どの組立図にどの部品図が使われているか)を管理したい
- 設計変更が多く、承認や関係部署への通知の漏れが起きている
- 部品表や生産管理システムと図面の版を自動でそろえたい
システムを選ぶ前に、ここまでの図番・版数・承認のルールを決めておくことが大切です。ルールがないままシステムに移すと、乱れた状態をそのまま移すことになります。製造業向けのクラウドサービスの選び方は製造業SaaSの記事も参考になります。
まとめ:図面管理は、図番・版数・正本1か所のルールから始める
- 図面管理は、図番と版数で図面を識別し、承認済みの最新版だけが必要な人にすぐ届く状態に保つ仕組み
- よく起きる問題は、旧版での加工、最新版の判別不能、改訂の伝達漏れ、所在不明、顧客支給図面の混在の5つ。原因は識別・保管・伝達のルールがないこと
- 図番は分類記号+連番程度にとどめ、互換性があれば版数を上げ、なければ図番を変える
- 共有フォルダでは、正本・作業中・旧版・顧客支給を分け、ファイル名に図番と版数を必ず入れる
- 手順は、棚卸し→図番と版数のルール→正本と権限→承認と出図→現場での閲覧と旧版回収→定期点検と生産管理との連携、の6つ
まずは量産中の製品から図面を1か所に集め、ファイル名に図番と版数を入れるところから始められます。生産性向上の考え方は生産性完全ガイドを、製造業に絞った進め方は製造業のDX・生産性向上ガイドを参考にしてください。
株式会社Sei San Seiでは、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERPであるMINORI Cloud 製造業版を提供しています。製造・建設・福祉に最適化された13モジュールで、図面や文書の版、品目・部品表、作業指示の情報をつなぎ、現場が最新の情報で動ける仕組みづくりを支援します。「まずは共有フォルダの図面のルールから整えたい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。
よくある質問
Q1. 図面管理とは何ですか?
図面管理とは、製品や部品の図面を、図番と版数で識別し、承認された最新版だけが必要な人にすぐ届く状態に保つ仕組みです。図番の採番、版数の付け方、改訂履歴、承認と出図、旧版の回収、保管場所とアクセス権限などのルールで成り立ちます。旧版の図面で加工してしまう不良や、図面を探す時間を減らすことが主な目的です。
Q2. 図面の版数(リビジョン)はどう付ければよいですか?
図番は変えずに、改訂のたびに版数を上げる方法が一般的です。初版を0やA、改訂ごとに1、2やB、Cと進め、図面の表題欄の近くにある改訂欄に、版数・日付・変更内容・承認者を記録します。形状や寸法が変わり互換性がなくなる変更は版数ではなく図番を変える、といった基準を社内で決めておくと迷いが減ります。
Q3. 共有フォルダでも図面管理はできますか?
図面の数や関係者が多くない段階なら、共有フォルダでも十分に管理できます。ポイントは、承認済みの正本フォルダを1か所に決めること、作業中・承認済み・旧版のフォルダを分けること、ファイル名に図番と版数を入れること、正本フォルダの更新権限を設計担当に絞ることの4つです。改訂の通知と旧版の移動を毎回同じ手順で行えば、最新版の取り違えはかなり防げます。
Q4. 図面管理と文書管理の違いは何ですか?
文書管理は、品質マニュアルや手順書、帳票など社内の文書全般の版と承認を管理するもので、ISO 9001の文書化した情報の管理とも関係します。図面管理はその中でも、製品や部品の形状・寸法を示す図面に特化し、図番と版数、CADデータと出図したPDFの関係、顧客支給図面、部品表や作業指示との版の一致まで扱う点が特徴です。
Q5. 図面管理システム(PDM)はいつ導入すべきですか?
図面の数が多く探す時間が目立つ、設計者が複数いて同じ図面を同時に編集してしまう、CADデータの部品と組立の関係を管理したい、設計変更が多く承認や通知の漏れが起きている、といった状態が導入を検討する目安です。システムを入れる前に、図番・版数・承認のルールを決めておくと、移行がスムーズになり、導入後も運用が定着しやすくなります。