生産性 2026.10.31

ワークサンプリングとは|製造現場の稼働率の調べ方と観測回数の計算例、連続観測法との違い、稼働分析をムダ削減につなげる6つの手順

ワークサンプリングとは|稼働率の調べ方と観測回数の計算例

「みんな忙しそうにしているのに、生産量が増えない」「人を増やしてほしいと言われるが、本当に足りないのか判断できない」「材料待ちや探し物が多い気はするが、どれくらいの時間なのか分からない」。中小製造業の経営者や工場長からよく聞く悩みです。現場の時間が実際に何に使われているかは、毎日見ているつもりでも、意外とつかめていません。

そこで使われるのがワークサンプリングです。作業者や設備の状態をランダムな時刻に「その瞬間だけ」観測し、回数を積み重ねて、作業・手待ち・運搬・打ち合わせなどの時間の割合を推定します。1人に張り付いて時間を測る方法に比べて手間が少なく、複数の作業者や設備をまとめて調べられるのが特長です。

この記事では、ワークサンプリングと稼働分析の意味、作業・余裕・非作業の分類、連続観測法との違い、必要な観測回数の計算式と計算例、集計例と精度の確かめ方、そして中小工場で調査結果をムダ削減につなげる6つの手順を整理します。1個あたりの作業時間を決める方法は標準時間の求め方で、工場で追う指標の選び方は製造業の生産性向上 指標で解説しています。

ワークサンプリングとは|稼働分析の意味と目的

稼働分析とは、作業者や設備が、決められた時間のうち何にどれだけの時間を使っているかを調べ、仕事をしている時間(稼働)と、手待ちや故障などで止まっている時間(非稼働)の割合を明らかにする分析です。IE(インダストリアル・エンジニアリング)の基本的な手法の一つで、調べ方には大きく連続観測法とワークサンプリング法(瞬間観測法)の2つがあります。

ワークサンプリングは、観測する時刻を不規則に決め、その時刻に対象が「何をしていたか」を記録します。例えば100回観測して70回が作業中なら、作業の時間の割合は約70%と推定します。統計学の標本調査の考え方を使った方法で、1930年代に英国のL.H.C.ティペットが繊維工場の機械の停止状況を調べるために用いたのが始まりとされています。

ワークサンプリングで分かることは、主に次の3つです。

  • 稼働率:作業者や設備が、仕事をしている時間の割合
  • ムダの大きさ:手待ち、運搬、探し物、段取りなどが、それぞれ何%を占めるか
  • 余裕率の根拠:打ち合わせや材料補充、用達などの時間が実際にどれだけあるか。標準時間の余裕率を決めるときの材料になります

作業・余裕・非作業の分類

観測した状態は、あらかじめ決めた項目に分類して記録します。IEでは、作業者の時間を次のように分けるのが一般的です。分け方の細かさは目的に合わせて調整してかまいません。

大分類 項目 工場での例
作業 主作業 加工、組立、溶接など、製品を直接変化させる作業
付随作業 ワークの取付け・取外し、測定、材料の補充、工程内の運搬
準備段取作業 金型や刃具の交換、プログラムの切替え、始業前の準備と終業時の片付け
余裕 管理余裕(作業余裕・職場余裕) 機械の不定期な調整、打ち合わせ、朝礼、上司からの指示待ち
人的余裕(用達余裕・疲労余裕) 水分補給、トイレ、疲れを回復するための小休止
非作業 手待ち・その他 材料待ち、前工程待ち、設備故障による停止、探し物、私語

設備を対象にする場合は、「加工中」「段取り中」「材料待ち」「故障停止」「計画停止」などの状態に分けて観測します。設備の停止をさらに細かく知りたいときは、設備保全の記録と合わせて見ると原因がつかみやすくなります。

連続観測法との違いと使い分け

稼働分析のもう一つの方法である連続観測法は、観測者が1人の作業者や1台の設備に張り付き、「何を・何分間行ったか」を時間の流れに沿って記録する方法です。2つの方法は、知りたいことによって使い分けます。

項目 ワークサンプリング(瞬間観測法) 連続観測法
観測のしかた ランダムな時刻に、その瞬間の状態だけを記録 対象に張り付き、すべての動きと時間を記録
分かること 項目ごとの時間の割合(稼働率、ムダの比率) 作業の順序、1回ごとの時間、発生のタイミング
対象の数 1人の観測者で、複数の作業者・設備をまとめて調べられる 観測者1人につき、対象は基本的に1つ
負担 観測者は巡回の合間に通常業務ができる。観測される側の緊張も小さい 観測者が1日中拘束される。見られている意識で普段と違う動きになりやすい
向いている場面 職場全体の稼働の実態把握、人員の過不足の判断、余裕率の設定 特定の作業の改善、作業手順の見直し、ボトルネック作業の分析

1個あたりの作業時間を細かく測るストップウォッチ法による時間研究も、対象に張り付く点では連続観測に近い方法です。まずワークサンプリングで「どこに大きなムダがあるか」をつかみ、改善する作業が決まったら連続観測や時間研究で深掘りする、という順番で使うと効率的です。改善する手作業が決まったあと、動作のムダを見つけて減らす方法は動作経済の原則で解説しています。ライン全体の流れを止めている工程を探す場合は、ボトルネック工程の見つけ方で紹介しているサイクルタイムの測定が向いています。

観測回数の計算式と計算例

ワークサンプリングは標本調査なので、観測回数が少ないと結果の誤差が大きくなります。必要な観測回数は、知りたい項目のおおよその割合(p)と、どこまでの誤差を許すかで決まります。信頼度95%で考える場合の、一般的な計算式は次のとおりです。

N = 4(1−p) / (S² × p)
N:必要な観測回数 p:稼働率など、調べたい項目の割合の見込み S:許容する相対誤差(例:±5%なら0.05)

式の「4」は、信頼度95%のときの係数1.96をおよそ2とみて2乗した値です。相対誤差ではなく、「±3ポイント」のような絶対誤差(E)で考える場合は、N = 4p(1−p) / E² で求めます。

計算例:稼働率の見込みが70%の場合

以下は、作業者5人の組立職場を想定した計算例です。1日の予備観測で、作業中の割合(稼働率)がおよそ70%だったとします。

  • 相対誤差±5%で調べたい場合:N = 4 ×(1−0.7)÷(0.05² × 0.7)= 1.2 ÷ 0.00175 ≒ 686回
  • 相対誤差±10%でよい場合:N = 1.2 ÷(0.1² × 0.7)= 1.2 ÷ 0.007 ≒ 172回

相対誤差±5%は、稼働率70%に対して±3.5ポイントの幅という意味です。5人の作業者を1日20回巡回して観測すると、1日あたり100回の観測になるため、686回なら約7日間の観測が必要になります。

許容する誤差を半分にすると、必要な観測回数は4倍になります。人員の過不足や大きなムダの有無を判断する程度なら相対誤差±10%前後、余裕率の設定など数字をそのまま使う場合は±5%前後を目安にすると、現場の負担と精度のバランスがとりやすくなります。

観測時刻はランダムに決める

観測時刻を「毎時ちょうど」のように等間隔にすると、定時の材料補充や設備の周期的な動きと重なり、特定の状態ばかり記録されるおそれがあります。作業者が観測の時刻を予想できると、普段と違う動きにもなりがちです。休憩時間を除いた就業時間の中から、乱数表や表計算ソフトの乱数関数で、毎日違う時刻を決めるのが基本です。また、週明けや月末など忙しさが違う日に偏らないよう、観測する日も分散させます。

集計例と精度の確かめ方

上の計算例の職場で、7日間に合計700回の観測を行い、次の結果になったとします(数値は説明のための例です)。

項目 観測数 割合 1人1日(480分)あたり
主作業 378 54% 約259分
付随作業(取付け・測定・運搬など) 84 12% 約58分
準備段取作業 63 9% 約43分
手待ち(材料待ち・前工程待ち・探し物) 84 12% 約58分
職場余裕(打ち合わせ・指示待ち) 56 8% 約38分
用達・その他 35 5% 24分
合計 700 100% 480分

この例では、主作業・付随作業・準備段取作業を合わせた稼働率は75%です。一方で、手待ちが12%、1人1日あたり約58分あり、5人の職場全体では1日に約4.8時間、ほぼ1人分の6割に当たる時間が「待ち」に使われていることになります。人を増やす前に、材料の供給や前工程との同期を見直す余地が大きいと判断できます。

結果の精度を確かめる

本調査の結果が出たら、その割合を使って精度を確かめます。信頼度95%での誤差の幅(絶対誤差)は、±2√(p(1−p)/N)で求められます。この例では、2 × √(0.75 × 0.25 ÷ 700) ≒ 0.033 となり、稼働率は75%±約3.3ポイント、相対誤差にすると約4.4%で、目標の±5%の範囲に収まっています。予備観測より稼働率が高く出た場合は必要な観測回数が減り、低く出た場合は増えるので、足りなければ観測日を追加します。

ワークサンプリングで失敗しやすい4つのポイント

1. 「監視」と受け取られて、普段どおりの動きにならない

説明なしに観測者が巡回すると、作業者は「サボりを見張られている」と感じ、観測のときだけ忙しく動くようになります。これでは実態はつかめません。目的は個人の評価ではなく、職場の仕組みのムダを見つけることだと、観測を始める前に説明することが欠かせません。

2. 観測項目の判定基準があいまい

「歩いている」は運搬なのか、探し物なのか。「話している」は打ち合わせなのか、私語なのか。判定基準が観測者によってぶれると、集計結果が信用できなくなります。項目ごとに具体的な判定の例を一覧にし、迷ったときの分類を決めておくことが必要です。

3. 観測回数が足りない、時期が偏っている

1日だけ、数十回だけの観測で結論を出すと、たまたまその日に起きたトラブルの影響を大きく受けます。必要な観測回数を計算し、繁忙日と閑散日、午前と午後など、普段の仕事の波を含む期間で観測します。

4. 調べて終わりになる

「稼働率は75%でした」で報告が終わると、現場には何も残りません。割合を1日あたりの時間や人数に換算し、どのムダから減らすかを決めて、改善後にもう一度観測するところまでを1つの取り組みとして計画しておきます。

稼働分析をムダ削減につなげる6つの手順

手順1:目的・対象・観測項目を決める

まず「人員が足りているかを判断したい」「手待ちの大きさを知りたい」「余裕率を見直したい」など、何のために調べるのかを1つに絞ります。目的が決まれば、対象(作業者か設備か、どの職場か)と、観測する期間が決まります。そのうえで、前述の分類を参考に観測項目を5〜10個程度に整理し、それぞれの判定基準を一覧にします。項目が多すぎると観測者が迷い、少なすぎると改善の手がかりが得られません。

手順2:予備観測をして必要な観測回数を計算する

1日程度の予備観測で、稼働率や手待ちのおおよその割合をつかみます。その値と求める精度から、計算式で必要な観測回数を出し、1日の巡回回数と観測日数を決めます。予備観測は、観測項目の判定基準に無理がないかを確かめる場にもなります。迷う場面が多かった項目は、ここで基準を見直します。

手順3:観測時刻を乱数で決め、観測ルートを決める

休憩時間を除いた就業時間の中から、乱数で毎日違う観測時刻を決めます。観測者が回るルートと、各対象を観測する位置も決めておきます。対象に近づきすぎると作業者が反応してしまうため、少し離れた位置から、現場に着いた瞬間の状態を記録するのがルールです。観測用紙は、対象ごとに項目を並べ、該当欄に印をつけるだけの形にすると記録が速くなります。タブレットや表計算ソフトの入力フォームを使えば、集計の手間も省けます。

手順4:現場に目的を説明し、観測する

観測を始める前に、職場の朝礼などで目的と期間を説明します。個人の評価や査定には使わないこと、結果は職場全体で共有することを明言しておくと、普段どおりの動きを記録しやすくなります。観測中は、決めた時刻とルートを守ります。トラブルなど特別な事情があった日は、その内容をメモしておき、集計時の判断材料にします。

手順5:集計して精度を確かめ、ムダを時間に換算する

項目ごとの観測数と割合を集計し、結果の稼働率で観測回数が足りているかを確かめます。そのうえで、割合を「1人1日あたりの分数」や「職場全体の人数分」に換算します。「手待ち12%」より「毎日5人で約4.8時間の待ち」のほうが、改善の必要性が現場にも経営にも伝わります。日別・時間帯別・作業者別に分けて見ると、特定の時間帯に手待ちが集中しているといった傾向も見えてきます。ただし作業者別の結果は個人の評価に使わず、配置や段取りの見直しの材料にとどめます。

手順6:改善策を決めて実施し、再観測で効果を確かめる

時間に換算して大きいムダから、改善策を決めます。手待ちが多ければ材料供給のタイミングや前工程との作業量のバランス、運搬が多ければ置き場とレイアウト、探し物が多ければ5S活動の三定、段取りが長ければ段取り替えの短縮、といった具合です。改善策ごとに担当者と期限を決めて実施し、数か月後に同じ方法で再観測して変化を確かめます。調査で分かった余裕の実態は、標準時間の余裕率や作業標準書の見直しにも反映します。

稼働の実態を日常的につかむ工夫

  • 設備はデータで自動的に記録する:設備の運転・停止の信号やセンサーを使えば、人が観測しなくても設備の稼働状況を連続して記録できます。人の観測は、作業者の動きの分析に絞ると負担が減ります。
  • 日報の停止・待ちの記録と突き合わせる:作業日報に停止や待ちの理由を記録している場合は、ワークサンプリングの結果と比べると、日報に書かれていないムダが見つかります。
  • 指標として追い続ける:調査で大きかった項目は、工場のKPIとして定期的に追うと、改善の効果が続いているかを確かめられます。
  • 年に1〜2回、同じ方法で調べ直す:品種や人員の構成が変わると、ムダの中身も変わります。観測項目と判定基準を残しておけば、毎回同じ物差しで比べられます。

まとめ:ワークサンプリングは、現場の時間の使い方を数字にして、改善の順番を決める道具

  • ワークサンプリングは、ランダムな時刻に作業者や設備の瞬間の状態を観測し、作業・余裕・非作業の時間の割合を推定する稼働分析の方法
  • 多くの対象の全体像をつかむならワークサンプリング、特定の作業の順序や時間を深掘りするなら連続観測法や時間研究
  • 必要な観測回数は、信頼度95%でN=4(1−p)/(S²p)。稼働率70%・相対誤差±5%なら約686回
  • 失敗しやすいのは、監視と受け取られる、判定基準があいまい、回数や時期が偏る、調べて終わりになる、の4つ
  • 手順は、目的と観測項目→予備観測と観測回数→乱数で観測時刻→説明と観測→集計・精度確認・時間換算→改善と再観測、の6つ

ワークサンプリングは、観測用紙と乱数で決めた時刻表があれば、1つの職場から始められます。1個あたりの作業時間の決め方は標準時間の求め方を、ラインの流れを止めている工程の探し方はボトルネック工程の見つけ方を、工場で追う指標の選び方は製造業の生産性向上 指標を、生産性向上の考え方は生産性完全ガイドを、製造業に絞った進め方は製造業のDX・生産性向上ガイドを参考にしてください。

株式会社Sei San Seiでは、現場改善を実務から支援するMINORI Advisoryで、稼働分析の設計や観測項目づくり、調査結果をもとにした改善の進め方をご相談いただけます。また、生成AI × RPA × 業種特化型の次世代型ERPであるMINORI Cloud 製造業版では、作業日報や設備の停止記録をひとつにまとめ、稼働の実態を日常的に確認できる仕組みづくりを支援します。「人が足りないのか、時間の使い方の問題なのかを確かめたい」という段階からでも、お気軽にご相談ください。

よくある質問

Q1. ワークサンプリングとは簡単にいうと何ですか?

ワークサンプリングは、作業者や設備の状態を、ランダムな時刻にその瞬間だけ観測して記録し、観測回数を積み重ねて作業・手待ち・打ち合わせなどの時間の割合を推定する方法です。1人に張り付いて測る連続観測より手間が少なく、多くの人や設備を同時に調べられるため、稼働率やムダの大きさをつかむ稼働分析によく使われます。

Q2. ワークサンプリングの観測回数はどう決めればよいですか?

信頼度95%で考える場合、予想される稼働率をp、許容する相対誤差をSとして、N=4(1−p)/(S²p)で求めるのが一般的です。例えば稼働率70%、相対誤差±5%なら約686回になります。まず1日程度の予備観測でpの目安をつかみ、本調査の結果で再計算して回数が足りているかを確かめます。

Q3. ワークサンプリングと連続観測法の違いは何ですか?

連続観測法は、観測者が1人の作業者や1台の設備に張り付き、何をどれだけの時間行ったかを連続して記録する方法で、作業の順序や1回ごとの時間まで分かる反面、手間がかかり対象が限られます。ワークサンプリングは瞬間の状態を多数集めて割合を推定する方法で、多くの人や設備の全体像を少ない負担でつかむのに向いています。

Q4. 観測時刻を等間隔にしてはいけないのはなぜですか?

毎正時など等間隔で観測すると、定時の材料補充や設備の周期的な動きと観測のタイミングが重なり、特定の状態ばかり記録されて結果が偏るおそれがあるためです。また作業者が観測の時刻を予想できると、ふだんと違う動きになりやすくなります。乱数表や表計算ソフトの乱数で、毎日違う時刻を決めて観測します。

Q5. 稼働率は100%を目指すべきですか?

作業者の稼働率は、打ち合わせや用達など必要な余裕があるため100%にはなりません。設備についても、注文以上に動かすと作りすぎの在庫が増えるため、稼働率そのものを100%に近づけることを目標にはしません。大切なのは、手待ちや探し物などのムダの割合を減らし、動かしたいときに設備や人が確実に動ける状態をつくることです。

高橋 央

この記事の執筆者

高橋 央株式会社Sei San Sei 代表取締役CEO

株式会社Sei San Sei CEO。半導体商社での技術提案、リクルートでの製造業向け採用支援・RPO推進を経て、ITベンチャー取締役・人事責任者を歴任。2023年にSei San Seiを設立し、大手製造メーカーをはじめ累計30社以上の採用・業務改善支援を手掛ける。「現場の技術理解」と「採用・組織作り」の双方に強いノウハウを持つ。著書に『仕事や将来に迷った時に、若手キャリア層のこれからの描き方』がある。

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